消費税10%に備え景気対策に1兆円?~「政治は結果が全てなんです」という言葉を思い出せ

「政府は2015年度予算で、経済対策に使える予備費を1兆円程度計上する検討を始めた。15年10月に消費税率を10%に引き上げた際に、景気に悪影響が広がらないように機動的に経済対策を実施できるようにする」(21日付日本経済新聞 「景気対策に1兆円確保」)

「本末転倒」の典型のようなお話しです。「消費税率を10%に引き上げた際に、景気に悪影響が広がらないように」ということは、「消費税率を10%に引き上げると景気に悪影響が広がる」ということを政府が認識しているということです。もし、そうなのだとしたら、消費税率を10%に引き上げることを見送ればいいだけの話しです。

政府が「消費税率を10%に引き上げると景気に悪影響が広がる」ということを認識たうえで、「消費税率を10%に引き上げ」るということは、「景気」よりも「消費税収」を優先しているということに他なりません。

1997年4月の消費税率2%引上げを契機に、521.3兆円あった名目GDP(年度)は2013年度には481.5兆円まで、金額で39.8兆円、率にして▲7.6%減少し、名目雇用者報酬も1997年度の280.0兆円から2013年度には248.6兆円と、金額で30.4兆円、率にして▲10.9%減少しました。しかし、1996年度に6.1兆円であった消費税収は2013年度には10.6兆円と、4.5兆円、率にして73.8%増えています。

利益に課税される法人税などと異なり、消費税は消費額が課税対象になりますから、消費税率を引き上げれば景気に関係なく税収が増えることはほぼ確実です。景気がどうなろうとも確実に税収が増えるということは、その使い道や軽減税率の線引きなどでの利権も増えるということですから、消費税を徴収する財務省としては、集める時も、支出するときも利権にありつける「2度も美味しい消費増税」といったところだと思います。「2度も美味しい」のですから、彼らの論理からすれば「景気に悪影響が広がる」ことよりも「消費税収」を優先してしまうは当然なのだと思います。こうした愚行を食い止めるには、官僚制度を尺度不明の成果主義などではなく、「名目雇用者報酬連動制」にするのが手っ取り早いのかもしれません。

そもそも、アベノミクスは「民間投資を喚起する成長戦略」が大きな柱になっていますから、「景気対策に1兆円確保」というのは、アベノミクスが「景気対策に嵩上げされた成長戦略」へと脱線して来ていることの証明でしかありません。

安倍総理は、「全国津々浦々まで景気回復の実感を届ける」と息巻いていましたが、4-6月期実質GDPが前期比▲6.8%、となったうえ、実質雇用者報酬は第2次安倍内閣発足直後の2013年1-3月期の263.9兆円をピークにこの4-6月期には257.8兆円まで低下して来ています。こうした状況下で、「景気に悪影響が広がる」ことを承知で「消費税率を10%に引き上げる」ということは、「全国津々浦々まで景気悪化の実感を擦り込む」ことに他なりません。

「百貨店やスーパーなど大型小売業の販売が力強さを欠いている。消費増税前の駆け込み需要の反動減は次第に薄れつつあるものの、7月の販売実績は軒並み前年を下回った。7月は夏のボーナス支給やセールが本格化する時期ということもあり、反動減からの脱却が期待されていたが、天候不順の影響もあり、消費者心理の冷え込みは続いているようだ」(21日付日経電子版 「百貨店・スーパー・コンビニ 増税後の回復ペース鈍く」)

4月の消費増税の影響を過小評価して分析能力の低さを露呈した日本を代表する経済紙や有力シンクタンクは、軒並み7-9月期にその影響が薄れることで景気は大幅に上向くという強気の見通しを示し、消費税率10%への引上げの援護射撃を行っています。しかし、「消費者心理の冷え込み」は彼らの期待ほどには回復していないようです。

「唯一、底堅い動きを見せたのが食品スーパーだ。日本スーパーマーケット協会など食品スーパー業界3団体が発表した7月の全国食品スーパー売上高は前年同月比0.2%増と3カ月連続で前年実績を上回った。食品は駆け込み需要が比較的少なかったうえ、畜産品の値上がりや総菜の好調が寄与した」(同 日経電子版)

どんな暗闇の中でも一条の光を見つけ出すのが得意な日本経済新聞は、このように「食品スーパーの売上高」に光を見出しているようです。しかし、消費者物価指数が前年同月比3.6%上昇しているなかで、「食品」は3ヶ月連続で同5%以上、「生鮮食品」は3ヶ月連続で10%以上の上昇を示していることを考えると、「全国食品スーパー売上高は前年同月比0.2%増」というのは少な過ぎるものです。

また、日本経済新聞が東大と一緒に算出している加工食品を中心とした7月の次物価指数は、前年同月比▲0.25%下落している上、売上高指数も▲2.61%の減少となっています。

こうした中で7月の全国食品スーパー売上高が前年同月比で0.2%増えたということは、それは消費者が、買い溜めの効かない価格の上昇している「生鮮食品」を、いやいや購入しているからに他なりません。ですから、これは暗闇の中の一条の光ではなく、買わざるを得ない「生鮮食品」の価格が2桁も上昇してしまったことで、消費者が「加工食品」の購入数量を減らしているという生活防衛の苦しみを示唆したものだと見るべきではないかと思います。

アベノミクスが始まって1年半が経過した今、政府がやるべきことは、GPIFの資金やゆうちょ銀行、簡保生命の資金で「円安・株高」を維持し、虚構の景気回復期待を演出して消費税率を10%に引き上げる環境を無理矢理作り上げることではなく、この1年半のアベノミクスの成果を客観的に分析して適切な政策を実行して行くことです。

「政治は結果が全てなんです」

以前、国会答弁でこのように言い放った安倍総理。アベノミクスの結果が数字に表れて来た今日、何時までも「円安・株高を背景とした景気回復期待」は通用しないことを認識し、「政治は結果が全てなんです」という自身の言葉を思い出して謙虚に経済対策に当る時期に来ています。

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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