景気基調判断下方修正 ~「悪意のある捏造」によって誇張されてきた「景気の好循環」

(2014年4月16日)
◆ 悪意ある捏造
「政府は4月の月例経済報告で、国内景気の基調判断を下方修正する方針だ。雇用情勢は底堅いため3月までの『緩やかに回復している』という表現は残すものの、消費税率の引き上げで個人消費が落ち込んでいることを織り込み、景気認識を引き下げる。下方修正は2012年11月以来となる」(16日付日本経済新聞 「景気判断、下方修正へ」)

この報道から推察されることは、政府は「株価の下落」を相当気にしているということです。

「1月には消費増税前の個人消費の拡大を踏まえ判断を引き上げた」(日本経済新聞)と、各種の経済統計をみて「景気は、緩やかに回復している」(1月月例経済報告)と基調判断を引上げたはずの政府が、今回は「消費税率の引き上げで個人消費が落ち込んでいることを織り込み」と、不確実な予測に基づいて「景気認識を引下げる」というのは、全く一貫性のないものだと思います。

1月の月例経済報告のなかに「消費税率引上げに伴う駆け込み需要及びその反動が見込まれる」と記載されていましたから、政府にとっては既成路線なのかもしれません。

しかし、16日の衆院財務金融委員会で麻生財務大臣は「今までのところ予想していたより反動減は少なかったと感じている」と答弁されています。ということは、政府は、消費税率引き上げが個人消費にもたらした影響について「予想していたより少なかった」という判断のなかで、「消費税率の引き上げで個人消費が落ち込んでいることを織り込み」と、予測に基づいて景気認識を引き下げるという、矛盾した決定をすることになります。

消費増税の景気への悪影響が予想より少なかったと判断していながら、消費増税によって個人消費が落ち込むことを予測して景気認識を引下げるというのは、全く筋が通らない話です。

消費増税実施前まで散々国内景気は好循環が続くと煽り立てて来た安倍政権が、消費増税実施後何の経済統計も発表になる前に個人消費の落ち込みを語るというのは、これまでの景気見通しに「悪意のある捏造があった」ということに他なりません。

◆ 「サプライズ追加緩和」は近い?
ここに来て、消費増税の影響を経済統計で確認する前に、安倍政権が個人消費の落ち込みを理由に景気認識を引下げようとしているのは、アベノミクスの唯一の成果である「円安・株高」に陰りが見え始めたからであることは想像に難くありません。

「会談後、執務室に戻った首相は株価ボードを真っ先に見ながら『もうちょっとだったなあ』と漏らした」(16日付日本経済新聞 「黒田効果、首相が演出」)

まさか、総理の執務室に実際に「株価ボード」があるわけではないと思いますが、この記事からも、安倍総理が「全国津々浦々まで景気回復の『錯覚』を届けることの出来る株価」を気にしていることが伝わってきます。

今回、安倍総理と黒田日銀総裁の会談直後に、政府が「消費税率の引き上げで個人消費が落ち込んでいることを織り込み、景気認識を引き下げる」のも、日銀が「追加緩和」を実施する環境作りだと思われます。「景気は、緩やかに回復している」という景気認識を維持したままでは日銀が「追加緩和」に踏み切るのは、さすがに難しく、金融市場から反撃を受ける可能性が高いいからです。

日銀が「追加緩和」出来る環境を整えるために、政府が「国内景気の基調判断を下方修正」した後の問題は、日銀がどのようにして「タイミングのサプライズ」を演出するかということになります。

幸い、複数の政策委員が、「2%の物価安定目標の達成」は難しいという見通しを持っています。ですから、日銀が「追加緩和」に踏み切るための必要条件は、「2%の物価安定目標の達成」に強い自信を示して来た黒田総裁が、「2%の物価安定目標の達成」に黄色信号が点ったことを尤もらしく説明出来る材料ということになります。

それが、ウクライナ情勢の緊迫化や中国景気の失速など、海外要因を背景にした「円高・株安」であるのが黒田総裁にとって最も好都合なのだと思いますが、消費増税による予想以上の個人消費の低迷を示す経済統計による「円高・株安」でも仕方ないと考えていると思います。

「首相は期待の高かった追加緩和を直接要請しなかったとされているが、黒田氏は会談後に記者団に『ちゅうちょなく政策調整を行う』と明言」(同 日本経済新聞)

いくら「金融・経済リテラシー」の低い安倍総理でも、さすがに黒田日銀総裁に「追加緩和を直接要請」することはないとは思いますし、仮にあったとしてもそれを公言してはいけないことくらいは認識しているはずです。個人的には、安倍総理が黒田日銀総裁に要請したことは、「円高・株安」局面が訪れたら、何でもいいから理由を付けて「躊躇なく追加緩和」に踏み切ること、そのために政府は「国内景気の基調判断を下方修正」しておく、というものだったのではないかと想像しています。

アベノミクス唯一の成果を消滅させかねない「円安・株高」を何としても阻止したい安倍総理と、「日本経済の質」のコントロールよりも「金融市場を動かす」ことを日銀総裁の使命、権威を表すことだと勘違いしている黒田日銀総裁のタッグですから、会談の主要議題が「市場を動かす」ことであった可能性はかなり高いと思います。

政府が「国内景気の基調判断を下方修正」を急ぐのは、黒田日銀が何時でも「サプライズ追加緩和」を打出せるようにするための環境作りだと考えるべきだと思います。

自らの政治信条を実現するために、長期政権を維持する必要のある安倍総理。そのためには、7割前後の国民が実感していない「景気回復」を主張するための唯一の材料である「円安・株高」を維持しなければなりません。

今の状況下で打ち出せる次の一手は「サプライズ追加緩和」以外にありません。例えそれが一時的に金融市場を変動させるものに過ぎないもので、「日本経済の質」に何の影響を及ぼすことのない政策であったとしても、「サプライズ追加緩和」をしてくる確率は高く、その時期も、市場予想の7月より早くなる可能性がかなり高いと考えておくべきかもしれません。

安倍総理が「市場との対話に神経をとがらせている」のは、「エア景気回復」を演じるために「円安・株高」が必要不可欠なツールだからに他なりません。「エア景気回復」を演じるために安倍総理と黒田日銀総裁が「市場との対話」に励めば励むほど、国民とのコミュニケーション・ギャップが広がっていくという構図になっていることなど、御両名の眼中にないことは間違いなさそうです。

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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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