「生産、所得、消費の前向きな循環メカニズム」がフィクションに過ぎないことを露呈したGDP改定値

(2014年9月8日)
「内閣府は8日、4~6月期の実質国内総生産(GDP)成長率を前期比年率6.8%減から7.1%減へ下方修正した。8月に速報値を発表した後に、運輸や金融業を中心に設備投資のマイナスが想定よりも大きかったことが分かったためだという。年率15.0%減だったリーマン・ショック後の2009年1~3月期以来の落ち込みになった」(8日付日経電子版「4~6月期の実質GDP、年率7.1%減に下方修正」)

4~6月期の実質GDPが、速報値の6.8%減から7.1%減へと下方修正されました。実質GDPが下方修正される可能性が高いこと自体は、財務省が1日に発表した法人企業統計で国内設備投資が前年同月比3.0%増と1~3月期の同7.4%増から大きく低下したことで想像されていたことでしたから、問題はその中身です。そして、その中身は速報値から「0.3%の下方修正」という言葉の響き以上に厳しい内容でした。

「設備投資は前期比5.1%減で速報値から2.6ポイント下がった」(同日経電子版)

このように率で言われると今一つ深刻さが伝わってこないと思いますが、実額で示すとその甚大さに驚かされます。「民間設備投資」の速報値からの下方修正幅は2兆358億円となっています。実質GDP全体の下方修正幅が5,511億円ですから、「民間設備投資」の下方修正幅はその4倍近いものです。

GDP下方修正

「『1~3月期にパソコンの買い替えが増えた反動が出た可能性がある』(内閣府)という」(同日経電子版)

この記事ではこうした尤もらしい解説が加えられています。確かにWindows XPのサポート終了に伴う特殊要因があったことは事実だと思いますが、2013年の国内パソコン出荷金額は1兆499億円(MM総研)ですから、この特殊要因で、国内PC出荷金額の2年分に相当する規模で「民間設備投資」が下方修正されたことを説明することには無理があります。「民間設備投資」下方修正の主要因は、Windows XPのサポート終了に伴う特殊要因以外にあると考えるのが常識です。

「民間設備投資」が2兆358億円も下方修正されるなかで、実質GDPの下方修正幅が5,511億円にとどまったのは、「民間在庫品増加」が1兆9950億円あり、「民間設備投資」の下方修正幅のほとんどを消したからです。

「民間設備投資」が2兆円超、「家計最終消費支出」が約2,400億円下方修正される中での在庫の増加は、それが「意図せざる在庫」であることを示唆するものです。したがって、4~6月期に増加した2兆円近く、実質GDP全体の0.4%程度、「家計最終消費支出」の約0.67%に相当する「民間在庫品増加」は、この先の「生産」「出荷」の抑制要因となる可能性が高いものです。

「民間在庫品増加」が2兆円近くあった中で、4~6月期の実質GDPが下方修正されたということは、「民間設備投資」を含めた民需が予想以上に弱いことを証明することです。

菅官房長官は、「景気は緩やかな回復基調が続いていると認識しており、これまで月例経済報告で示してきた景気認識に変わりはない」との見解を示しています。しかし、今回のGDP改定値が白日の下に晒したものは、政府、日銀、そして彼らの子飼いのエコノミスト達が繰り返している「好調な企業収益を背景に設備投資が増えることで、所得が増加し、消費も増える」という「生産、所得、消費の前向きな循環メカニズム」という「官製シナリオ」がフィクションに過ぎなかったということです。

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近藤駿介

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