本当のような嘘の話し ~ 法人税減税は「成長戦略の柱」、 「家計の7割」「企業の6割」が消費増税の影響はない

(2014年6月12日)
◆ 「生産性の低い」国内企業を淘汰する可能性を秘めた法人実効税率引下げ
「政府・与党は現在35.64%(東京都の場合)の法人税の実効税率を2015年度から数年内に20%台まで引き下げる方針を固めた。6月下旬に閣議決定する経済財政運営の基本方針(骨太の方針)に盛り込むが、財源の扱いではなお調整が続いている。アジアや欧州の主要国に比べて高い税率を下げ、企業による日本への投資を呼び込む環境を整える」(12日付日本経済新聞「法人税 数年内に20%台」)

安倍総理が唱える成長戦略の柱ともいえる法人実効税率の引下げが、数年以内に20%台まで引き下げられることが確実になったようです。法人実効税率を引下げるのは、「アジアや欧州の主要国に比べて高い税率を下げ、企業による日本への投資を呼び込む環境を整える」ためだという解説されています。

安倍政権は、法人実効税率を引下げることで「日本への投資を呼び込む」こと、つまり「海外企業の日本進出」を促すことで、日本経済を活性化しようとしているようです。

「東証1部上場企業の売上高営業利益率(昨年度)は製造業で6.7%、非製造業で5.3%。米国(11.5%)の半分にとどまる。自己資本利益率(ROE)など資本効率も悪い」(11日付日本経済新聞 「収益向上へ事業再編を」)

日本を代表する経済紙の指摘によると、日本の上場会社の営業利益率は、米国企業の半分に留まっています。日本企業の営業利益率が米国の半分に留まっている理由としては、「生産性が低い」、「過当競争になっている」ということなどが考えられます。

こうした状況の中で、法人実効税率を引下げることで「日本への投資を呼び込む」ことにした場合、どうなるのでしょうか。「日本への投資を呼び込む」ことが出来れば、一時的には雇用や投資が生まれますから、日本の成長率を上向くかもしれません。しかし、教科書的に言えば、その後は日本国内の「過当競争」がさらに厳しくなりますから、「生産性の低い」国内企業は淘汰され、国内企業の投資や雇用は縮小し、日本経済も減速して行くことになります。

つまり、法人実効税率の引下げによる効果は、「行って来い」になる可能性があり、果実を得難い政策だと言えます。

◆ 法人減税が成長に繋がるかは「消費地としての魅力」に懸かっている
国内企業が淘汰されないようにするためには、日本国内の需要が拡大し続ける必要があります。そのためには、日本進出する企業が、「生産性向上に繋がらない投資」をし、「余剰人員を抱え込む」とか「不必要に高い人件費を掛ける」など、国内企業と以上に「生産性の低い」経営をすることで、国内に無駄な資金をばら撒いてくれることが必要になります。

法人実効税率の低さが国際競争力を発揮するのは、「税前利益」が同じであれば「税引後利益」が大きくなるからです。この「税引後利益」は、「配当金」「役員賞与」「内部留保」に使われますから、法人実効税率を下げて貰えれば、企業は株主への「配当金」、経営者に対する「役員賞与」を増やすことが可能になるわけです。したがって、株主や経営者にとっては法人実効税率の低い国というのは魅力的な国になり、その国は「国際競争力のある国」だといわれるのです。

しかし、「税引後利益」のほとんどを「配当金」と「役員賞与」に使われてしまえば、利益の多くが国外流出することになりますし、残された「内部留保」も日本で使われる保証があるわけではありません。つまり、法人実効税率の引下げによって「国際競争力のある国」にすることは出来ますが、それによってその国が成長出来るかは、「内部留保」を国内投資という形で使わせることが出来るかにかかっているということになるのです。

企業戦略として「消費地生産」という流れがありますから、「内部留保」を国内投資という形で使わせるためには、国内需要があり、日本が「消費地としての魅力」を保つことが必要になります。つまり、この「消費地生産」という流れから取り残されないようにするためには、法人実効税率引下げによって「日本への投資を呼び込む環境を整える」こと以外の政策で、魅力的な消費地であり続けなければならないということです。

◆ 支出抑制で消費増税の悪影響回避を目指す社会
「主要上場企業の6割が4月の消費増税による業績への影響はない、とみていることが分かった。日本経済新聞社が最高財務責任者(CFO)250人に、収益環境などの見方を聞いた。年度初めは駆け込み需要の反動減への警戒が強かったが、増税から2か月がたち、消費の堅調さに手応えを感じ始めているようだ」(12日付日本経済新聞 「消費増税『影響ない』6割」)

日本を代表する経済紙は、10日付紙面で「生活に影響 『軽微』 7割」という見出しで、家計の7割が消費増税の影響を軽微だと感じていることを報じたのに続き、12日付の紙面では主要企業CFOの6割が「消費増税による業績への影響はない」と見ていることを報じています。

しかし、掲載されている「消費増税の影響は?」というグラフをよく見てみると、「売上高」への影響については、「増収1.6%」、「なし58.0%」と、「現状維持以上59.6%」いう結果になっているのに対し、「営業利益」への影響については「増益0.4%」、「なし62.8%」と、「現状維持以上63.2%」となっています。

「営業利益」は、「売上」から「販売管理費」を引いたものです。ですから、「営業利益は現状維持以上」とみている企業の比率が、「売上は現状維持以上」とみている企業の比率を上回っているということは、「販売管理費」を圧縮している会社が多いということを意味するものです。

この「販売管理費」は、家賃や人件費、その他の経費などを含むものです。ここで家賃や経費などは消費増税分支出が増えているはずです。ですから、「販売管理費」を圧縮することで「営業利益現状維持以上」を目論んでいる企業というのは、人件費を圧縮することも計画に入れている可能性が高いということでもあります。

「家計の7割が消費増税の影響は軽微と感じている」、「企業の6割が消費増税の影響はないとみている」という調査がその通りであるならば、日本経済に対する消費増税の影響は限定的だといえるかもしれません。しかし、問題は、消費増税の「影響は軽微」と答えている家計も、「影響はない」と答えている企業も、ともに「支出を抑える」ことで消費増税の影響に対応しようとしているところです。

家計も企業も「支出を抑える」ことで消費増税に備えるということは、民間支出が消費増税によって縮小することを意味しています。また、企業は消費増税の影響を抑えるために、人件費を圧縮する可能性もあることが示されていますから、「家計の7割が消費増税の影響は軽微と感じている」という数字は下方修正される可能性を秘めていることになります。

「家計の7割が消費増税の影響は軽微と感じている」、「企業の6割が消費増税の影響はないとみている」という表面的な調査結果に満足し、中身の分析を一切行わない日本を代表する経済紙の報道ぶりには感心するばかりです。

報道通り、消費増税の影響が家計にも企業にも及ばないのであれば、法人実効税率の引下げで「日本への投資を呼び込む環境を整え」、営業利益率が国内企業の倍の水準にある「生産性の高い米国企業」を国内に呼び込み、国内市場で国内企業を厳しい競争に晒せることが、日本の「成長戦略の柱」といえるのでしょうか。

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