バブル発生を抑えようとするFRBと、バブルを発生させてでも株価を上げたい日銀

(2014年8月2日)
1日のNYダウは3月上旬以来ほぼ5カ月ぶりの4日続落となり、5月20日以来ほぼ2カ月半ぶりの安値16,493ドルとなった。7月中旬まで史上最高値を更新するなど順調な推移を見せて来たNYダウだが、4日続落によって今年に入っての上昇分を掃出し、昨年末の水準16,504ドルを下回って来ました(「2014年主要国株式市場騰落率」はこちらから)。

一方で31日にNYダウ371ドル安を受けての東京株式市場は、円安が下支えとなり97円安の15,523円と底堅い展開でした。29日発表された4-6月期の実質GDP速報値が+4.0%(前期比年率)と予想以上の上昇を示した米国の株価が週間で約7か月ぶりとなる大幅安を記録したのに対して、「生産」「所得」「支出」の「前向きな循環」に陰りが見え始めている日本の株価が僅かながらも週間で上昇したというのが金融市場の面白いところです。

重要なことは、米国株式市場の雲行きが変わって来た理由は何かということです。一般的にはFRBの利上げが意識されて来ていることが一因として挙げられています。確かに、FRBが予定通り10月以降にテーパリング終了(金融緩和規模縮小)が確実な情勢となり、その後の金利引き上げも視野に入って来ている上、イエレン議長が議会証言で「現在の株価のバリュエーションに関して、一部セクターはやや割高」との認識を示し、バブルの発生を抑制する姿勢を明確にしているのに対して、日銀は依然として「出口論は尚早」という立場から「異次元の金融緩和」を続ける姿勢を見せています。バブルを抑制する姿勢を明確に示すFRBと、バブルを起こしてでも株価を保ちたい日銀の姿勢の違いが、ここにきて日米株価の推移に影響を及ぼして来ているとしても不思議なことではありません。

しかし、1日に発表された米国の7月の雇用統計は、29日に発表されたGDPが予想を上回ったことによって高まったFRBの早期利上げ観測を冷やす内容であったにも拘らず、NYの株価は反発しなかったことを考えると、米国株式市場の雰囲気を変えた原因が、FRBによる利上げであるとは言い切れないところです。

個人的には実際にFRBが利上げに動くのは、市場の想定よりも先になる可能性が高いと思っています。それは、法定準備預金の20倍に相当する規模の準備預金の回収という金融的課題があるからです。しかし、FRBが利上げをしないということを市場に悟られてしまった場合には、バブルを抑制することが難しくなるというジレンマを抱えています。

「量的緩和の縮小とゼロ金利の維持は9対1の賛成多数で可決した。唯一反対票を投じたフィラデルフィア地区連銀のプロッサー総裁は、緩和の停止後もゼロ金利の継続が適切とした声明にFOMCが縛られ、米経済情勢の変化に十分対応できない恐れがあるとの考えを反対理由に挙げた」(31日付日経電子版)

米国GDPと雇用統計の間に開催されたFOMC後の声明では、タカ派であるプロッサー総裁が「量的緩和の縮小とゼロ金利の維持」に反対票を投じたことが明らかにされています。これまでFOMCで反対票が増えることは議長の指導力、統率力の低下と受け取られかねないことでしたが、現実的には利上げし難いFRBが、利上げという選択肢を持っていることを市場に意識させ続ける上では、反対票を投じるタカ派の存在はバブルの発生を抑える必要があるFRBにとっては好都合な状況だと言えそうです。

 【参考記事】 FRBのジレンマ ~ 高まる「抽象的出口論」と「具体的出口論」の狭間

FRBの金融政策以外にも、ウクライナ情勢を巡る政治的動きや、解決の糸口が見えないガザ地区の問題、アルゼンチンのデフォルト、ポルトガルのエスピリト・サント銀行の信用不安など、金融市場に影響を及ぼす材料には事欠かない状況にありますが、数多ある悪材料の中で、個人的に気に懸かっているのはアルゼンチンのデフォルト問題です。

アルゼンチン国債は2001年にデフォルトして以降、世界の金融市場から締め出されてきていますし、その保有者のほとんどは不良債権専門のヘッジファンドだとされていますから、今回のデフォルトによって金融市場に混乱を来すことはないと言われています。

こうした見方は正しいものだと思いますが、引っ掛かるのは、米国連邦地方裁に訴えていたホールドアウト債権者(債務再編に応じなかった一部債権者)の一つNMLキャピタルがアルゼンチン国債に投資したのはデフォルトのあとだということです。デフォルトによって紙屑同然となっていたアルゼンチンの国債を4870万ドルで購入し、今回の判決で額面金額の8億3200万ドルを受け取るというNMLの投資行為は合法的なものですし、ヘッジファンドとして当然の投資行動かもしれません。

しかし、デフォルトが決定した後に紙屑同然の価格で買った債券のパリバス条項(債権者を皆同順位と見做す)を人質にして額面で買戻せというのは、今後の米国債券市場に影響を及ぼす様な気がしてなりません。日本の投信市場では米国の低格付け債券などに投資する毎月分配型ファンドが人気を集めていますが、日本よりも企業の立ち直りが早いという米国破産法の特徴が今回の判決で失われるとしたら、低格付け債券/債権の価格形成も変化して来る可能性があるように思えます。

直ぐには影響を及ぼすものではありませんが、行き過ぎた資本主義の影響は、我々が気が付かぬうちに市場の価格形成に影響を及ぼすかもしれません。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR