新たなファンドの仕組が復興を強力に支えるという幻想

(2014年7月3日)
「安倍晋三首相は2日、東日本大震災で被災した企業の資金繰りを支えるため、政府系金融機関などが出資する新たな基金を設立する考えを示した。根本匠復興相に『新たなファンドの仕組みをつくり、金融面で復興を強力に支えていくように』と指示したことを明らかにした。津波による被害を受けた岩手県大槌町を視察した際、記者団の質問に答えた」

国民の理解が進んでいない集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を閣議決定した翌日、安倍総理は被災地を訪れ、「金融面で支えることが大切だ」と強調し、被災地へ寄り添う総理という演出をして見せました。

毎度のことではありますが、違和感を覚えるのは、「ファンド」という言葉がまるで「打出の小槌」であるかのように扱われていることです。経済音痴の安倍総理がファンドのことを理解しているはずはありませんから、こうした日本人の錯覚を利用しようとして入れ知恵をされている方がいるということだと思います。

簡単に言えば、「ファンド」というのは「資金調達の一つの手段」であって、「売り上げを伸ばす手段」ではありません。しかし、日本では「ファンド」を使えば企業も成長し、プロジェクトも成功するかのような妙な先入観が醸成されて来ています。「ファンド」に対する盲目的な信仰を見ていると、1990年代の金融市場で起きたデリバティブに対する信仰を思い出さずにはいられません。

「ファンド」というのは、「特定の事業」に対して資金を提供することを可能にする仕組みで、投資家が望まない怪しげな事業に資金が使われること(コミングル・リスク)を防げるものですから、「ファンド」という仕組みを使うことで資金を集めやすくなるという面はあります。

しかし、「仕組上」資金を集めやすということと、「特定の事業」が収益をあげるということは同義ではありません。

「ファンド」といっても、その形態は通常の株式会社の延長線上にあるものでしかありません。もし、「ファンド」にすることで売上が伸びるのであれば、今頃日本中ファンドだらけになっているはずです。何しろお金は余っているのですから。残念ながらそうなっていないのは、事業で収益をあげられる可能性が高くないからに他なりません。

国民の「ファンド」に対する無知と、それに基づく無意味な畏敬の念を逆手にとるようなコメントは、そろそろお終いにすべきです。そして、根本的問題は、「資金調達」ではなく「売上」であるという認識に立った経済運営をするべきだと思います。


金融講座

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR