ビットコインに関して政府は何の監督責任を負わないことだけを明確にした、将来に禍根を残しかねない閣議決定

マウントゴックスが破綻してから1週間。政府は7日、ビットコインは「通貨に該当しない」と認定する政府の公式見解を閣議決定しました。さらに、金融商品取引法に基づく有価証券にもあたらないとしました。

日本経済新聞は、「ビットコインは2009年に誕生したが、法律上の定義が不明確だった」と、今回の閣議決定によってビットコインの法律上の定義が明確になったかのような報じ方をしています。しかし、今回の閣議決定で決められたことは、政府はビットコインを始めとした仮想通貨に関して、何の指導監督する義務を負わないということです。

「銀行業務としての取り扱いについては、その取引自体ができず、売買仲介や円や外貨との交換もできないとした。ビットコインと円や外貨との交換市場の開設やそこでの取引は、一律に禁止する法令は存在せず、法令違反は個別に判断され、交換の勧誘も同様に、一律に刑事罰を科す法律はないと指摘した。また、有価証券取引にも該当しないため、『業者登録』や『勧誘規制』の対象にはならないとしている」(ロイター)

通貨でも有価証券でもないと認定したことで、ビットコインを始めとした仮想通貨は、金融商品取引法の枠外になり、財務省(金融庁)の監督責任外であることが明確にされました。

一方、「債務の弁済に使用することは禁止する法律がないとして、支払い手段としては使える」(ロイター)としたほか、ビットコインに投資するファンドやデリバティブの組成については、「金融商品取引法では『有価証券またはデリバティブ取引に係る権利以外の資産に対する投資として、財産の運用を行う業務を規定している』と引用し、法律上は可能であるとの見方を示した」(Bloomberg)と報じられており、実際にはこれまで通りビットコインは「何の規制も受けない仮想通貨」として流通し続けられることになりました。

これまでも、ビットコインを手に入れたい国内の投資家が、自主的に海外の私設取引所にアクセスしてビットコインを手に入れる行為は、その海外の私設取引所が国内の投資家に対してメールで取引の勧誘をするなど、国内で勧誘・販売行為に該当する行為をしない限り、金融商品取引法の規制の対象にはなっておりません。ですから、ビットコインの信奉者、ユーザーの取引自体に金商法で規制を掛けることは、事実上出来ません。

しかし、今回政府はビットコインを「通貨」でも「有価証券」でもないと認定し、「モノ」として取り扱う方向性を示しただけで、「一体何物なのか」は明確にしませんでした。その結果、ビットコインなど仮想通貨が金融商品取引法の規制を受けないことが明らかになっただけで、何の法律の規制を受けるのか、はたまた何の法律の規制も受けないのかが不明確にされてしまいました。

今回政府がビットコインなどの仮想通貨の監督責任を放棄してしまったことで、今後は、ビットコインに投資することを必ずしも望んでいない国内の投資家に対して、ビットコインなど仮想通貨に関る取引の勧誘が大手を振ってなされる危険性が高まったと言えます。

≪参考記事≫ ビットコイン取引ルール導入~「利用者保護」よりも「財務省保護」に重点を置いた取引指針

昨年12月20日の記者会見で黒田日銀総裁が「(日銀の)金融研究所を中心に調査・研究している」ことを明言してから2か月半が経過しましたが、今回の閣議決定には全くその研究成果は活かされなかったようです。今回日本政府は「通貨には該当しない」と認定し、銀行での取引を禁止しましたが、今後他国が「通貨」と認定し、銀行取引を認めた場合にどのように対応をするのかについての研究はなされているのでしょうか。

さて、ビットコインの私設取引所であったマウントゴックス破綻に関連して、マスコミ等では、「取引業者の破綻とビットコイン自体の評価とは別々のものだ」という専門家の意見が紹介されています。

しかし、筆者はこうした見方には必ずしも賛同できません。

まず、(仮想)通貨の価値は、その流通システムを含めて計られるべきであり、流通システムは脆弱だが通貨には価値があるというのは、片手落ちの議論のような気がします。

また、流通を管理する事業主体や国家もなく、中央銀行のようなものも存在しないビットコインという仮想通貨の価値に対する信頼は、発行限度が2100万BTCに設定されていることによって保たれています。この点が、中央銀行の金融政策によって通貨供給量が変動し、それに伴って通貨の価値も変動するドルや円、ユーロといったリアルマネーとの大きな相違点になっています。

一方、リアルマネーは発行国の経常収支やインフレ率、それを反映した金融政策などが通貨価値を決める要因になっているのに対して、流通を管理する事業主体や国家もなく、中央銀行のようなものも存在しないビットコインには、そうした実体経済に基づく価値は存在しません。したがって、ビットコインの価値を決めているのは、市場の需給要因だということになります。そして、実体経済とリンクしていないビットコインの需給要因は、マクロ経済等から推測することがリアルマネーよりはるかに難しいですから、価値は投機によって決められていくという状況にあると言って過言ではありません。

このように考えると、流通を管理する事業主体や国家もなく、中央銀行のようなものも存在しないビットコインというのは、国家や中央銀行が流通を管理するリアルマネーに対するアンチテーゼであるといえます。

実態経済と必ずしもリンクしておらず、リアルマネーのアンチテーゼとして市場の需給要因によって決定して行くビットコインについて、実体として価値があると言い切るのは危険なように思います。さらに、市場の需給要因によってその価値が変動して行くことを考えると、取引所などの流通システムが正常に稼働し続けることが、ビットコインの価値を維持するための重要な要素になるはずです。

リアルマネーのアンチテーゼとして存在感を高めて来たビットコインが、その輝きを保ち続けられるかどうかは、リアルマネー以上に安定した流通システムが維持されるかにかかっていると考えるべきだと思います。そのように考えると、「取引業者の破綻とビットコイン自体の評価とは別々のものだ」という専門家の意見には疑問を禁じ得ません。

また、国内で何の規制も加えない無法地帯の中でビットコインの流通をさせてしまうということは、ビットコインの存在自体を危ういものにしてしまいかねません。政府や監督官庁にとっては仮想通貨ビットコインが自然消滅してくれるということは、喉元に刺さった骨が抜けるような都合の良いことかもしれませんが、一旦流通を許した後の自然消滅は投資家に無用の損害や混乱を与えかねないもので、監督官庁として無策だとの誹りを受けて然るべきものだと思います。

「通貨に該当しない」「有価証券でもない」と認定したことはともかく、「〇●である」と認定しなかったことは、今後に禍根を残すものとなりそうです。少なくとも、ビットコインを「通貨に該当しない」「有価証券でもない」と認定した政府は、国内の投資家に対して、ビットコインは誰も管理しておらず、投資家保護の対象になっていない「モノ」であるという注意喚起を行うのが、先進国の行政機関としての品格であるような気がします。

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