経済のパイが増えることは勤労者にとってプラス?~浜田教授殿、 「マクロ経済的観点」からその証拠は見つかりません

(2014年9月15日)
「安倍晋三首相は『7~9月期の(経済)指標を見て、マクロ経済的観点から分析していただきたい』と述べ、増税判断に当たっては専門家の意見を聞きながら慎重に判断するとの認識を示した」(15日付日本経済新聞「7~9月期の指標を見る」)

こうした「専門家の意見を聞きながら」というのが曲者です。政府近傍に生息する「専門家」は、経済指標に基づいてマクロ経済を客観的な分析をする「専門家」ではなく、政府に都合のいいフィクションを作り上げる「専門家」がほとんどになっていますから。

「『大幅な法人減税と一体なら、景気が良い限り許容されるだろう』と述べた」(15日付日本経済新聞「消費増税『法人減税と一体』」)

安倍内閣を取り巻く「専門家」の中心的人物である浜田エール大学教授が、日本経済新聞のインタビューに対して「GDPの回復」という条件を付けながらも、「昨年に比べ私は消費増税に反対していない」と発言したことが報じられています。

個人的に気に懸かるのは「経済のパイが増えることは勤労者にとってもプラスだ」(同日本経済新聞)と言う部分です。浜田教授の発言は、法人減税によって「経済のパイが増える」という前提に、「勤労者にとってもプラスだ」としています。しかし、この指摘は客観的な「マクロ経済的観点から分析」で得られる結論とはいえません。

日本の実質GDPは、1994年1-3月期を100とすると、2014年4-6月期は117.5となっており、17.5%「経済のパイ」は増えて来ています。しかし、「雇用者報酬(賃金・俸給)」のGDPに占める比率は、55%前後から直近では50%を割り込むところまで低下し、国民所得の構成比においても、90年代半ばの63%台から58%台まで、5%程度低下して来ています。

GDP雇用者報酬

つまり、「マクロ経済的観点から分析」する限り、「経済のパイ」の増加は必ずしも「勤労者にとってもプラス」とは言えないという結論になるのです。

国民所得が企業に厚く配分され、「雇用者報酬」の比率が低下傾向にある中、実質GDPの約57%を占める「家計最終消費支出」の「雇用者報酬」に対する比率は、97年の消費増税前後まで100~105%でしたが、直近では115%程度まで上昇して来ています。これに対して「民間企業設備」のGDPに対する構成比は、この20年間ほぼ13%台で一定となっています。

「マクロ経済的観点」からの客観的分析から導かれる唯一の結論は、この20年間は「経済のパイが増えることは企業にとってプラスだった」ということではないかと思います。

法人税減税が「経済のパイ」の拡大に繋がるかも定かではありませんし、仮に法人税減税によって「経済のパイ」が増えたとしても「雇用者報酬」」が増える保証がないことは「マクロ経済的観点からの分析」によって明らかです。根拠が見当たらないなかで、「法人税減税によって経済のパイが増えれば、勤労者にとってプラスだ」という理由で法人税減税と一緒に消費増税を実施すれば景気に影響はないという考え方は「専門家」の意見として如何なものでしょうか。

国民の多くが、「雇用者報酬」が減る中で消費を維持、増やしたことで拡大した「経済のパイ」から企業が恩恵を受けて来た事実がある中で、「専門家」はどのような論理で「経済のパイが増えることは勤労者にとってプラスだ」という物語を作り上げるのでしょうか。

「増税判断に当たっては専門家の意見を聞きながら慎重に判断する」としている安倍総理には、「専門家の意見」を聞いて「慎重に判断する」前に、「専門家の意見」が「マクロ経済的観点」に裏付けされた意見なのかを「慎重に判断」して頂きたいものです。

スポンサーサイト

コメント

いつも勉強になる記事をありがとうございます。

私も含めて有権者は、分析するべきところを正しく把握し、根拠を確かめて声を上げていくことがが大切ですね。

Re: タイトルなし

木村様、何時も拙Blogを見て頂きありがとうございます。結論は人それぞれですが、客観的事実は皆で共用するべきですよね。情報操作はやってはいけないというのが、先人からの教えであるように思います。
非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR