GDP下方修正~「全国津々浦々まで景気回復実感が届く」のが先か、「世界中の投資家にアベノミクスの限界が知れ渡る」のが先か…

「内閣府が10日発表した2013年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動を除いた実質で前期比0.2%増、年率換算で0.7%増となった。2月公表の速報値(0.3%増、年率1.0%増)から下方修正した。個人消費と設備投資が速報時の推計よりも少なかった。輸出の伸び悩みが目立ち、景気回復の持続には海外需要の持ち直しが焦点となる」(10日日経電子版「実質GDP下方修正」)

「全国津々浦々まで景気回復の実感を届ける」という安倍総理の掛け声とは裏腹に、アベノミクスの失速を示す経済統計が増え始めて来たようです。今回のGDP改定値のポイントは、2013年の10~12月の3ヶ月間に、為替市場で円は97.88円から105.36円まで7.48円、率にして7.6%「円安」が進み、株式市場では日経平均株価が14,455円から16,294円まで1,838円、率にして12.7%も「株高」になる中で、下方修正されたことです。「円安・株高」を原動力にして来たアベノミクスが、「円安・株高」が進む中で失速するというのは、安倍総理にとっても想定外だったのではないかと思います。

しかも、10月1日に安倍総理が消費税率を4月から8%に引上げることを正式に表明し、駆け込み需要が期待されるなかで、「個人消費も0.4%増と速報値(0.5%増)から伸び率が縮小。食料品や衣料品の需要が速報時の見込みよりも少なかった」という内需低迷が、下方修正の要因となったことは、足下の日本経済が、「『大胆な金融政策』、『機動的な財政政策』、『民間投資を喚起する成長戦略』の『三本の矢』による一体的な取組の政策効果から、家計や企業のマインドが改善し、消費等の内需を中心として景気回復の動きが広がっている」(1月24日閣議決定「平成26年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度」)という政府の楽観的な見通しから逸脱して来ていることを示したものです。

その結果、「政府は2013年度の実質成長率を2.6%程度と見込んでいる。達成には今年1~3月期の実質GDPが前期比で2.6%増という極めて高い伸びが必要」(日本経済新聞)と、政府見通しの達成は極めて難しい状況になりました。それは、「一体的な取組の政策効果から、家計や企業のマインドが改善し、消費等の内需を中心として景気回復の動きが広がっている」という政府の見立て自体に間違いがあることの証左だといえます。

1997年4月に消費税率が3%から5%に引上げられる直前の1996年10~12月期の実質GDP伸び率(季調済前期比年率)は6.1%でした。その時と比較すると、今回の0.7%増(同)というのは、余りにも低い伸びだと言えます。足元の日本経済は、駆け込み需要も喚起できないほど深刻な状況にあるのかもしれません。

また、1996年10~12月期の前期比年率6.1%成長は、「公的固定資本形成」(公共投資)が同▲10.1%減少する中、「家計最終消費支出」が前期比年率で4.4%伸びたことで達成されています。

これに対して、2013年10~12月期の前期比年率0.7%成長は、「公的固定資本形成」が同8.7%伸びる中、「家計最終消費支出」は同1.6%の伸びにとどまっており、成長率の水準以上に中身に大きな差があります。

「13年の年間のGDP成長率は実質が速報値から0.1ポイント低下の1.5%、名目が速報と同じ1.0%だった」(日本経済新聞)

同時に発表された暦年の実質成長率をみても、2013年は「家計最終消費支出」は1.9%増に対して「公的固定資本形成」は11.4%増と、過去19年間で最大の伸びとなっています。発表されたGDP統計から見えて来る足下の日本経済は、「一体的な取組の政策効果から、家計や企業のマインドが改善し、消費等の内需を中心として景気回復の動きが広がっている」という姿からは程遠く、「公共投資に辛うじて支えられた景気回復」というものになっているようです。

成長率が予想を下回る内容であったことで、今後は日銀による追加緩和に対する期待する声が高まることが予想されます。

「財務省が10日発表した1月の国際収支速報によると、日本が海外とのモノやサービス、配当など総合的な取引でどれだけ稼いだかを表す経常収支は1兆5890億円の赤字になった。比較可能な1985年以降、1カ月間の赤字では過去最大で、赤字が4ヵ月続くのも初めてとなる」(日本経済新聞「経常赤字最大1.5兆円」)

GDPの下方修正が報じられた10日、財務省から1月の国際収支が発表になり、赤字幅は1月として過去最高、かつ経常収支が4ヵ月連続で赤字になったことが明らかになりました。既に財務省から、1月の輸出金額指数が前年同月比で+9.5%となった一方、輸出数量指数が前年同月比で▲0.2%だったことが報じられており、円安が輸出数量の増加に繋がっていないことが明らかにされています。

「『良い円高』とは巨額の経常収支の黒字のあるなかで輸入を増やし、既に巨額になっている輸出に輸入が追いつく形で不均衡が是正される円高である。…(中略)… まず消費者の観点から見ると『良い円高』は海外の消費者の選択肢を多く減らさず、日本の消費者の選択肢を増やす。また、生産者の観点から見れば、輸出が減らないということによって、世界中の消費者に愛用されている良い製品を作っている国内の生産者は、今後ともそれらの製品の生産を続けることが出来ることになる」

野村総合研究所のチーフエコノミストであるリチャード・クー氏は、1994年に記した「良い円高 悪い円高」のなかで、このような指摘をしています。

最近の円安局面は、クー氏のこうした指摘に準えると、「輸入を輸出が上回る形で新たな不均衡が生じ」、「日本の消費者は天然ガスなどの価格上昇で選択肢を失い」、「これまでの円高によって生産拠点の海外移転が進み、円安でも輸出が増えない」という「悪い円安」になっているということになります。

「大胆な金融緩和」によって、「円安・株高」になっても個人消費は停滞し、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要も限定的なものにとどまり、輸出数量も増加しない。

最近の経済指標でこうした日本経済の状況が徐々に明らかになって来ています。こうしたなか、日銀が「追加緩和」に踏み切ったとしても、その効果に過大な期待をかけるのは危険であると思います。金融現象として「円安」が生じるかもしれませんが、昨年のようにそれが「株高」や「景気回復期待」に繋がる可能性はかなり低下したと考えておいた方が賢明だと思われます。

「全国津々浦々まで景気回復の実感をお届けする」と力説している安倍総理。最近発表される経済統計を見る限り、「世界中の投資家にアベノミクスの限界が近いことが知れ渡る」のとどっちが早いか、時間との戦いになって来たようです。

震災から丸3年を迎えるにあたって、安倍総理は「これからはハード面の復興だけでなく、心の復興に一層力を入れていく」ことを表明しました。「ハードの復興」も「心の復興」も是非力を入れて頂きたいと思いますが、「国民の懐の復興」にも力を入れて頂きたいものです。そのためには、少なくとも来年秋に予定されている10%への消費税率の引上げを見送るなど、「大胆かつ機動的な財政政策」を検討して貰いたいものです。

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