時代遅れの代ゼミを大規模なリストラに踏み切らせたアベノミクス~そして、代ゼミのリストラがアベノミクスの素顔を暴く

(2014年8月26日)
大手予備校の一角である「代々木ゼミナール」が、27校舎のうち20校舎を閉鎖することが大きな話題となっています。「代々木ゼミナール」のOBの1人でもある筆者にとっては、時代の流れを感じずにはいられない出来事でもあります。

「代ゼミが大幅な事業縮小を迫られたのは、浪人生の減少や、国公立、理系を志望する大学受験生が増えていることに対応しきれなかったためだ」(26日付日本経済新聞 「代ゼミ、希望退職400人」)

代ゼミが大幅な事業縮小に追い込まれたのは、少子化や浪人生の現象という社会の構造変化にうまく対応できなかったことが原因のようです。有名講師を揃え、多くの受験生を一か所に集めるという筆者の学生時代と同じビジネスモデルは、少子化とネット化が進んだ社会では通用しなくなったということです。集客力のある講師を揃え、大きな会場に多くの受験生を集めるというやり方は、講師料はもとより、多数の受験生を収容するための広い教室を、交通の便のいいところに保有しなければなりませんから、大きなコストがかかるビジネスモデルだと言えます。

「ネット配信や国公立・理系に強い競合他社は事業を拡大している」(日経電子版)

我家の息子も、大学受験の時には自宅近くにあるネット配信を利用して伸びて来ている予備校に通っていましたが、テレビでもお馴染みの有名講師を集めているため、講習料は代ゼミを始めとした既存の予備校よりかなり高めに設定されていました。その一方で、一か所に多くの受験生を集めるビジネスモデルでないため、広い教室も、駅近である必要もありませんから、不動産賃料は都心部に持つよりずっと割安のはずですから、今流行の「個室の様なブースで受講できるネット配信」というスタイルは、代ゼミ的なやり方に比較してかなり粗利の高いビジネスモデルだと思われます。

思い返せば、筆者が受験生だった40年ほど前に受験勉強の定番の一つであった「ラジオ講座(通称ラ講)」が、大手予備校の台頭や通信教育といった受験産業の変化を受け1995年に放送終了に追い込まれるという時代の変化を感じさせる出来事もありました。

多数の受験生を一か所に集めずに受験生個々人に情報を届けるという点では、「個室の様なブースで受講できるネット配信」という昨今のビジネスモデルは、「ラジオ講座」の現代版といえるものです。20年前に淘汰されたビジネスモデルが、ネットという新たな社会インフラの発達によって「現代版ラジオ講座」という形で、大手予備校の一角を凌駕するというところがビジネスモデルの面白いところでもあり、恐ろしいところでもあるように思います。

さて、少子化や浪人生の減少という社会構造の変化は、代ゼミでもかなり前から認識していたはずですし、2010年にSAPIXを買収するなどそれなりの対応は見せて来ていました。それでも代ゼミは復活できませんでした。

それは、代ゼミが不動産(校舎)を自社で保有していたことが大きく影響していたと考えられます。校舎が自社資産である限り、「資産の有効利用」が重要な経営目標になります。幾ら「個室の様なブースで受講できるネット配信」が時代の変化に対応したビジネスモデルだったとしても、「資産の有効活用」に繋がらないビジネスモデルに切り替えるという経営判断は難しかったということは想像に難くありません。

では、以前から少子化や浪人生の減少という社会構造の変化と、それに対応出来ていないことを認識していた代ゼミが、何故この時期に大幅なリストラに踏み切ったのでしょうか。

この時期に代ゼミを大胆なリストラに向かわせたのは、不動産価格の上昇であるように思います。

地価が下落する中で「自社不動産の有効活用」を図ろうとしても、売却もままなりませんし、期待通りの賃貸収入を得ることも容易ではありません。しかし、アベノミクスの効果によって不動産価格が底打ちし、それが地方都市まで広がりを見せて来たことで、保有不動産の有効活用が出来る環境になって来たということです。

まだまだ地価全体が上昇するところまでには至っていませんが、多数の受験生を集めるのにふさわしい都市部の駅近くに位置する一定規模以上の不動産は、ファンド等にとっては、オフィスにも商業施設にも、さらにはホテルにも利用出来る魅力的な物件だと言えます。

時代遅れとなったビジネスモデルで必需品であった大規模な駅近不動産を抱える代ゼミを大規模なリストラに踏み切らせ、再スタートの背中を押したのだとしたら、これはアベノミクスの効果の一つなのかもしれません。

残された問題は、希望退職に追い込まれるだろう400人の40歳以上の職員が、早期に新しい職を得て再スタートが切れるのかということです。政府や日銀が繰り返し宣伝している通り、本当にアベノミクスの効果によって「人手不足社会」になっているのだとしたら、希望退職に追い込まれる400人の職員達も直ぐに新しいスタートを切れるはずです。

時代に合わなくなったビジネスモデルで苦境に追い込まれた代ゼミが、不動産価格の上昇で新たなスタートを切れるようになっただけで、退職に追い込まれた職員達が新たなスタートを切れないとしたら、それはアベノミクスが時代に合わない代物であるということに他なりません。

安倍総理には、「所属していた企業の経営の失敗で、『負け組』が固定化するような社会」にならないような経済運営をして頂きたいものです。
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コメント

アベノミクスによる不動産価格の上昇とマーケットが縮小する産業での人員整理を同列で考えるのは意味が無いと思うのですが・・・

結果的にアベノミクスが切っ掛けとなった点はあるでしょうが、民主党政権時代が仮に続いていたとしてもおそらく代ゼミは人員整理を行ったと思います。

どの産業でも衰退すれば人は要らなくなるだけで、程度の差こそをあれどんな職業でも転職を考えざる得ないときはあるだけの話だと思います。

苦境ではなく戦略的に新しいビジネスに移行するのではないでしょうか。数十年前から少子化をリスクファクターとして認識し、予備校撤退時のための戦略があったように思います。駅前一等地にホテルや商業ビルに直ぐに転用可能な不動産を収得していたのでは。そして、今がその時と。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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