「実行実現内閣」が目指す「国民の負託」から乖離した社会

(2014年9月4日)
「安倍内閣は、新たな陣容の下、フレッシュな気持ちで更にパワーアップしながら、内外の政策課題に全力で取り組んでまいります。日本の将来をしっかりと見据えながら、ひたすらに有言実行、政策実現に邁進してまいります。正に実行実現内閣として、引き続き国民の負託に応えていく覚悟であります」(首相官邸「平成成26年9月3日 安倍内閣総理大臣記者会見」)

内閣改造を行った3日夜、安倍総理は記者会見でこのように述べ、新しい改造内閣を「実行実現内閣」と命名しました。

「『実行実現内閣』を標榜し、実施段階に入った成長戦略への取り組みを強化する」(4日付日本経済新聞「重要課題 対処継続を強調」)

4日付日本経済新聞は、「実行実現内閣」が取り組む政策課題について「年末に向けて政策課題は山積みだ」というタイトルで主要政策課題の一覧と日程を示しています。そして、取り組む政策課題として「消費増税」「法人実効税率引き下げ」「TPP」「原発再稼働」「社会保障費の抑制」というマスコミが関心を抱いている5項目を挙げています。

しかし、これらの政策課題が「実行実現内閣」によって実現された時の日本社会の姿は、「消費税が10%に引き上げ」られ、「雇用や給与増加に直接関係のない法人実効税率が引き下げによって役員賞与の原資が増え」、「TPPによって安全性が日本より劣るかもしれない安い製品が海外から流入」し、「原発の再稼働で核のゴミ問題は将来世代に先送り」され、「高齢化に向かう中で年金支給を抑えられる」ということになりかねません。こうした日本社会の姿が、多くの国民が安倍改造内閣に負託した「成長した日本の姿」なのでしょうか。永田町や霞が関、そして財界にとっての「都合の良い日本の姿」と、国民が政府に負託している「成長した日本の姿」の間に乖離があるような気がしてなりません。

「消費税10%への引上げについては、これまでも申し上げてきたとおり、7月、8月、9月の経済の回復を含めて、経済状況等を総合的に勘案した上で年内に判断をいたします。今後とも冷静に分析を行いながら、しっかりと対応していく考えでありまして、・・・」(同安倍内閣総理大臣記者会見)

安倍総理は記者会見で消費税10%への引上げについては「今後とも冷静に分析を行う」意向であることを表明しました。

「政府は第2次安倍改造内閣が発足して初めての経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を16日にも開き、景気動向を集中点検する。7~8月の景気指標に弱めの動きが続いているため、10月に予定していた点検を前倒しする」(4日付日本経済新聞 「増税後の景気集中点検」)

総理の意向を反映する形で、日本経済新聞では経済財政諮問会議が予定より1ヶ月前倒しで開かれ「景気動向を集中点検」することになったことが報じられています。しかし、恐ろしいことに、「集中点検で民間議員は景気の回復基調が続いているとの認識を表明する。賃金は上昇傾向にあり、設備投資や輸出の回復も期待出来るとの判断を示す」(同日本経済新聞)とされています。

つまり、民間議員達は、総理のいう「冷静に分析を行う」ためではなく、「景気の回復基調が続いているとの認識を表明する」という「結論ありきの議論」をするために経済諮問会議に参加するということです。「結論ありきの議論」をするために経済財政諮問会議を予定より1ヶ月前倒しで開催するというのは、景気動向を「冷静に分析」するためでも「集中点検」するためでもなく、「冷静に分析」すれば発表される経済指標が景気減速を示すなかで、予定より1ヶ月長い時間をかけて国民に対して「景気回復基調が続いている」という尤もらしいフィクションをでっち上げるために英知を結集するということに他なりません。

「そして今、有効求人倍率はバブル崩壊以来、22年ぶりの高い水準となっています。また、今年の春、多くの企業で給料アップが実現し、連合の調査によれば、賃金の伸び率は過去15年間で最高となりました」(同安倍総理記者会見)

安倍総理は記者会見で、賃金上昇を安倍内閣の成果としてあげました。また、日本経済新聞も「賃金は上昇傾向にあり、設備投資や輸出の回復も期待出来る」と、「賃金は上昇傾向にある」と報じています。しかし、それはあくまで「名目」ベースの話しで、「物価変動分を考慮した実質ベースの水準で見ると、現金給与総額は前年同月比1.4%減とマイナスが続く」(2日付日本経済新聞夕刊 「現金給与総額2.6%増」)という状況にあります。

名目賃金が上昇した場合には「貨幣錯覚」という現象が起き、名目の消費には上昇圧力が掛かると言われています。しかし、消費増税以降の個人消費は想定以上の弱さを示しています。これは、国民全体としての購買力が「貨幣錯覚」では埋め合わせることが出来ないほど落ちて来ていることを示すもので、安倍総理が経済通ならば、恥ずかしくてとても政権の成果として訴えることが出来ないものです。

安倍総理が成果として強調する雇用や賃金は、実際には国民が負託したものからはかけ離れた状況にありますし、「景気の回復基調が続いている」という主張の根拠になっている設備投資も、計画のお話しで実績として現れて来ているものではありません。実績を伴わない計画を根拠に「景気の回復基調が続いている」というのは詭弁でしかありません。

【参考記事】 「景気は夏場以降回復」シナリオにとどめを刺す7~9月売上高「下振れ」~ ならば「景気は年末に向けて回復」 

「増税を先送りすれば、日銀が国債を買い入れて財政赤字を穴埋めする『マネタイゼーション』に陥ったとみられ金利急騰などのリスクがある」(4日付日本経済新聞)

安倍政権の熱烈なサポーターの1人であるエコノミストは、日本経済新聞にこのようなコメントを寄せています。しかし、「誰が売ることによって金利が上昇するのか」という「主語」を明確にしない「金利急騰リスク」というのは、教科書上の債券市場しか知らない素人のフィクションに過ぎません。

4日付日本経済新聞の13面には、財務省による「個人向け国債 本日、募集開始」という広告が掲載されています。そこには、「安全」「手軽」「選べる」ということが謳われており、「いざというときも安心」というキャッチコピーも添えられています。

もし、安倍政権の熱烈なサポーターの1人であるエコノミストが指摘するように、消費増税が先送りされた場合に「金利急騰リスク」があるのだとしたら、財務省がこうした広告を掲載するでしょうか。本当にそのようなリスクがあるのであれば、金融商品販売法に照らして、金融庁から「消費増税が先送りされた場合には金利が急騰するリスクがあります」というディスクレマーを付けるよう指導があるのが当然なのではないでしょうか。個人向け国債の購入を検討される方には、財務省に「消費増税が先送りされた場合には金利急騰リスクがあるのか」と問い合わせをすることをお勧めします。

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