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もし野村克也元監督が資産運用の専門家だったら ~年金、高利回り投資

「バッカじゃなかろかルンバ」

野村克也元監督が資産運用の専門家だったら、おそらくこのように呟いたのではないでしょうか。

「公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、高収益の日本株を組み込んだファンドへの投資を始める。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントなど数社に運用を委託する。委託規模は1社あたり、2千億~4千億円規模とみられる。日経平均株価などの市場平均を上回る運用利回りを目指す『アクティブ運用』を本格化する」(2日付日本経済新聞 「年金、高利回り投資へ」)

GPIFが、昨年11月に出された政府の有識者会議の提言に従って、「アクティブ運用」を本格化することが報じられています。一見尤もそうなことに見えますが、その中身は「運用リテラシー」の低い日本ならではのものになっています。

「新方針に基づく投資では、ゴールドマン側が自己資本利益率(ROE)に着目してファンドに組み込む銘柄を選ぶ。自動車、医薬品、鉄道、銀行などの業種からROEが高い企業を選ぶ」(同 日本経済新聞)

GPIFは、「国内株式運用で約2割」(有識者会議「報告書」)と低比率にとどまっている「アクティブ運用」を高める対象として、「ROEに着目」したファンドへの投資を考えているようです。この部分だけを単独で聞くと、尤もらしく聞こえるかもしれません。

しかし、GPIFのこうした方針は、昨年からの公的年金運用に関する議論の流れと整合性がとれていないものになっています。

「資本の効率性や本業の稼ぐ力から、魅力の高い企業を選び出す。ROEを選定基準にした株価指数は珍しい」(2013/12/24 日経電子版「新指数『JPX日経400』、銘柄選定にみる投資魅力」)

今年から日本取引所グループと日本経済新聞社は、「ROEに着目」した新しい株価指数「JPX日経400」の算出、公表を始めています。これを受けて、GPIFの運用のあり方を検討していた有識者会議の「報告書」では、次のような提言がなされています。

「より効率的な運用が可能となる指数(例えば、日本取引所グループと日本経済新聞社が共同で開発し、平成26 年初より算出を開始する予定のROE 等も考慮した新たな株価指数(JPX 日経400)等)を利用したりするなどの改善策について検討すべきである」(平成25年11月「公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議~報告書」)

この指摘は、報告書の中の「パッシブ運用のベンチマーク」についてという部分でなされているものです。ようするに、「東証1部上場全銘柄を対象とするTOPIXの中には、十分な収益性等が認められない先も含まれる」から、パッシブ運用のベンチマークを「ROEに着目」した、「より効率的な運用が可能となる指数JPX日経400」にすることも検討するべきだと提言しているのです。

パッシブ運用のベンチマークとして、従来のTOPIXだけでなく、「ROEに着目」した「JPX日経400」も加えるべきだというのは、「ROEに着目」した銘柄で構成された「JPX日経400」指数そのものが、TOPIXを上回る運用利回りを生む可能性が高いということが根底にあるからです。

つまり、「TOPIX」と「JPX日経400」という株価指数の比較において、「JPX日経400」は、「ROEに着目」することで「TOPIX」を上回る収益を目指した「アクティブ指数」だということが出来るのです。

「アクティブ運用においては、取引手数料、運用報酬等のコストが上昇し、パッシブ運用に比べてネットのリターンが必ずしも増加するかどうか明らかでない場合もある」

有識者会議の報告書の「アクティブ比率」という項目の中では、このようなコストパフォーマンスに関する指摘もなされています。

GPIFの今回の方針の疑問点は、「ROEに着目」することで「TOPIX」を上回ることを目指した「JPX日経400」という株価指数が登場し、有識者会議が「JPX日経400」をベンチマークにするパッシブ運用を提言するなかで、なぜ、「ゴールドマン側が自己資本利益率(ROE)に着目してファンドに組み込む銘柄を選ぶ」( 日本経済新聞)ような「アクティブ運用」を行うのかというところです。

「ROEに着目」して「日経平均株価などの市場平均を上回る運用利回りを目指す」のであれば、「JPX日経400」をベンチマークにした「パッシブ運用」を行えば済む話です。

「ROEに着目」することで、「TOPIX」など「市場平均を上回る運用利回り」を目指すのであれば、運用報酬等のコストが低い「JPX日経400」をベンチマークとした「パッシブ運用」を行うのが論理的な判断になるはずです。

GPIFが「ROEに着目」した「アクティブ運用」を、ゴールドマン等に外部委託するのであれば、「JPX日経400」を上回る運用利回りを目指したものでなければ意味はありません。GPIFは、外部委託するファンドが、コストを含めても「JPX日経400」を上回る運用利回りを上げられる可能性を検討したのでしょうか。

さらに、外部委託する「ROEに着目」した「アクティブ運用」のファンドの運用利回りが、「JPX日経400」を上回るものだったとしたら、その運用利回りの源泉がどこにあるのかを確認する必要があります。

「ROEに着目」することで、「売買代金・時価総額の大きい1000銘柄をROE、営業利益、時価総額の3点で評点して絞り込み、企業統治の取り組みなど定性的評価も加味」したとされる「JPX日経400」を上回る運用利回りを上げているファンドがあるとしたら、それは「流動性」などの面で大きなリスクをとったか、「JPX日経400」に含まれていない高ROE銘柄が市場に沢山残されているということになります。

だとすると、「委託規模は1社あたり、2千億~4千億円とみられる」(日本経済新聞)という、大きな規模のファンドで、「流動性リスク」を負うことの是非が議論されるか、「JPX日経400」という指数がそもそも魅力的な株価指数なのかという議論がなされるのが当然です。

【参考記事】 新指数「JPX日経400」がもたらす効果 ~ 付加価値を奪うか、リスクを高めるか

GPIFが、「市場平均を上回る運用利回りを目指す『アクティブ運用』を本格化する」という表面的な方針に向かって暴走し、本質的に「JPX日経400」をベンチマークとした「パッシブ運用」と変らない「ROEに着目」した「アクティブ運用」に多額の報酬が支払おうとしていることに対して、有識者会議は何の異論も差し挟まないのでしょうか。
資産運用の経験のない「エア専門家」を「有識者」に祭り上げたことで、国民は高いツケを支払わされるのかもしれません。

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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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