「ハイブリッド型企業年金制度」登場 ~ そして国民以外に損失負担をする主体はいなくなった

「厚生労働省は11日、企業年金部会を開き、労使が運用リスクを分かち合う新しい企業年金制度の案を示した。企業が一定の給付額を約束する確定給付年金と、社員自らが運用する確定拠出年金の中間型だ。中小企業向けの簡素な年金制度もつくる。公的年金の給付を抑えるなか、企業年金の加入者を増やし老後の生活資金を確保してもらう」(12日付日本経済新聞「運用リスク、労使で分担」)

またまた国民の目をくらまそうとするかのような制度が出来るようです。

企業年金部会が提案したのは、確定給付型と確定拠出型の「2つの企業年金の特徴を合わせたハイブリッド型の制度」。こうした提案が出されたのは、現行制度は「確定給付型の企業年金は企業が運用損失を穴埋めするため、市場の動きで業績が大きく左右される。確定拠出型は損失の分だけ社員への給付額が減るため、運用を大きく誤ると老後の生活設計が狂う」(同日本経済新聞)という「原則として労使のどちらかに負担が偏る」仕組になっているからです。

株式市場や為替市場などの変動に伴い年金運用に損失が発生した場合、現在の確定給付型企業年金の場合は企業が不足分を埋め合せなくてはなりませんから、年金資産の運用に伴う損失は企業の業績を押し下げる要因となっています。

今回提案されたハイブリッド型は、これまで企業或いは加入者のどちらかが損失を全額負担することになっていた制度を、労使で半分ずつ負担しようというもので、一見公平ですから、こうした提案が出てくることは至極尤もなことです。しかし、そんなに美しい話しではないように思えてなりません。

ひねくれた見方かもしれませんが、年金運用に伴う損失を企業と加入者と折半することになれば、企業の損失負担はこれまでの半分で済むことになり、それだけ企業収益へのダメージは少なくなります。少なくなるといえども、年金運用で損失が生じた場合企業は損失を補填しなければなりませんから、利益は圧縮されます。しかし、法人税減税を実施して税金を少なくしてやれば、株主や役員賞与、配当金の原資になる税引き後利益に対する影響を一段と少なくすることが出来る可能性があります。

経団連が政治献金を再開し、法人実効税率の引き下げがほぼ確定している中でのハイブリッド型企業年金制度の登場は、一つのセットになっているような気がしてなりません。

それはともかく、重要な点は「年金運用に伴う損失は、誰かが負担しなくてはならない」ということです。

これは公的年金でも同じです。公的年金運用に伴う損失を負担するのは、国と国民です。しかし、国の資金は税金ですから、公的年金運用の損失を負担しているのは実質的に全て国民だということになります。

公的年金は制度としては「確定給付型年金」になりますが、年金運用に伴う損失を様々な形で実質全て国民が負担しているという点では「確定拠出型年金」と同じになっています。

確定給付型企業年金は、損失が発生した場合に企業が負担をしなければならず企業収益を押し下げますから、株式の組入れ比率は低下傾向を辿っています。企業年金連合会の調査によると、2012年度の厚生年金基金と確定給付型企業年金の国内株式への配分は15.8%と、公的年金を運用するGPIFの17.26%(2014年6月末)を下回って来ています。

公的年金の運用に関しては、「GPIF改革」という名のもとに、国内株式への配分を20%以上に高めることが既定路線となっています。こうした運用リスクを上げることによって、年金運用で損失が発生した場合の損失額は拡大することになります。

公的年金は「確定給付型」という仮面をかぶっていますが、損失負担という点では「確定拠出型」ですから、運用に伴う損失は、給付金の引下げ、給付年齢の引上げ、保険料の引上げ、はたまた増税といった形で全て国民に負担が回ってくることになります。

「政府は高齢者の増加で公的年金の財政が悪化しているため、2015年度から基礎年金や厚生年金の給付額を抑える方針だ。公的年金が目減りするぶん、企業年金の普及を促して、豊かな老後を送れるようにする考えだ」(同日本経済新聞)

日本経済新聞はこのように報じていますが、株価の下落や円高に見舞われた場合、企業はハイブリット型という新しい制度と法人税減税で損失負担額をこれまでより少なくすることが出来ますが、国民はGPIFがリスク資産を増やすことで公的年金に伴う損失負担は増え、企業年金においても損失の半分を負担するようになり、負担はこれまでより増える方向になります。

ハイブリット型年金制度の登場によって国民が「豊かな老後を送れる」ことになるという根拠はどこにあるのでしょうか。

国民が「豊かな老後を送れる」ようにするためにまずやらなければならないことは、「確定給付型年金」という仮面を被った、リスクという面では実質「確定拠出型年金」になっている公的年金の運用を、「GPIF改革」など「改革」という仮面を被せることで国民に正しい説明をせずにリスク資産を増やすという暴挙を止めることだと思えてなりません。

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Re: タイトルなし

木村様 ご指摘ありがとうございます。修正させて頂きました。
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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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