消費回復に強気な政府 ~ 「経済の悪循環」が示唆される中で「お伽の国の甘利」が見る「白日夢」

(2014年7月23日)
「最も違いが出ているのがGDPの6割弱を占める個人消費だ。政府の個人消費の見通しは前年度比0.3%増とプラスだ。4~6月期こそ落ち込むものの、夏場以降、ボーナス増などで所得環境が好転。物価上昇や増税の影響はある程度吸収し消費も回復するとのシナリオを描く」(23日付日本経済新聞「政府予測 消費回復に強気」)

経済見通しも「気から」と考えているのでしょうか。「消費増税後の景気回復に関し政府の強気姿勢が目立ってきた」(同日本経済新聞)ようです。

「アベノミクスにより、賃金もボーナスも十数年ぶり、何十年ぶりの改善が生まれ、(経済の)好循環がまわりつつある」(同日本経済新聞)

「お伽の国の甘利」は、さしたる根拠もなく今の個人消費の現状について「十数年ぶり、何十年ぶりの改善が生まれ、(経済の)好循環」が起きているという「白日夢」を見ているようです。

「消費増税後の景気回復に関し政府が強気姿勢」を見せた22日、迅速性と先行性が高いといわれる「日経・東大日次物価指数」が、日本経済新聞デジタルメディアによってデータ提供が開始されました。東大日次物価指数は2013年5月20日より東大のHPで公開されていますので、日本経済新聞がデータ提供を開始したことに特に意味があるわけではありません。

興味深い点は、試験公開が始まった「売上高指数」です。「売上高」は、「物価(単価)」と「数量」に分解することが出来ます(売上高=単価×数量)から、「物価指数」と共に「売上高指数」が公表されるということは、「販売数量指数」が推計できるということです。

今回試験公開された「売上高指数」と「物価指数」から推計した「販売数量指数」の推移を見てみると、4月の消費増税を境に変化が起きていることが示唆されています。

東大日次物価指数

東大日次物価指数は2011年10月から一貫してマイナス圏で推移し、短期的トレンドとして日本経済が3年近くデフレ局面に入っていることが示されています。しかし、この4月の消費税率引上げ前までは、デフレによる「物価下落」が「販売数量増」を通して「売上増」をもたらす効果も一部で表れていました。「販売数量増」による「売上増」をもたらした日の比率は、2012年度には35.6%、アベノミクスが本格的にスタートした2013年度には63.6%にまで高まりました。しかし、4月の消費増税実施後この比率は僅か10.8%にまで低下して来ています。

消費者が消費増税の前後で支出総額を変えなかったとすると、消費税率が5%から8%に引上げられることによって計算上「販売数量」は2.78%程度減少することになります。しかし、4月以降「販売数量」の減少幅は平均で3.77%と、計算上の減少幅を約1%上回り、直近7月20日時点では5.48%も減少して来ています。

東大日次物価指数は、スーパーで扱っている加工食品と日常品で算出されるものです。したがって、「売上高指数」の低下と「販売数量減少」の理由として考えられることは、「生鮮食品(総務省5月CPIベースで前年同月比プラス12.1%)」や「光熱費(同プラス8.9%)」の値上がりによる生活コストの上昇を、加工食品の購入数量を減らすことで抑えているということです。換言すれば、スーパーが加工食品などの特売セールなどを行っても、それが購入数増加に繋がっていないということです。

「価格低下」が「販売数量増加」に繋がらないということは、消費者の実質購買力が落ちていることを示唆するものです。

「家計の7割が消費増税の影響を軽微と感じていることが、日本経済新聞社の読者モニターへの調査でわかった。増税について『生活への影響はない』『実感はない』とした人が合計43%。『節約で吸収できる』との回答を合わせ68%に達した。これまでの家計見直しの成果が表れ、所得環境の改善もあって冷静に対処する世帯が多い」(6月10日付日本経済新聞 「生活に『軽微』7割」)

これまで日本を代表する経済紙は、このような消費増税の家計への影響が軽微であるような報道を繰り返して来ました。しかし、今回日本経済新聞デジタルメディアが配信を始めた「日経・東大日次物価指数」と、試験的に公開が始まった「売上高指数」によって、これまでの主張が誤りであったことが証明される日は、確実に近付いて来ているようです。

【参考記事】
家計の7割が消費増税の影響を軽微と感じている?~世間知らずの「箱入り新聞業」が実施したおかしなモニター調査
「日経・東大日次物価指数」公表開始 ~ 「デフレからの脱却」が進んでいるかを測るバロメーター

個人消費の現状について「十数年ぶり、何十年ぶりの改善が生まれ、(経済の)好循環」が起きているという「白日夢」を見ている「お伽の国の甘利」は、「東大日次物価指数」と「売上高指数」が示す現実をどのように受け止めるのでしょうか。

今起きていることは、「十数年ぶり、何十年ぶりの所得環境の改善による経済の好循環」ではなく、「増税」と「生鮮食料品値上がり」、「光熱費上昇」という「生活コスト上昇の3本の矢」の集中砲火を受け消費者の実質購買力が低下し、「価格低下」が「販売数量増」に繋がらなくなったという「経済の悪循環」でしかありません。

「来年秋に消費税を10%に引き上げても、景気腰折れは回避できるとのシナリオだ」(同日本経済新聞)

客観的なデータが何を示唆しているかに関係なく、「期待を込めたシナリオ」に基づいて経済運営を行おうとしている安倍政権。「取引の翌々日に算出できる迅速性と先行性が特徴」(日本経済新聞)という「東大日次物価指数」のような指標が登場しても、都合のいい経済指標を、都合よく解釈し続けるのであれば、政治的なレベルは、信憑性の怪しい「政府の期待を表した経済指標」を発表する世界第二の経済大国と同列だと見做されても仕方ありません。「東大日次物価指数」が、宝の持ち腐れにならないことを祈るばかりです。

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