世界一法人税率の高い米国で生まれた「経済の好循環」

(2014年10月4日)
「3日の米株式市場ではダウ工業株30種平均が5営業日ぶりに大幅反発し、前日比200ドル超上昇した。9月の雇用統計が市場予想を上回って改善し、米労働市場の着実な回復を好感した買いが幅広い銘柄で優勢となった。節目の1万7000ドルを終値で3営業日ぶりに回復した」(4日付日経電子版)

非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、失業率がリーマンショック後初めて6%を下回ったことで、NYダウは大幅上昇、3営業日ぶりに終値で17,000ドル台を回復しました。

「世界景気の減速懸念が広がるなか、米経済が安定成長を続けている。堅調な個人消費が労働市場の改善を促し、雇用増が消費増につながる好循環が生まれている。10月で量的金融緩和を終える米連邦準備理事会(FRB)は利上げ時期を巡る議論を本格化するが、低迷する欧州景気や中東情勢などがリスクになる」(4日付日本経済新聞 「米雇用、消費増と好循環」)

ここのところ顕著になって来ていることは、世界景気が減速傾向を強める中で、米国が世界経済の牽引役になっているということです。

昨年12月からFRBが量的緩和の規模縮小を続け「10月で量的緩和を終える」中で、「堅調な個人消費が労働市場の改善を促し、雇用増が消費増につながる好循環が生まれている」ように思える米国経済。経済指標が景気の好循環を示すなかでも、FRBはまだ「雇用の質」が十分でないとして景気動向に細心の注意を払っています。

これに対して、日本では消費増税と「異次元の金融緩和」に伴う円安の弊害が、各種の経済統計で顕著になるなかでも、政府、日銀が「経済の前向きの好循環が続いている」と念仏のように唱え続けており、日米の景気状況とそれに対する政策当局の対応は、真逆なものになっています。

ここで興味深いことは、法人税率が40.75%(カリフォルニア州)と世界で最も高い米国が、世界で最も景気が堅調で、20%台が多い欧州や、20%台を目指して法人実効税率引下げを目指している日本経済を支えているところです。

「東京都は3日、法人住民税などにかけている独自の上乗せ税率を今後も続ける考えを示した。政府内では地方自治体による独自の上乗せが法人実効税率を20%台に下げる障害になるとして、廃止を求める声が出ている」(4日付日本経済新聞 「法人純民税、上乗せ継続」)

法人実効税率を20%台に引き下げることを目標にしている日本では、東京都が設けている独自の上乗せ税率によって標準課税率より約1%高くなっている状況を、今後も維持して行くことを表明しました。

世界経済の牽引役となっている世界一法人税の高い米国と、標準税率よりも約1%高い税率を維持する東京都が低迷する日本経済の中でも相対的に堅調であるということは、法人実効税率と経済成長の間に直接的因果関係がないということを示唆するものだとも言えます。

法人税は課税所得に対して課せられるものですから、法人税率よりも売上を維持、拡大できる需要が存在することの方が優先順位が高いことは当然です。世界では世界一法人税率が高い米国が世界経済の牽引役となり、日本では上乗せ税率を設けている東京に「一極集中」が起きているということは、米国が世界で一番需要があり、東京が日本で一番需要があることを示した現象だと言えます。

法人税率の引下げは外国企業の日本進出を通して国内の需要を増やすという主張もありますから、法人税率の引下げと需要は鶏と卵の関係にあるという見方も出来ます。しかし、国内企業が投資を控えるほど需要の乏しい日本に、法人実効税率が下げられることを理由に日本進出を図る企業が出てくるという主張は説得力の低いものです。

企業投資をする際の事業計画で最も重要なのは、利益を確保する売上が上がるか否かという点です。法人税の多寡は投資利回りには影響を及ぼしますが、「投資リターンのプラスマイナス」には無関係です。

利益を出せる売上を確保出来ずに赤字になるのであれば、法人税率が幾らであっても「投資リターンがマイナス」という事実は変わりないからです。「利益を生まないところに投資なし」というのが原則ですから、まずは「投資リターンがプラス」になるような国内状況を作り上げることが政治の最重要課題になるはずです。

海外からの投資を呼び込むために国内の需要の維持、拡大が最重要課題だとしたら、国内の有効需要を奪う消費増税は最悪の選択肢ということになります。

「投資リターンがプラスになる可能性が高い法人税率40%台の米国」と、「投資リターンがプラスになる可能性が低いが法人税率が引き下げられる方向にある日本」。 世界の投資家がどちらに投資をしようと思うのか、政府から恩恵を受けることを狙っている大企業の経営者や有識者達に考えさせる前に、安倍総理自身で考えてみるべきです。安倍総理が常識さえ持ち合わせていれば、結論を出すのは容易なのですから。


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近藤駿介

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