消費増税推進派の詭弁 ~「上げたときのリスク」と「上げなかったときのリスク」

(2014年9月28日)
「自民党の谷垣幹事長は、消費税率を来年10月に予定どおり10%に引き上げるかどうかについて、『社会保障や子育ての財源は先送りできないうえ、その年の税収で政策経費を賄う体質を早く作らなければならない。消費税率を上げたときのリスクは手の打ちようがあるが、上げなかったときのリスクは非常に不安がある。今後、税率を上げることができるような対策を打つことが必要で、今年度の補正予算案の編成も検討していかなければならない局面が来るかもしれない』と述べました」(28日 NHK NEWS WEB「消費税率引き上げ巡り与野党が議論」)

谷垣幹事長がこうした「上げなかったときのリスク」という言葉を繰り返し使うということは、4月の消費増税による想定以上の景気下振れによって「上げたときのリスク」が周知の事実となり認めざるを得なくなったことの裏返しでもあります。消費増税による悪影響が想定以上であったことを認めることは、政策的な失敗を認めることで責任問題になりかねませんから、議論が本来やるべき「消費増税を決断したときに想定したリスク」と「消費増税後の現実のリスク」の検証に向かわないように、「上げたときのリスク」と「上げなかったときのリスク」という議論を持ち出したのだと思われます。

消費税率は実際に引上げられましたから、「上げなかったときのリスク」の議論は全てが「想像の議論」になります。「上げたときのリスク」が政府の事前の想定よりも大きかったとしても、「上げなかったときのリスク」はもっと大きかったと「想像の議論」、「結論の出ない議論」に持ち込めれば政策論争を避けられるという姑息な作戦に思えてなりません。

番組を全て見たわけではありませんが、野党側も与党側の「結論の出ない議論」に付き合い、政党、政治家として当然やるべき「消費増税を決断したときに想定したリスク」と「消費増税後の現実のリスク」の検証について何の追及もしませんでした。

一般企業であれば、予算と実績を比較してその達成率と達成状況を検討し、目標との乖離原因を明らかにし、新たに目標達成するための対策を取り、目標達成を管理していく「予実管理」は当然のことです。しかし、残念ながら、政治の世界にはこうした一般常識は通用しないようです。こうした一般社会と政治の政界との「常識の差」が、政治が国民から信頼を得られない大きな要因になっているように思えてなりません。

恐ろしいことは、消費増税推進派が未だに「消費税率を上げたときのリスクは手の打ちようがある」という考えを持っていることです。確かに、GDPの統計上は、消費増税によって個人消費を中心とした民間消費支出が減少しても、補正予算などで公共事業や政府支出という「真水」を増やせば埋め合わせることは出来ますから「手の打ちようがある」と言えるかもしれません。

しかし、「真水」の財源は税金と国債発行ですから、GDP統計上経済の落ち込みを財政支出で埋め合せることが出来るということと、財政再建が出来るということは相反することです。消費増税をする目的は、この先増え続ける社会保障費を確保すると同時に、財政再建を進めて行くことですから、財政支出を増やして消費増税による景気の落ち込みを穴埋めすることには何の意味もないどころか、やってはならないことでしかありません。

さらに、公共工事の「未消化工事高」が7月時点で16兆7333億円と、実質GDPベースで23兆2689億円の「公的固定資本形成」公共投資)」の約72%に達している中で、「今年度の補正予算案の編成」が「手の打ちようがある」対策であると平然と言い切れるその神経には唖然とさせられるばかりです。

安倍総理が認めざるを得ないほど円安によるマイナスの影響が顕著になり、日銀による追加緩和の限界は見えて来ています。さらに、「未消化工事高」という「公共工事の在庫」がGDPの72%にまで膨れ上がって来たことを考えると、常識的には政府、日銀には消費増税に伴う景気の下振れを埋め合せるために「手の打ちよう」がなくなりつつあると言えます。

財政を使って消費増税によるGDPの落ち込みを埋め合せてお化粧することも本末転倒ですし、「手の打ちよう」が乏しくなる経済状況の中で、何時までも「消費税率を上げたときのリスクは手の打ちようがある」と根拠の乏しい主張を繰り返し消費増税に突き進むというのは、無責任な政治でしかありません。

谷垣幹事長の発言の中で問題なのは、「上げなかったときのリスク」を具体的に示していないことです。

おそらく、でっち上げ国際公約である消費増税を実施しなかった場合、世界から財政再建に消極的と見做され、長期金利が上昇してしまうことを指しているのだろうと思われます。

こうした、消費増税推進派の十八番である「消費増税を行わないと外国人投資家から日本国債が売りを浴びて長期金利が急上昇する」という尤もらしい話しは、消費増税キャンペーンのために消費増税推進派が作り上げたフィクションに過ぎません。

外国人投資家が保有している日本の長期国債は、この6月末時点で35.2兆円(その他短期債51.3兆円を加えて国債保有額合計は86.5兆円)に過ぎません。この規模は「長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」ことを明言している日銀にとっては、買入れ予定額の9か月分程度ですから、外国人投資家による長期国債の売却は日銀にとって十分に「手の打ちよう」のあるリスクでしかありません。

こうして考えると、谷垣幹事長ら消費増税推進派が口にする「消費税率を上げたときのリスクは手の打ちようがあるが、上げなかったときのリスクは非常に不安がある」というのは、現実とは正反対のフィクションだと言えます。

財政再建が至上命題である中では、景気が低迷すること自体が「手の打ちようのないリスク」になりますから、まず景気低迷を招くこと政策を避けなければなりません。こうした状況にある中で、わざわざ景気を冷やす消費増税を実施し、その穴埋めのために財政支出を実施するというのは、政策的自殺行為です。

「近藤駿介Official Site」の「政策提言」に記しましたが、「社会保障や子育ての財源は先送りできないうえ、その年の税収で政策経費を賄う体質を早く作る」ために、消費税以外の「手の打ちよう」はまだ残されているなかで、消費増税というのはとってはいけない選択肢です。

「法律で決められていることをきちんと実施できるように色々な手を打つ」(日経電子版)

谷垣自民党幹事長は弁護士で前法務大臣らしく、法律に忠実に消費増税を実施して行くべきだという主張をされています。しかし、憲法解釈変更を閣議決定で行ったなかで、法律を守らなければならないなどという主張は笑い話にもなりません。

どんなに尤もらしい言葉を並べても、中身は全て論理的におかしなものばかりです。次の世代に「経済退国」という惨めな社会を引継がない為には、我々の世代が消費増税に関しては「ダメなものはダメ」という姿勢を貫く以外にありません。


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