「高齢者の定義を70歳にすれば、年金・雇用改革が進む」という、日本を代表する経済紙の詭弁

(2014年6月22日)
「いつから65歳以上を高齢者と定義するようになったのだろう」(22日付日本経済新聞 「けいざい解読~『高齢者は70歳から』になれば・・・」)

日本を代表する経済紙は、22日付の「けいざい解読」という記事で、このような疑問を投げ掛けています。

「日本は世界最速で高齢化が進んでいる。注目したいのは、65歳時点の平均余命だ。男性の場合、2012年の18.9年から60年にかけて22.3年、女性は23.8年から27.7年まで延びる。国連の報告書とほぼ同じ時期の55年時点の男性の平均余命は約12年。平均して余命10年あまりを高齢者として迎える期間と考えると、平均余命の延伸にあわせて高齢者入りする年齢を引きあげるのは一理ある」(同 日本経済新聞)

高齢者の定義を、65歳以上から70歳以降に引上げることを提案する根拠として、平均寿命の延伸を上げています。確かに、平均寿命が延びているという社会的変化に応じて、定義を変えることは理に適ったことでもあります。65歳後半の人達の中にも、自分は老人ではないと感じている人がかなりいることも事実だと思います。

しかし、それが「生産年齢人口の厚みを増す」ことや、「年金財政悪化の緩和」のために、労働を続けさせることを正当化するための理屈として用いようとするのには無理があるように思います。

日本の多くのサラリーマンは、40年前後、「耐え難きを耐え、忍びがたきを忍び」働いています。ですから、60歳から65歳という体力が残っている段階で定年を迎え、幾ばくかの退職金と年金を糧に、企業から独立した生活を送れるようになるというのは、ある面では40年間働いて来たご褒美でもあります。こうした中で、高齢者の定義を70歳に引き上げ、それまで労働力の提供者、年金財政の担い手となることを強いるということには抵抗感を覚えます。

「『 75歳まで働いて』 とスウェーデンのラインフェルト首相が唱えたのが3年以上前。オーストラリアは最近、70歳まで年金支給開始年齢を引き上げる改革を打ち出すなど、海外の動きは急だ」(同 日本経済新聞)

日本を代表する経済紙は、スウェーデンの例などを上げて、70歳位まで働くようにするのが「国際標準」だと指摘しています。しかし、スウェーデンは法律で「25日の有給休暇」と「6,7,8月には続けて4週間の休暇を取る権利」が保証されているうえ、有給休暇をとると僅かながらも会社からお小遣いが出る国です。

有給休暇が世界で最も取り難いうえに、長期休暇制度もなく約40年間「耐え難きを耐え、忍びがたきを忍び」定年を迎える日本とは、状況が全く異なるのです。日本を代表する経済紙は、どうしてこのような国の制度の差を紹介しないで、高齢まで働くのが世界の潮流であるかのような主張をするのでしょうか。

スウェーデンのように70歳まで労働力提供者、年金財政担い手として働かせ続けたいのであれば、スウェーデンを真似て「年次休暇法」を制定し、有給休暇の消化と長期休暇の取得を義務付けることをセットにする必要があるように思います。40年前後の長きに渡って休暇もろくにとれずに、疲れ果てた状態で目出度く70歳を迎えても、その後充実した余生を送れる人がどの位いるのでしょうか。

さらに、この記事には信じられない矛盾した主張がなされています。

まず、日本を代表する経済紙は、年金財政への影響について次のように主張しています。

「社会保障にも好影響が見込める。高齢者の就業率の高い地域ほど医療費は小さく、元気に働く60代が増えれば医療費の伸びも抑えやすくなる。60代後半が年金をもらう側から保険料をおさめる側にまわれば、年金財政の悪化を緩和できる」(同日本経済新聞)

さらに、このパラグラフに続いて、次のような主張をしています。

「年金生活に入る時期を遅らせると個人にも利点はある。みずほ総合研究所の堀江奈保子氏が標準世帯を想定して試算したところ、いまの年金制度の下でも年金の支給開始時期を70歳に繰り下げた場合、65歳を選んだ場合よりも82歳時点で年金受取総額が上回る。その差は90歳まで生きると600万円超になる」(同日本経済新聞)

日本を代表する経済紙は、60歳後半の人達が、70歳まで年金保険料の担い手になることで、年金財政の悪化を緩和できると主張しています。その一方で、個人が受取れる年金受給額総額は、年金受給開始を70歳に繰り下げた場合の方が多くなるとしています。

日本の年金財政が厳しい状況にある(金融的には既に破綻している)のは、少子高齢化により、保険料収入よりも年金給付額が多くなって来ていることが根本的原因です。

つまり、個人が受取る年金受給総額の増加は、年金財政の悪化をさせるもののでしかありません。

日本を代表する経済紙は、法律で国民に休暇取得の権利を保障しているスウェーデンを例に挙げて高齢者になるまで労働を続けることが国際潮流であるかのような主張すると同時に、個人が受取る年金受給総額が増えることと、年金財政改善が両立するかのような矛盾した主張をしているのです。

「いつから65歳以上を高齢者と定義するようになったのだろう」

日本を代表する経済紙は、このような疑問を投げ掛けていますが、長年の読者の中に「いつから日本を代表する経済紙は、こんな質の低い記事を平気で掲載するようになったのだろう」と嘆いている人が増えて来ていることを忘れないでほしいものです。

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