「ハムレット安倍総理」が狙う「公的年金資金」 ~経済が「理想的な形」にある中での「追加金融緩和」

(2014年5月21日)
「消費増税の影響は殆どないことにしたい」、しかし、「追加金融緩和に踏み切るための口実も欲しい」。

安倍総理の今の心境は、恐らくハムレットのような心境なのではないかと思います。

「集団的自衛権行使容認」という自らの「政治信条」を実現するためには、高い支持率を維持しなくてはなりません。そして、その高い支持率を維持するためには、「景気回復」を強調し続けると同時に、それを匂わせるための「円安・株高」が必要不可欠です。

アベノミクスによって経済が好転していることを強調するためには、「消費増税の影響」をほとんど受けずに、経済が好循環を続けていると言い続ける必要があります。

一方、アベノミクスに飽きて来ている金融市場を「円安・株高」といえる状況に維持するためには、日銀による「追加金融緩和」期待を残し続ける必要があります。

しかし、日銀も円安によるエネルギー価格の上昇によって押し上げられた物価上昇を「デフレからの脱却」と吹聴し、景気の好循環によってこの先も消費者物価の上昇基調が続くと繰り返して来ていますから、「追加緩和」に踏み切るためには、これまでの主張の何かを「自己否定」する必要があります。

黒田日銀総裁は「金融政策について必要があれば躊躇なく調整すると」という発言を繰り返し、何時でも「追加緩和」を実施できるように布石は打って来ていますが、「必要がある」と判断した理由を示さずに金融政策を変更することは出来ません。当然、「円高・株安阻止」が目的であったとしても、中央銀行総裁がそれを金融政策変更の理由にすることは許されません。

「駆け込み需要は想定を超えており、反動減は今のところ想定内というところであります。もしそうであるならば、これは理想的な形であると思っております」(内閣府 甘利大臣記者会見要旨 5月15日)

消費増税実施直前の1~3月期の実質GDP成長率が年率5.9%と、駆け込み需要によって予想以上に高くなったことを受け、甘利経済再生担当大臣はこのように述べました。しかし、政府が「理想的な形」だとしたGDP統計発表後の金融市場は、「円高・株安」と、政府の「理想的な形」から乖離する動きを見せています。

政府は「嘘も百回言えば真実になる」を地で行くように、日本経済が持続的回復基調にあることを強調し、一週間前には「理想的な形」とまで言い切りました。

一方黒田日銀総裁は、「壊れたテープレコーダー」の如く、「わが国経済は、見通し期間の中盤頃に、2%程度の物価上昇率を実現し、その後次第に、これを安定的に持続する成長経路へと移行していく可能性が高いと判断しています」というコメントを繰り返しています。

もし日銀が「円高・株安」の動きを懸念して、「追加緩和」に動くためには、「政府が1回本当のことを言う」か、日銀が「テープレコーダーを修理」する必要があります。つまり、どちらかが「自己否定」をする決断を下さない限り、「追加緩和」には踏み切り難いという状況にあります。

「金融市場の強化策として、約130兆円の公的年金を運用する年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)の改革に触れた。機動的に資産運用の構成を見直すため意思決定の仕組みを改める法改正について『必要性を含めた検討を加え、その取り組みの加速を要請する』とした」(21日付日本経済新聞 「成長戦略で自民案」)

政府と日銀。両者が「自己否定」せずに済み、かつ、足下の日本経済に悪影響を及ぼさないで済む方法の一つは、「公的年金資金を使った株価維持」です。

自民党が政府の成長戦略に向けた提言案でGPIFの「機動的な資産構成の見直し」を入れたのも、日銀の「追加緩和」と異なって「株価動向」に応じて資金を投入することが可能になり、間接的なアナウンス効果も含めて株価に働きかけることができるからに他なりません。「集団的自衛権行使容認」を目指す自民党にとっても、「株価維持」は必要不可欠であるからです。

「ハムレット安倍総理」が「集団的自衛権行使容認」を実現するために選ぶ選択肢は、公的年金資産(GPIF)を利用した「株の買い支え」になる可能性はかなり高まったと思われます。

公的年金資金を使って「買い支え」することで、「買手不足」状態になって来ている株式市場に「新たな買手」が登場してくるというなら問題はありません。しかし、将来GPIFが「出口」に向かう時までに、もし「新たな買手」が現れなかった場合、公的年金はどうなるのでしょうか。「迎え酒」の如く、株式の資産配分が100%になるまで「株の買い支え」を続けるのでしょうか。それとも、市場が「買手不足」状態にあるか否かに関らず、粛々と大量の売りを出すのでしょうか。

そうした事態になれば、公的年金制度は名実ともに崩壊することになります。一般国民にとって、これはコストパフォーマンス的に割に合うものではありません。しかし、「ハムレット安倍総理」にとっては、それによって「集団的自衛権行使容認」が達成出来るのであれば、安いものともいえます。

公的年金による「株買い支え」は、市場から攻撃を受けた安倍政権に対するGPIFによる「集団的自衛権行使」ということかもしれません。

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