早期解散論浮上~「負けない戦」に踏み切る安倍総理と、「国債暴落論」のメッキが剥される消費増税派

「安倍晋三首相が年内を含む早期の衆院解散・総選挙に踏み切るとの観測が政府・与党内で浮上している。2015年10月に予定する消費税率10%への引き上げを巡り、首相が増税延期を決断したり判断を先送りしたりすれば『国民に信を問わざるを得ない』との声があるためだ。17日に増税判断の材料となる7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が発表され、与野党で解散を巡るせめぎ合いが本格化する見通しだ」(11日付日本経済新聞 「早期解散論が浮上」))

「安倍バズーカ」炸裂といったところでしょうか。安倍総理が「負けることのない戦い」に踏み切る可能性が高くなって来たようです。

ポイントは「首相が増税延期を決断したり判断を先送りしたりすれば『国民に信を問わざるを得ない』」という下りです。要するに、安倍総理は「来年10月に予定されている消費税率10%への引上げを先送りすることの是非を問う」という「ワンイシュー(単一争点)選挙」に持ちこむことを狙っているということです。

「安倍総理大臣は、消費税の税率を、来年10月に10%に引き上げるかどうか、年内に判断するとしていますが、どのような判断をすべきか尋ねたところ、『予定通り、来年10月、10%に引き上げる』が20%、『引き上げの時期を遅らせる』が41%、『引き上げをとりやめる』が33%でした」(10日付NHK NEWS WEB「NHK世論調査 安倍内閣支持 44%」)

10日に発表されたNHKの世論調査でも、10%への消費増税に反対は74%に上っていますから、消費増税先送りを表明した後で「消費増税先送りの是非」を争点にした選挙に踏み切れば、負けることは考え難いところです。

自民党は現状衆議院で総議席数480の6割強に相当する295議席を持っています。安倍政権の支持率は50%を割り込むところまで下がって来ていますから、議席の上積みは難しいものの、「消費増税先送りの是非」を争点に選挙に踏み切れば、単独過半数の240議席を確保することは十分に可能だと安倍政権が考えても不思議ではありません。要は、単独過半数を目標に置けば、「負けることのない戦」といえます。

何しろ、3党合意で消費増税実施に賛成してしまっている民主党は、有権者の7割が反対している消費増税容認の立場を取らざるを得ませんし(民主党の支持母体の古賀連合会長は、有識者会合で明確に消費増税賛成を表明)、消費増税に消極的な野党の支持率も1%前後しかない状況ですから、安倍自民党にとっては敵がいないも同然です。

さらに、「消費増税先送りの是非」を争点とした解散総選挙の可能性を流すことは、株価対策にもなり得るものですから、安倍総理が外遊から帰国して「消費増税先送り」と「解散」を宣言するころには、盛り上がりがピークに達していても不思議ではありません。

4月に消費増税という誤った政治判断をした結果、想定外の景気悪化と支持率低下を招いてしまった安倍総理。追加金融緩和というカードを切ってしまった今、景気回復期待を繋ぎ止め、支持率回復に残されたカードは「消費増税先送り」しかないと言ってもいい状況です。安倍総理にとってこのカードを最大限に利用するための手段が「解散」ということです。

自民党内には麻生副総理を筆頭に根強い消費増税積極派もいますが、あくまで「消費増税先送り」であって「消費増税中止」ではありませんから、十分に言い含めることは可能です。総理が「消費増税先送り」を争点に解散・総選挙に打って出る際に、「消費増税先送り反対」という自分の首を絞めるような議員が出てくるはずはありません。もし、「消費増税先送りの是非」を争点に解散・総選挙が実施されるのであれば、マスコミには誰が「消費増税先送り」に反対していた「潜在抵抗勢力」だったのか、有権者に分かり易く伝えて貰いたいものです。

「一強他弱」という状況下での解散・総選挙は、安倍政権に対する「信任投票」に近いものがあります。この「信任投票」で勝利(単独過半数維持)出来れば、安倍総理はこれまでの失政は全て帳消しにすることが出来ます。厚かましい安倍総理は、失政を帳消しするのでは満足せず、消費増税という誤った判断によって国民生活に大きな打撃を与えた「悪役」から一転、消費増税を先送りし国民生活を守った「ヒーロー」に転じることを狙っているということは十分考えられるところです。

「消費増税先送り」という撒餌で「信任投票」という禊ぎを済ませてしまえば、原発再稼働も集団的自衛権の問題も全て信任されたと拡大解釈することは可能ですから、議席数を減らしても安倍総理にとってはバラ色の政権運営が待っているということになるかもしれません。

国民にとってせめてもの救いは、これまで消費増税派が念仏のように唱えて来た「消費増税を先送りすると財政再建という国際公約を果たせず、日本国債が売り浴びせられ、対応は困難になる」という「国債暴落論」の信憑性を確認できることかもしれません。

もし、安倍総理が「消費増税先送り」を争点に解散・総選挙に踏み切っても、「対応は困難」な国債の売りが出なかった場合、このような主張を繰り返して来た麻生財務相や黒田日銀総裁はどのように反応するのでしょうか。それでも「日銀が大量に国債を買上げているから低金利が保たれている」と主張し続けるのでしょうか。

実際に、早期解散論が浮上した11日の東京株式市場は343円高の17,124円となり、2007年10月18日以来7年1か月ぶりに終値で17,000円台を回復する一方、新発10年債利回りは0.48%と「消費増税先送り」期待の高まりにはほとんど反応していません。

消費増税積極派にとって想定外なのは、消費増税の必要性を訴える根拠となって来た「国債暴落論」がフィクションに過ぎないことが白日の下に晒されることかもしれません。そうなれば、消費増税積極派は、「国債暴落論」以外の脅し文句を編み出さなければならなくなります。いくら国民の「金融リテラシー」が低いと言っても、結果が出た後に同じセリフで騙し続けることは出来ませんから。

オバマ大統領は、先の中間選挙でこれまでの成果に対して厳しい評価を受け、「歴史的敗北」を喫しました。これまでの成果に基づいて厳しい審判を受けた米国に対して、「一強他弱」という状況下の日本では、これまでの失政が争点になるどころか、それを逆手に「消費増税先送りの是非」を争点とした解散・総選挙が行われ、失政をした政権が信任される可能性が高くなってきました。

日本経済の現状を考えれば、「消費増税先送り」は当然の判断ではありますが、これに賛成することは原発再稼働や集団的自衛権を始めとした民意が割れている問題に対しても、安倍政権に白紙委任状を渡すことでもあります。

「黒田バズーカ」による弊害で、安いものを手に入れる選択肢を奪われた国民は、「安倍バズーカ」によって選択肢のない選挙を強いられようとしています。

小泉郵政選挙以来続いている、こうした「ワンイシュー(単一争点)選挙」の弊害を防ぐためには、現状憲法改正以外に認められていない国民投票を可能にするくらいの「大胆な政治改革」が必要かもしれません。将来世代のためにも「選択肢のない日本」から一日も早く脱却しなくてはなりません。

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近藤駿介

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