低水準の長期金利は、日銀国債買入れの「効果」ではなく、「効果がない」結果である

(2014年6月19日)
「日銀は国債買い入れによって長期金利を0.6%近辺の低水準に押し下げている」(19日付日本経済新聞 「国債保有、日銀が主役に」)

日本を代表する経済紙は、10年新発国債の利回りが0.6%前後になっているのは、日銀が「昨年4月に始めた大規模な金融緩和によって、毎月の発行額の約7割にあたる国債を買い入れているためだ」(同日本経済新聞)と報じています。

残念ながら、日本を代表する経済紙は「異次元の金融緩和」がどのようなものなのか正しく理解せず、GPIFによる日本株の買い支えと、日銀による国債買入れとを同列に捉えているようです。

一言で言えば、「長期金利を0.6%近辺の低水準に押し下げている」のは、日銀の「異次元の金融緩和」が「効果」を発揮しているからではなく、「効果がない」からです。

「黒田日銀総裁は、『異次元の金融緩和』の目的にこの『ポートフォリオ・リバランス効果』を掲げていますが、その効果はほとんど表れていないというのが現実です。2013年4月に日銀が『異次元の金融緩和』に踏み切ってから、マネタリーベース(日銀の資金供給量)は87兆円強増加しました。しかし、このうちの84兆円強、率にして96.3%の資金が『民間銀行が中央銀行に預け入れる余剰資金』となり日銀の当座預金に還流して来ており、金融機関の『貸出』は、9兆3719億円、率にして2.3%しか増加していません」(9日付拙Blog "「ECB「マイナス金利」導入~『異次元の金融緩和』を反面教師にした中央銀行らしい『金融』政策」")

要するに、日銀が銀行に供給した資金が、「貸出」という形で民間に流れて行かないために、国債と現金の保有者が銀行から日銀の間で変わっているだけになっているが故に、長期金利は上昇していないのです。決して、日銀の「異次元の金融緩和」によって長期金利が引き下げられているわけではありません。

このような誤解が生じるのは、日本に何事も「相場」で考えてしまうという悪しき習慣が根付いているからです。「異次元の金融緩和」を「相場の材料」と捉えてしまうが故に、「金融」がおざなりにされてしまうのです。「異次元の金融緩和」は、本来「金融政策」なのですから、まず「金融」としてどのような変化が起きるのかに注目するのは当然のことです。

しかし、悲しいかな日本では、「金融政策≒相場の材料」と捉えられています。「異次元の金融緩和」も、株価や為替を動かす「相場の材料」という位置付けですから、「お金がジャブジャブ」ということが「金融的」に実際にどういうことなのかが正しく理解されないままになっているのです。

ここのところ、景気回復基調が見られる米国で、テーパリング(金融緩和規模縮小)が実施される中で、長期金利の低下と株価の上昇が共存していることに対する違和感が指摘されるのも、「お金がジャブジャブ」という「金融」状況を多くの人が誤解しているからです。

こうした点は、衆議院議員有志に行った「金融経済STAP会合」でも指摘させて頂きましたし、「金融講座」においても主要なテーマの一つとして取り上げるつもりです。このような「金融的変化」に目を向けずに、「金融政策≒相場の材料」と捉え続ける限り、「金融リテラシー」が向上することなどあり得ないことだからです。

現実問題として「異次元の金融緩和」など「金融政策」によって「相場」は動きますから、「相場の材料」になるということを否定するわけではありません。しかし、「金融政策」の変更によって、「金融的な変化」が起こり、それが「相場」に影響を及ぼすわけですから、「金融的な変化」がどのようなものなのかという「プロセス」を無視してはいけません。

筆者のfacebookでも紹介させて頂きましたが、日本代表の本田圭佑は、ワールドカップ前のインタビューで次のように語っています。

「結果を作り出すのはあくまでもプロセスなんで、そこを徹底的にこだわらない限り、うん、目標は達成されないと思います。だからどうしても『結果主義』とかいう言葉がね、『予算ありきだ』みたいなことがね、言葉に、どこのサラリーマンも口にするわけですけどね、そんなこと口にしてて、そんなもの達成できない。
結果はあくまで結果にしか過ぎないから、それはサッカーもどの企業も一緒やと思う。どの分野でもね。」(17日放映 本田圭介「魂の叫び」より)

本田圭佑流に言えば、「異次元の金融緩和」を「相場の材料」としてだけ捉えるのは、「目標を達成できない」「プロセス」を無視した考え方だということになります。

「目標」はそれぞれ違いますから何とも言えませんが、せめて、金融経済に関して、中立的、客観的事実を報じるという使命を持つ日本を代表する経済紙には、「異次元の金融緩和」を「相場の材料」として扱うような低レベルで論じて欲しくないと思います。


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