「デフレからの脱却」を確実なものにするために必要不可欠な「有識者からの脱却」

(2014年10月5日)
「政府が昨年夏に8%への消費増税について意見を聞いた有識者の6割が、来年10月に予定する消費税率10%への引き上げに賛成であることが4日分かった。増税を見送った場合の市場混乱を懸念する声が多かった」(5日付日本経済新聞 「『予定通り再増税』 6割」)

総合スーパーの多くが消費増税と天候不順で大幅減益を記録する中、唯一過去最高益を記録したセブン&アイHDの村田社長から「(経済指標などの)足元の状況をみると、もう少し先に延ばされた方がよいのでは」(日本経済新聞)という発言が飛び出たり、衆議院予算委員会でアベノミクスに対する弊害に対する追及の声が上がって来たりしたことに対する焦りがあるからなのでしょうか、5日付日本経済新聞の一面には「『予定通り再増税』 6割」という、報道するに値するのか怪しげな記事が掲載されています。

記事の内容は、「日本経済新聞が有識者60人にアンケート調査を実施し、約7割の43人から回答を得た」結果を報じるものです。

「対象は政府が昨年8月に開いた消費増税を巡る集中点検会合に出席した有識者で、政府が11月に開く会合でも同じ有識者が再び出席する可能性がある」(同日本経済新聞)という、今回の消費増税による想定以上の景気落ち込みを招いた「A級戦犯43人」による回答のどこに報道価値を見出したのか、日本経済新聞の目利き力には感嘆するばかりです。

「来年10月の再増税実施には、回答者の60.5%にあたる26人が『賛成』と回答した」(同日本経済新聞)ということですが、「昨年夏の有識者会合では賛成が7割超だった」(同日本経済新聞)ことからすると、増税賛成勢力が減って来ていることは確かですから、このこと自体は喜ばしいことです。一方、これだけ経済指標上で消費増税の悪影響が確認される中で「賛成」と回答した26人の有識者というのは、予断を持って議論する「有識者」に相応しいか疑わしい人達だと言えそうです。

「本社加盟の日本世論調査会が九月二十七、二十八日に実施した全国面接世論調査で、来年十月に予定されている消費税率10%への再増税に反対する人が72%に上り、賛成の25%を大きく上回ったことが分かった」(5日付東京新聞 「消費税再増税反対72%」

一方、5日の東京新聞の朝刊3面には、日本世論調査会が実施した世論調査で、「消費税率10%への再増税に反対する人が72%に上り、賛成の25%を大きく上回った」ことが報じられています。この世論調査のサンプル数がどの程度かが示されていませんが、「日本経済新聞などによる9月の世論調査では、逆に6割超が反対していた」(同日本経済新聞)とありますから、世論と有識者達との意見が大きくかけ離れていることは確かなようです。

世論が常に正しいわけではありませんが、「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」(内閣府設置法)が消費税再増税に「賛成」であるということをことさら強調して報道するということは、「反対」と回答している購読者を「経済又は財政に関する政策について優れた識見を持たない者」だと見做しているように感じてなりません。

「経済又は財政に関する政策について優れた識見を持たない」一般人の社会では、PDCA(Plan-Do -See-Action) サイクルをまわして改善を重ねて行くのが常識です。しかし、このPDCAサイクルは「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」には適用されないようです。

消費増税による影響を大きく見誤った「有識者」達が、何のチェックも受けず、「政府が11月に開く会合でも同じ有識者が再び出席する可能性がある」(同日本経済新聞)というのでは、同じ間違いを何度も繰り返す可能性を高める愚策でしかありません。これで日本経済が成長軌道を取り戻せたら、それは後世まで「奇跡」と語り続けられることでしょう。

「賛成理由(複数回答)としては『社会保障の安定と充実のために必要』 が69.2%で最も多く、『財政再建を急ぐ必要がある』 と 『増税をやめると市場が不安定になるリスクがある』が各53.8%で続いた」(同日本経済新聞)

「増税をやめると市場が不安定になるリスクがある」というのは、消費増税推進派の「有識者」が消使う常套文句です。しかし、「有識者」というのは「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」であって、金融市場に対して「優れた識見を有する者」ではありません。金融市場に関する実務経験では「有識者」を上回っている立場の人間からすると、「有識者」の常套文句である「増税をやめると市場が不安定になるリスク」は根拠のないフィクションの可能性が高いと考えています。
 【参考記事】 消費増税推進派の詭弁 ~「上げたときのリスク」と「上げなかったときのリスク」    

消費増税を見送った場合、一体どのような投資主体がどのような行動を取ることで「市場が不安定になるリスク」が顕在化するのか、「有識者」なら具体的に示すべきです。「有識者」という肩書を使って根拠の乏しい話しを一般国民に擦り込んでいくやり方は、「優れた識見を有する者」がするべきものではありません。

消費税の再増税に「賛成」している「有識者」は、「消費税率10%に引き上げのために必要な経済対策」として「補正予算などの財政出動」を挙げています。しかし、これも「有識者」とは思えない主張です。

勝手に経済諮問会議」でもコメントしましたが、経済規模を維持するためには、国内支出(需要)を減らすわけにはいきません。経済規模を維持、拡大するために輸出を増やすという方法もありますが、輸出は自国でコントロール出来ませんから、国内需要を減らさないことが最重要政策になります。

経済規模を維持するために支出を維持するという点では、民間企業、個人、政府…、支出主体がどこであろうとも良いことになります。しかし、政府が抱える財政赤字を減らすという「制約条件」の中で経済規模を維持、拡大する必要があるということになると、政府が支出を減らし、民間(企業+個人)が政府支出の削減分を補って余りある支出をする必要があります。こうした中で、「消費増税+異次元の金融緩和による物価上昇」は民間の支出を抑制する政策ですから、とってはならない選択肢といえます。

消費増税を実施することによる景気へのマイナス影響を補正予算で埋め合わせるというのは、経済規模を維持するためには一つの選択肢ですが、政府の支出を減らして財政再建を果たすという「制約条件」を満たす政策ではありません。消費増税推進派が財政再建が「国際公約」だというのであれば、消費増税推進派の考え方は「国際公約違反」だということになります。

財政再建という「でっちあげ国際公約」を振りかざして消費増税推進を図る一方で、消費増税に伴う景気の悪化や再増税の環境を整えるために「補正予算などの財政出動」を主張し、平気で「国際公約」を破ろうとする「有識者」達の存在こそが、景気の波乱要因であるように思えてなりません。

「デフレからの脱却」を確実なものにするためには、まず「有識者からの脱却」を果す必要がありそうです。


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