消費増税の影響は軽微?~「消費増税後」より、「消費増税前」の「影響が軽微」だったことの方が深刻な問題では

「日本経済新聞社が22日まとめた『社長100人アンケート』で、消費増税前の駆け込み需要が想定通りかそれを下回っているとの回答が全体の3分の2に達した。駆け込み需要や増税後の反動減による年間売上高への影響は『5%未満』と『なし』の回答が合計で7割を超え、影響は軽微との見方が多い。国内景気は9月ごろまでに上向くとの回答が55%にのぼった。主要企業の経営者の強気な景況感が改めて裏付けられた」(23日付日本経済新聞 「消費増税 『影響軽微』 7割」)

消費増税が目前に迫って来たなか、消費増税推進派の日本経済新聞は、「主要企業の経営者の強気な景況感が改めて裏付けられた」ことを理由に、お得意の「消費増税の影響は軽微だ」という印象操作をしようとしているようです。

こうした印象操作をするのは、「日本経済はアベノミクスの効果によって、消費増税に耐えられるところまで回復して来ている」という政府の判断に間違いなかったことと、「消費増税による一時的な景気減速を埋め合わせる、補正を含めた予算措置」など政府が万全な対策を打ち出していることを、国民意識に再度擦り込んでおくためだと思われます。お得意の「景気は洗脳から」。

同時に、政府の判断にも対応にも間違いはなく、もし消費増税をきっかけに景気が失速するならばそれは国内要因ではなく、「想定外の海外要因」による不可抗力だという逃げ道を用意する、リスクヘッジでもあります。

さて、こうした日本経済新聞の主張は、正当なものでしょうか。個人的にはこの記事の中の次の部分が気に掛かります。

「駆け込み需要による2013年度の売上高の上ぶれは『発生しない』と『5%未満』の合計が71.6%で、前回12月調査(64.6%)より増えた。14年度売上高の見通しについても、駆け込み需要の反動減による下振れは『ない』『5%未満』の合計が70.2%に達した」(同)

この記事を言い換えると、「前回12月調査」の時点では、「2013年度の売上高の上ぶれ」が「5%以上発生する」と考えていた主要企業の経営者が、今回よりも7%多かったということです。

さて、ここで思い出して頂きたいのは、今月10日に発表されたGDP改定値が下方修正されたことです。

「内閣府が10日発表した2013年10~12月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動を除いた実質で前期比0.2%増、年率換算で0.7%増となった。2月公表の速報値(0.3%増、年率1.0%増)から下方修正した。個人消費と設備投資が速報時の推計よりも少なかった」(3/10付日経電子版 「実質GDP下方修正、年率0.7%増」)

つまり、個人消費など内需の伸び悩みによって、実質GDPが年率0.7%に下方修正された10-12月期の時点よりも、主要企業の経営者達は駆け込み需要が弱まっている、期待したほどではないと感じているということです。

日本経済新聞は、主要企業の経営者達が「消費増税の影響は軽微」だと見込んでいることを強調しています。しかし、現在の日本経済の問題点は、「消費増税後の影響が軽微」であることではなく、「消費増税前の影響が軽微」であることに現れていると考えるべきだと思います。

「消費増税前の影響が軽微」だったのですから、その反動である「消費増税後の影響が軽微」になるのは当然のことでしかありません。もし、「消費増税後の影響が軽微ではなかった」としたら、大事です。

【参考記事】 GDP下方修正~「全国津々浦々まで景気回復実感が届く」のが先か、「世界中の投資家にアベノミクスの限界が知れ渡る」のが先か…

この記事の中では、国内の景気先行きついても「景気が改善に向かう要因では『個人消費の回復』がいずれも6割程度でトップだった。消費増税の影響が早期に解消し、景気が復調するとの見方が大勢だ」(同)と、主要企業の経営者達が強気な見通しを持っていることを報じています。しかし、消費増税を控えた駆け込み需要すら期待ほどでなかったなかで、「個人消費の回復」が日本経済の牽引役になれるという見立てに説得力があるのでしょうか。

「安倍首相の手腕が試されるのはこれからだ。橋本内閣は増税から半年余りで経済の変調が鮮明となり、支持率が急落した。『当時は金融機関の不良債権問題が重荷だった。今とは経済状況が違う』との分析もあるが、日本経済の行方に世界が注目している」(23日付日本経済新聞 「風見鶏~与野党が見つめる『第2幕』」)

消費増税後の悪影響が、前回消費増税が実施された1997年と違って今回は一時的なものにとどまるという主張を繰り返す有識者達が挙げる根拠は、「当時は金融機関の不良債権問題が重荷だった。今とは経済状況が違う」というものです。

確かに、不良債権問題というところに焦点をあてれば、そうかもしれません。しかし、不良債権問題は「原因」ですから、「結果」として「金融機能」が失われたという点に焦点をあててみると、少し違った景色が見えて来るような気がします。

以前から指摘させて頂いていますが、「異次元の金融緩和」によって日銀は2013年3月比でマネタリーベースを66兆5810億円増やして来ていますが、その内の95.9%の63兆8806億円は日銀当座預金の増加で占められています。そして、同じ期間の銀行貸出はマネタリーベース増加額の7%相当の4兆6749億円(全国銀行協会)に留まっています。 ※銀行貸出はマネタリーベースに直接的には含まれていません

マネタリーベースを日銀が大幅に増やす中で、銀行貸し出しが伸びないのは、銀行の主要な貸出先であった「民間非金融法人企業」が、1997年以降恒常的な「資金余剰主体」、つまり「資金の出し手」に転じてしまったからです。日銀が公表している「資金循環統計」では、昨年9月末時点での「民間非金融法人企業」が保有している「現金・預金」は224.3兆円に上っています。この224.3兆円という規模は、先日改定された10-12月期実質GDPでの「民間企業設備」が68.7兆円でしたから、3年強の設備投資を賄える規模だということになります。

資金循環勘定201309

日本の金融システムは、1997年当時とは比較にならないほど健全になっているのは、有識者達が指摘する通りです。しかし、銀行の資産内容がいくら健全であっても、本来銀行の借手になるはずの企業が、潤沢な資金を抱えて「資金余剰主体」に転じてしまったことで、「金融機能」が働かない状況にあることを軽視するのは危険のような気がします。

日本経済新聞の「当時は金融機関の不良債権問題が重荷だった。今とは経済状況が違う」という主張は、景気失速局面で、金融面から負のスパイラルに陥るリスクが低いと言っているだけで、「景気は底堅い」と主張する根拠にはなり得ないものです。

消費増税の景気失速が一時的なものにとどまらなかった場合、政府は見込み違いをどのように説明するのでしょうか。その時に備えて、政府や日本経済新聞は、弁解材料となる「予想不可能な世界経済の混乱」が起きることを内心願っているのかもしれません。

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