消費増税後も「支出が変わらない家計」と、消費増税後「確実に収入が増える輸出企業」

(2014年4月21日)
◆増税後支出が変わらなければ、景気は悪化する
「日本経済新聞社とテレビ東京による18~20日の世論調査で、4月から消費税率が8%に上がった後、家計支出に影響が出たかを聞くと『変わらない』が66%を占め『支出を減らした』の31%を大幅に上回った」(21日付日本経済新聞 「支出『変わらず』66%」)

消費増税の旗振り役を務めて来た日本を代表する経済紙は、何があっても「消費増税による個人消費の悪影響は軽微」と主張し続けるつもりのようです。

以前も指摘しましたが、消費増税後に「家計支出が変わらない」ということは、「増税で消費を抑える動きは限られている」というのではなく、実質的に「消費は抑制されている」ということになります。

【参考記事】「日経流レトリック」にご用心 ~ 増税後も「家計の支出を維持」すれば景気は鈍化する

これまで消費者は、本体価格100円の商品を購入する際、5%の消費税を加えた105円を支出して来ました。ですから、消費税が3%引上げられ8%になったら、消費者は当然この商品を購入する際に108円支出しなければならないということになります。

「支出が変わらない」ということは、本来消費税込みで108円払わなければならないところを、これまでと同じ105円しか支出しないということです。

これは、販売される商品の品質と内容が一定ならば、消費者は購入数量を約2.8%減らして「支出が変わらない」ように調整をしているということになります。消費者が購入数量を減らしたのですから、当然、販売店側の売上収入も約2.8%減ることになります。

つまり、消費者の「支出が変わらない」ということは、税率が上がった分、消費者の購入数量と、販売店の売上収入が減るということです。販売店の売上収入が減った分は増税分ですから、「税収」だけが増えているという構図です。増税によっても「家計支出が変わらない」というのは、消費者が購入数量を減らし、販売店が収入を減らした分が税金に回っているということでしかありません。

もし、消費増税によっても消費者が消費行動を変えていないのであれば、消費支出は2.8%増えていなければなりません。消費増税後に消費支出が2.8%以上増えていなければ、名目GDPを減らす要因になります。GDPのなかで「家計最終消費支出」が占める割合はほぼ6割ですから、増税後「家計支出が変わらない」としたら、それだけでGDPを約1.7%押し下げる効果を持つことになります。

家計の消費支出の2.8%の減少は、GDPの金額に換算すると約8.4兆円という規模になります。内閣府が非公式に公表している2013年10-12月期の需給ギャップがマイナス1.6%、金額にして約8兆円ですから、増税後「家計支出が変わらない」ということは、それと同規模の「需要不足」を生み出しているということに他なりません。

そもそも「増税後の支出が変わらない」ことが経済に悪影響を及ぼさないのだとしたら、税金を使って「消費増税Gメン」まで導入して、増税分を価格転嫁するよう指導する必要などなかったということになります。経済規模は「価格×数量」で決まるわけですから、いくら消費増税分を価格転嫁しても、「数量」が減ってしまっては経済成長には繋がりません。

日本を代表する経済紙は、なぜこうした「未熟な記者」であっても当然身に付けていなければならないようなことを無視し、「増税後も家計の消費支出は変わらない」ことが、さも日本経済にプラスであるかのような誤った印象を読者に与えかねない記事を大々的に掲載するのでしょうか。

◆ 消費増税によって確実に増える「輸出企業に対する消費税還付金」
「社会保障財源を確保するため、税率を8%に引上げられたことを『評価する』は52%で、『評価しない』の39%を上回っている」(同 日本経済新聞)

この記事では、過半数の国民が「社会保障財源を確保するための消費増税」に理解を示していることも報じています。

ここで見落としてならないことは、過半数の国民が消費増税を容認しているのは、「社会保障財源を確保するための消費増税」だと信じている点です。

消費増税の使い道に関して、安倍総理は国会で「全額が社会保障の充実・安定化に充てられる」」と述べています。しかし、お金に色はありませんから、消費増税分が「社会保障の充実・安定化に充てられる」という総理の答弁には何の保証もありません。

ただ、消費増税によって「自動的に増やされるもの」が存在します。それは、「輸出企業に対する消費税還付金」です。

消費税は、販売先が国内であれば、売り先から受け取った消費税と、仕入先に支払った消費税の差額を納税する仕組みになっています。しかし、海外に商品を売る輸出企業は、売り先から日本の消費税を受取れないので、仕入時に消費税を払う一方になってしまいます。こうした仕組上の不利益を補うために、輸出企業が仕入先に支払った消費税を戻してあげるというのが「輸出企業に対する消費税還付制度」です。

