長い期間で考えれば、国債よりも株の方が利回りが高い?~有識者の主張の先に明るい老後はない

「長い期間で考えれば、国債よりも株の方が利回りが高い」(22日付日本経済新聞 「日本株買い増しを」)

政府の有識者会議の座長としてGPIFの改革提言をまとめた伊藤隆敏政策研究大学院大教授は、日本記者クラブでの会見でこのように発言したと報じられています。

伊藤教授はGPIFの日本株の比率の目安を現在の12%から最大25%に高めることを訴えている有識者の座長ですから、こうした発言をすること自体には驚きはありません。しかし、学者が客観的な事実と根拠を示さずにこうした無責任な発言をすることには怒りを覚えます。

1984年末を基準に約30年間の日本株(日経平均株価)と国内債(日興債券パフォーマンスインデックス ;総合)のパフォーマンス(単純騰落率)を比較してみると、株式≒28.3%に対して、国内債≒226.5%と、その差は歴然となっています。

基準日を1989年末、1994年末、1999年末、2004年末、2009年末と、比較期間を短くしていくと、2004年末、2009年末を基準にしたケースでは日本株のパフォーマンスが国内債を上回るという結果になっています。

日本株vs債券

つまり、歴史的事実が示していることは、「長い期間で考えれば、国債よりも株の方が利回りが高い」というのは誤りであり、「長い期間で考えれば、株よりも国債の方が利回りが高かった」ということです。「国債よりも株の方が利回りが高い」というのは、この10年ほどの「短い期間で考えた」場合のことでしかありません。伊藤教授にとって、給付が掛け金を上回り資金流出超過になっているGPIFにとって、10年というのは「長い期間」だという認識なのかもしれません。

伊藤教授をはじめ有識者達は「運用のプロではない」ことは認めています。しかし、国民の大切な資産の運用に関して、何の根拠も示さずにこうした発言を平気でするということは、「有識者にも値しない」という誹りを受けても仕方がないように思います。

確かに、現在の新発10年国債利回りは0.5%を下回っており、日本国債を単純に保有するだけでは年金運用の期待利回りを確保することはできませんから、株式投資は必要かもしれません。

しかし、こうした状況下で資産配分を考える際にまず認識しなければならないことは、景気の低迷等の理由で株価の下落に見舞われた場合、国債の利回り低下(価格上昇)によるその損失を埋め合わせるのには限界があるということです。現状の資産配分でも、国債の利回り低下によってカバーできるのは、15%程度の株価下落でしかありません。

【参考記事】 無責任なGPIF日本株比率引上 ~ そして、日本株が10%下落したら公的年金制度は破綻する  

このような現状にあるなかで、日本株の比率を25%程度にまで高めるということは、国内株が下落した場合には現在の年金制度を放棄するという覚悟が必要だということです。今週末から始まる「金融講座」でもテーマに取り上げますが、国民の多くが年金制度や運用に関する知識が乏しいことを利用し、証券会社の株式部長の如く「長い期間で考えれば、国債よりも株の方が利回りが高い」というような根拠の乏しい話しでGPIFの資産構成を政権に都合の良いように変更しようとするのは、有識者としてとるべき行動とは思えません。

本当に国内株が順調に上昇する見込みがあるのであれば、公的年金制度は維持出来る可能性が高まりますから、個人が「将来の年金が不安だから自分で株式投資をする」必要はなくなるはずです。もし、本当に年金の資産配分を決定することの出来る能力を持った有識者であれば、国民に対して、国内株の上昇によって公的年金制度は維持される可能性が高まるので、個人レベルで無理に株式投資への配分を増やす必要はないことを国民に教えるはずのように思います。

伊藤教授の主張にしたがってGPIFの国内株式への配分を引上げたのちに、消費増税による景気悪化で国内株式が下落したら、年金制度は崩壊、国の財政再建も出来ないというダブルパンチに見舞われます。さらには、「貯蓄から投資へ」という意味不明のスローガンによって株式投資を始めた個人投資家は、年金制度崩壊によって年金は受け取れず、個人の資産も失うなかで、消費増税という負担も背負うというトリプルパンチに見舞われることになります。

「長い期間」で考えた場合、国内株がどうなるかは「神のみぞ知る」の世界ですが、株の見通しよりも遥かに確実なことは、有識者達の主張を真に受けたら明るい老後を迎えることは出来ないということです。

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コメント

30年なんて短いよ。100年安心の年金制度なんだから100は見ないと

https://www.credit-suisse.com/media/production/news-and-expertise/docs/global-investment-returns-yearbook-2014-jp.pdf
あくまで世界での話ですが。
クレディースイスのリサーチにあるように85年以降は確かに債券の急上昇があり、債券のリターンが良く見えます。
ただし、それ以外では圧倒的に株式のリターンのほうがよいです。
少なくとも85年以降をデータとした理由を示さないと、恣意的と見られても仕方がないのでは?
もちろん将来の株式も債券のリターンもわからないのですが。

個人的にはポートフォリオの株式比率を上げるのは否定の立場です。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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