「負け癖」のついた日本経済 ~ アベノミクス下での「1勝18敗」

(2014年8月30日)
「景気の回復に足踏み感が出てきた。4月に消費税を上げた直後の大きな落ち込みから持ち直してきたところで、台風や大雨などの天候不順が消費を冷やしている。7月の鉱工業生産は2カ月ぶりに増えたものの、勢いを欠く。雇用は安定し、消費者心理も好転しているが、増税後の物価高も向かい風となる。景気は回復基調に戻るための正念場を迎えている」(30日付日本経済新聞 「景気回復に足踏み感」)

日本経済新聞を始め消費増税肯定派は、前回の1997年の消費増税を契機に日本経済がデフレに突入したのは、消費増税の影響ではなく「アジア通貨危機」と「国内金融システム不安」という特殊要因があったからで、今回とは状況が違うと散々繰り返し主張して来ました。しかし、今回は「アジア通貨危機」も「国内金融システム不安」など外部環境の悪化が起きているわけでもないのに、「台風や大雨などの天候不順」の影響などで消費増税後の景気回復は彼らの思うようには進んでいないようです。

そもそも、「100年に1度」と言われるようなことが数年おきに起きて来たなかで、内外の環境が日本経済にいい方向に作用することを前提にした見通しを主張し続けるところが「平和ボケ」している証拠です。

以前も拙Blogで指摘しましたが、「アジア通貨危機」や「金融システム不安」といった特殊要因はないことを消費増税による悪影響が出ないという根拠にすることが、おかしな理屈です。特殊要因は「アジア通貨危機」や「金融システム不安」だけではありませんから、特殊要因が起こり得ないことを示すか、特殊要因が起きても大丈夫なくらい日本経済が強いことを根拠として示さなければ何の説得力もありません。

「大企業を中心に聞く生産予測は8月が前月比1.3%増、9月は3.5%増の見通し。実現すれば回復に戻っていくが、増税後の実績は予測を大きく下回り続けている」(同日本経済新聞)

「夏から景気回復する」と繰り返して来た見通しが狂った日本経済新聞は、「増税後の実績は予測を大きく下回り続けている」鉱工業生産予測が8月、9月と上向くことに期待を寄せているようです。珍しく「増税後の実績は予測を大きく下回り続けている」としおらしい表現を使っていますが、実績が予測を大きく下回り続けているのは、「増税後」に限ったことではありません。

鉱工業生産予測vs実績

アベノミクスがスタートした昨年1月から7月までの19カ月の鉱工業生産指数の予測値と実績は「1勝18敗」、単純平均して実績は予測値を▲1.7%下回っており、実績が予測を上回ることが「特殊」といえる状況にあります。事業計画で将来予測を現状から下げて行くというのは一般的ではありませんから、予測値が現状より少し高めに設定されるのは当然のことで、予測値というよりも目標値という意味合いが強いものです。

問題は、アベノミクスがスタートしてから19カ月間、「天候不順」が続いていたわけでもなく、円安、株高という追い風があったにも関らず、1回しか実績が目標値を上回ったことが無いことです。「1勝18敗」という惨憺たる結果は、目標が現実離れした高いところに設定されたことが原因だったのか、それとも実際の経済が想定以上に弱かったのか、を検証する必要があるように思います。

「天候不順」という特殊要因があったから「景気回復に足踏み感」が出て来ているのではなく、アベノミクスに対する期待が高いなかでも、鉱工業生産指数が「1勝18敗」となり「負け癖」が付いて来ていることにもっと注意を払う必要があるように思えてなりません。

気になるところは、在庫指数の上昇を反映した形で、増税後予測値が控えめになって来ていることです。「7月の鉱工業生産指数は前月比0.2%上がり、2カ月ぶりの増産」(同日本経済新聞)、「出荷指数」も前月比0.7%上がりましたが、「在庫指数」は「生産」「出荷」を上回る前月比0.8%の上昇となっています。

「天候は西日本を中心に8月も悪かっただけに、景気は回復の持続力を試されている」(同日本経済新聞)

この記事は、こうした一文で締め括られています。笑ってしまうのは、「景気の回復」を示すものがほとんど見当たらない中で「景気は回復の持続力」に注目しているところです。世間が注目しているは、「景気の回復」を示す材料がほとんどない中で、日本経済新聞が何時まで景気回復期待を煽り続けるのか、その厚かましさの「持続力」だということに、そろそろ気付くべきではないかと思います。

今後「景気回復に足踏み感」が続いても、消費増税肯定派である有識者達は「台風や大雨などの天候不順」という特殊要因に見舞われたことが要因であって、消費増税の悪影響は限定的という判断の下で、消費税10%をへの引上げの正当性を主張するとともに、こうした「誤った歴史認識」を後世に伝えるのでしょうか。

日本経済低迷という、「後世にツケを残す」ようなことだけは避けて頂きたいものです。

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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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