オバマ民主党「歴史的敗北」 ~「質」に目を向ける米国と、「表面的数字」にこだわる日本の大きな差

「AP通信の出口調査で有権者が最も重視した政策は経済だった。08年秋の米国発の金融危機(リーマン・ショック)から6年を経て米経済は着実に復調してきた。一方で賃金の伸びは鈍く、低中所得層の大半は景気回復の実感を持てずにいる」(5日付日本経済新聞夕刊 「オバマ民主、敗北」)

オバマ大統領率いる民主党が、中間選挙で「歴史的敗北」を喫しました。敗北の原因は「オバマケア(医療保険改革法)や外交政策を巡る不信感に加え、根底では低賃金と所得格差拡大に憤る中間層の批判」(同日本経済新聞)だと報じられています。

「7~9月期に米実質国内総生産(GDP)が前期比で年率3.5%のプラスとなるなど、ここへきて安定感が増している。失業率はリーマン・ショック後の最悪期だった10%から5.9%まで下がり、雇用者数も危機前の水準に戻った。米景気回復を好感し、ニューヨーク株式市場も最高値圏で推移するなど、中間選挙は経済指標面では与党優位の条件がそろっていた」(同日本経済新聞)

「有権者が最も重視した政策は経済」で、その経済は「経済指標面では与党優位の条件がそろっていた」なかで、国民が「賃金の伸びは鈍く、低中所得層の大半は景気回復の実感を持てずにいる」という理由で民主党に「歴史的敗北」という厳しい審判を下すところに米国の底力、厳しさを感じずにはいられません。

米国は、FRBも国民も、「表面的な経済指標」の数字ではなく、「経済の質」を問うようになって来ているようです。ここが日本と米国の決定的な差であるように思えてなりません。

「低賃金と所得格差拡大」、「低中所得層の大半は景気回復の実感を持てずにいる」という米国と同じ状況にある日本では、消費税率10%への引上げの是非を巡って議論が活発になって来ています。しかし、政府、日銀、さらには国会での議論は「7~9月期のGDP成長率」「2%物価安定目標」がどうなるかという表面的なものに留まっており、なかなか「質」に関する議論には至っていません。

消費増税を予定通り実施するために、「5兆円規模の補正予算」や「商品券配布」といった財政負担を伴う手段で表面的なGDP成長率の数字を作り出すというのは、本末転倒の「質の低い議論」でしかありません。

政府が考えなくてはならないことは、経済の活動主体を政府など公的なものから、民間企業と個人にシフトさせることで、経済規模を維持、成長させていくことです。したがって、政府支出を増やして消費増税に伴う民需の減少分を埋め合わせるという政策は、現時点では全く無意味なものです。

また、「企業や家計のデフレ期待を払拭し、人々の気持ちの中に2%の物価上昇を根付かせるためには、それなりの速度と勢いが必要だ」(5日付日本経済新聞)という日銀総裁の「質の低い発言」にも驚きを禁じ得ません。

経済音痴の安部総理ですら、国会で「しばらくは(物価上昇の)後追いになって行く」と発言し、賃金上昇が物価上昇に追い付かないことを認めている中で、「それなりの速度と勢い」で物価上昇させるために「何でもやる」というのは中央銀行総裁としてはクレージーな発想でしかありません。こうしたクレージーな思想に凝り固まった日銀総裁が家計に植え付けているものは「インフレ期待」ではなく「インフレ恐怖」でしかありません。

賃金上昇が追い付かず、雇用が不安定刷る中で「インフレ恐怖」を植え付けることは、それ自体が「デフレ圧力」となるものです。実際に東大日次物価指数をみると、直近(11月3日)時点で、物価は0.7%下落し、売上指数も0.57%の下落となっており、4月の消費増税実施後穏やかに下落、或いは低位横這い状態にあります。

日銀が、金融政策で何時でも「インフレ期待」を起こせる自信があるのであれば、追加緩和は賃金上昇率が物価上昇率に追いつくまで待つというのが、経済運営にあたる人間に求められる「質」ではないかと思います。

「大きな資産効果を呼び、消費に結び付き、経済成長にプラスになる」(5日付日本経済新聞)

安倍総理は、4日の参院予算委員会で、株価の上昇についてこのように訴えました。しかし、個人金融資産に占める「株式・出資金」と「投資信託」の合計が45%強と、約14%に留まる日本の3倍になっている米国で、株価が史上最高値を更新する中で、「低賃金と所得格差拡大に憤る中間層の批判票が共和に流れた」(同日本経済新聞)ことで、与党民主党が中間選挙で「歴史的大敗」を喫するという事態が起きたということは、安倍総理が主張するGDPという無機質な経済指標にもたらす「資産効果」よりも、「低賃金と所得格差拡大に憤る中間層」の方が大きかったということです。安倍総理や日銀総裁は、こうしたことに気付いているのでしょうか。

「歴史的敗北」を喫したオバマ大統領は、「低賃金と所得格差拡大」、「低中所得層の大半は景気回復の実感を持てずにいる」という同じ問題を抱えながら、対抗馬となる野党がいないということでそこそこの支持率を維持し、国会で絶対安定多数を握って思い通りの国会運営を出来る安倍総理のことを羨ましく思っているに違いありません。

一方日本の問題は、安倍総理が「低賃金と所得格差拡大」、「低中所得層の大半は景気回復の実感を持てずにいる」という国民の不満が、選挙という結果に結び付く米国を羨ましく感じている有権者が沢山いることを察することが出来る「総理としての質」を備えているかということにあるようです。

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