ドイツの「デフレ懸念」と日本の「インフレ恐怖」

「ユーロ圏18ヵ国の7月の消費者物価上昇率は前年同月比で0.4%だった。前月(0.5%)よりも伸び率が縮んだ。物価低迷をもたらしたのは域内最大の経済直を持つドイツ。経済は好調だが、上がるのは家賃や不動産価格ばかり。通貨高などを反映して輸入に頼るエネルギー価格はマイナス領域から抜け出せず、物価全体の伸び率は0.8%と再び1%を割り込んだ」(3日付日本経済新聞 「欧州、デフレ懸念拭えず」)

深く考えることなく「物価上昇期待」という念仏を唱え続けている副作用なのか、日本を代表する経済紙は、ドイツでの物価低迷を「デフレ懸念」と称し、好ましくない経済状況だと決めつけているかのように報じています。

しかし、所得が伸びない中で「通貨安などを反映して輸入に頼るエネルギー価格を中心とした物価上昇」に悩まされている多くの日本の目には、「経済は好調だが、上がるのは家賃や不動産価格ばかり。通貨高などを反映して輸入に頼るエネルギー価格はマイナス領域から抜け出せない」というドイツの姿は羨ましく映っているかもしれません。

「経済は好調だが、上がるのは家賃や不動産価格ばかり。通貨高などを反映して輸入に頼るエネルギー価格はマイナス領域から抜け出せず」という経済状況は、日本経済が最高潮にあった80年代後半と同じようなもので、日本人としては取り戻したい経済状況といえるもの。

日本を代表する経済紙は、「デフレ=悪」という固定概念を抱いているようですが、物価の低迷が全て悪いわけではありません。年金や間接金融など社会システムは、基本的にインフレを前提に成り立っていますから、物価の低迷が社会システムに悪影響を与えかねない状況になると問題になるのです。

重要なことは、社会システムを支えるのに必要なインフレは、基本的に資産インフレですから、「物価全体の伸び率」が低くても、不動産価格や株価など資産価格が上昇していれば問題はありません。

フローとしての低インフレと、資産インフレという都合のいい状況の持続性の問題はありますが、単純に「デフレ=悪」、「インフレ=善」と決め付けるのは短絡過ぎるように思います。

ドイツはユーロ圏18カ国全体のGDPの約3割を占める、最大の経済国です。一方、ユーロ圏の通貨は18ヵ国全体の経済状況を反映しますから、ドイツは常に「自国の経済力に比較して安い通貨を持つ国」だということが出来ます。自国の経済力に比較して安い通貨を持つということは、輸出競争力という点でとても有利なものです。一方、その見返りとして輸入物価は高くなることになります。

こうした宿命を背負っているドイツにとって「輸入に頼るエネルギー価格はマイナス領域から抜け出せない」状況が、本当に好ましくない経済状況なのでしょうか。

この記事は、欧州でのデフレ懸念を悪いことのように扱うことで、日本で多くの国民を苦しめ始めている「インフレ期待」を良いことであるように印象付ける意図を持って書かれたもののように思えてなりません。ドイツ人が抱く「デフレ懸念」と、日本人が抱いている「インフレに対する恐怖」。現時点でどちらが深刻な問題なのか、日本を代表する経済紙は胸に手を当てて予断を持つことなく考えてみるべきかもしれません。



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近藤駿介

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