では、「輸出企業に対する消費税還付制度」によって、どの位の消費税が輸出企業に還付されているのでしょうか。

国税庁「統計年報」の「国税徴収・国税滞納・還付金」によると、詳細な内訳は開示されていませんが、2012年の消費税還付金総額は3兆1046億円となっています。一方、日本の輸出額は、2012年63兆7476億円、2013年69兆7742億円(財務省貿易統計)です。ですから、この3兆1046億円という消費税還付金の規模は、2012年の輸出総額の4.87%と、ほぼ消費税率と同じ水準になっています。こうしたことから、消費税還付金の殆どは輸出企業に対するものであると考えて問題はないと思われます。

また、2012年度の消費税収は概算で10.4兆円とされていますから、実に消費税収の約30%が「輸出企業に対する還付金」として払い戻されていることになります。もし、消費税率以外の条件が変わらないとして単純計算すると、とすると、消費税が5%から8%に引上げられることで、消費税収は16.64兆円と6兆円強増加しますが、同時に、「輸出企業に対する消費税還付金」もそれに伴って約2兆円増え、約5兆円になる計算になります。その結果、消費税収に対する「輸出企業に対する消費税還付金」の比率は30.6%と、2012年よりも増加することになります。

そもそもアベノミクスによる円安効果で、2013年の輸出額は69兆7742億円に増えていますから、消費税率8%なら「輸出企業に対する還付金」は約5.6兆円、2013年度の消費税収見込み額10.6兆円の52.6%(単純計算した消費税収16.64兆円に対しては33.7%)に達することになります。

消費増税分が、安倍総理の答弁通り、「全額が社会保障の充実・安定化に充てられる」保証はありませんが、アベノミクス効果による「円安」の追い風もあり、「輸出企業に対する消費税還付金」は、消費増税によって「確実に」増加して行くことになります。経団連企業が消費税に賛成する理由もここにあることは、想像に難くありません。

日本を代表する経済紙は、消費増税後も「家計支出は変わらない」ことを強調しています。しかし、消費増税後、輸出企業の「収入は確実に増える」ことにはこれまでも一切触れていません。

もし、日本を代表する経済紙が、こうした「輸出企業に対する消費税還付制度」を正しく報じていて、多くの国民が消費増税分が「社会保障の充実・安全のために支出」よりも先に、「輸出企業に対する消費税還付金」に使われることを知らされていたら、「社会保障財源を確保するため、税率を8%に引上げられたことを『評価する』は52%で、『評価しない』の39%を上回っている」という世論調査結果は反対になっていたかもしれません。

テレビCMを含めて輸出企業が大スポンサーとなっている、日本を代表する経済紙にとって、「輸出企業に対する消費税還付金制度」の存在とその実態は、「特定秘密」扱いになっているようです。

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コメント

これは一般人に対する電話アンケートの結果ですよね。支出変わらずといういう回答の意味は,「金額的に増税前と変わらない」というより,「増税前と同じ勢いで買っている」ととらえるべきではないかと思います。
商店街のどの商店主に聞いても,スーパーのパートのおばさんに聞いても,飲食店でアルバイトしている大学生に聞いても,「増税の影響は,全く感じない」と言っています。

Re: タイトルなし

Shimizu様 この度はコメントをお寄せ頂きありがとうございます。
仰る通り、この世論調査は電話アンケートに過ぎませんから、実態より気分の方が強く出ていると思います。ですから、小生としては「消費増税の影響は軽微だ」という材料にするのは如何なものかと思っている次第です。
現実問題として、人間は消費税が3%上がった4月1日から突然節約できるものではありません。まずは「増税前と同じ勢い」を続けるものだと思います。しかし、家計は結果支出総額で管理されますから、「増税前と同じ勢い」で生活した結果、月末には予算以上の支出になっていることに気付き、それから節約が始まるという形になるような気もします。ここでも、家計支出は変えずに、夫の小遣いを減らすということも多いでしょうから、奥さんに聞いた場合h「家計支出は変わらない」と答える可能性もあります。
消費増税の影響が何時、どのような形で出て来るかわかりませんが、消費増税の影響はないというプロパガンダだけは止めて頂きたいと思っています。

一方的過ぎませんか?

輸出企業は、自分が輸出に対応する部分として払った消費税分しか還付を受けられません。(100%輸出しているというのでなければ、全額控除は受けられません。)ということは、還付額が増えるということはそれ以前にそれだけ一旦消費税として支払った金額が増えているわけで、その片面だけを捉えて「収入が増えた」というのはいかがなものでしょうか?
消費税というものは国内消費に対する税金なのですから、国庫への納付額を増やすには結局最終国内消費を増やす必要があります。その意味で前段には納得なのですが、その対策(の有無)に触れずに一方的に輸出企業を断じるのは、今度は雇用等に影響が出てくる話となりませんか?
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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