「100年安心」公的年金制度実現には、資産運用に対する「レジーム変化」が必要である

「新たな投資先としては株式への運用を増やすことが有力だ。6日の東京市場では国債中心の運用からの脱却方針が伝わると、日経平均株価は大幅に上昇し、節目の1万5000円を回復した」(7日付日本経済新聞「きしむ公的年金 改善探る」)

「100年安心」をうたう公的年金の財政検証が始まりました。「100年安心」といわれても、2004年の自公連立政権時代に当時の坂口厚生労働大臣が提案した「年金100年安心プラン」を知っている有権者にとっては、「またか」といったところではないかと思います。

年金運用に関する議論でいつも心配になるのは、運用利回りを上昇させるために「株式への運用を増やす」ことを目指しているのか、「6日の東京市場では国債中心の運用からの脱却方針が伝わると、日経平均株価は大幅に上昇し」というように、株価を上昇させるために「株式への運用を増やす」ことを目指しているのかがはっきりしないことです。

アベノミクスの要諦は「円安・株高」によって大企業の収益を回復させ、多くの国民に、何時かは「全国津々浦々まで景気回復の実感」が届くという景気回復に対する幻想を抱かせ続けるものですから、何としても「円安・株高」基調を維持する必要があります。そうした中で年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が「株式への運用を増やす」ことは、アベノミクスへのアシストに他なりません。

アベノミクスの効果によって株価上昇期待が高まったから「株式への運用を増やす」のか、アベノミクスのメッキが剥がれないように「株式への運用を増やす」のか。

日本の年金運用は、株価対策に使われて来たという不幸な歴史を持っています。「戦後レジームからの脱却」を訴える安倍政権下での年金運用においては、「バブル崩壊後のレジームからの脱却」を目指してもらいたいと思います。

120兆円という大規模な資金を計画的かつ安定的に運用して行くことは、現実問題として至難の業です。いくら机上で専門家達が複数のシナリオを検討しても、なかなか正解だと思える解に到達することは出来ないはずです。何しろ、社会保障審議会の専門委員会のメンバーは、専門家といえども資産運用においては何の経験もない素人集団ですから。

もちろん、資産運用経験があっても、120兆円もの大規模な公的年金の運用方針を決めることは至難の業ですが、個人的には、GPIFの運用方に関しては少なくとも改善すべき点は2つあるように思います。

まず、120兆円という大規模な運用しなければならないGPIFにとって最も重要なのは、アセットアロケーション(資産配分)だということを認識することです。公的年金制度を維持して行けるかどうかは、このアセットアロケーションに懸かっており、個別のファンドの選定は年金制度の根幹に影響を及ぼすような問題ではありません。

例えば、ベンチマーク(BM)であるTopix(配当込)が50%上昇した際にファンドのパフォーマンスが47%とBMに負けても、反対にBMが20%下落した際にファンドの下落が18%でとどまったとしても、年金制度全体に及ぼす影響は殆どないということです。ですから、GPIFはまず全てBM運用にして運用コストを下げることを検討し、ファンド選定に費やしている労力を別の方向に向けるべきではないかと思います。

もう一つの問題は、運用目標利回りを定めてアセットアロケーションを決定することです。アセットアロケーションを決めて、結果は相場に聞いてくれという従来のやり方では、公的年金制度を維持出来るか否かを相場に任せるという無責任なやり方のように感じます。資産の中でも株式の影響が大きいですから、我が国の公的年金制度の行く末は外国人投資家の動向に委ねられているという現状は見直すべきではないかと思います。

財政検証によって、保険料などを上げないとした場合に必要な運用利回りは計算することが可能です。この運用目標利回りを達成すべくアロケーションを決めて行くのがあるべき姿ではないかと思います。財政検証時に名目運用利回りも決められ、これによって必要な積立金が決められているはずなのですが、GPIFの運用益は毎年の株価や為替の変動によって大きく変動しています。これは、財政検証によって決められた名目運用利回りが、運用における運用目標になっていないということです。

国内ではリターンを最大化することがプロの運用だという考え方が根強くありますが、公的年金制度を「100年安心」なものにするうえでは、毎年確実に名目運用利回りを達成して行くことの方がより重要になります。デイトレーダーなど私的な運用なら三振かホームランかという運用の醍醐味を味わうことも大切な要素になるかもしれませんが、公的年金制度を「100年安心」なものにするためには、毎年高い打率、出塁率を維持するという地味な成果が必要不可欠です。

5年に一回の財政検証によって基本ポートフォリオを決定し、パフォーマンスは相場に委ね、資産配分は相場変動によって許容範囲内を越えそうになった際にしか調整しないというのでは、「100年安心」出来る公的年金制度が出来上がる可能性はかなり低くなってしまいます。運用においてPDCAサイクルを常に回し、特にリスクの大きい株式への配分をどうするのか、運用目標と実績を比較しながら常に検討して行く仕組みが必要なように思います。

公的年金制度を「100年安心」な制度に変えて行くためには、日本の資産運用に考え方のレジーム変化が必要なような気がしてなりません。
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近藤駿介

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