「大義名分」の捻れ~客観的「大義名分」と、安倍総理の「大義名分」

「自民党内からも『大義名分のない選挙はよくない。国民の声を恐れることが大事だ』(野田毅税制調査会長)との声があがっている」(12日付日本経済新聞 「首相 『勝てる時期』 探る」)

「消費増税先送り解散」に慌てたのは、野党以上に自民党内の消費増税推進派だったのかもしれません。「大義名分」という今の政治家に似つかわしくない言葉を持ち出して、解散を牽制しているようです。

確かに消費増税先送り自体は、税制抜本改革法の附則第18条第1項と第3項に則って決断をすればいいだけですから、「消費増税先送り解散」に「大義名分」があるかは疑わしい限りです。しかし、解散は総理の専管事項であり、総理が自分にとって最も都合の良い時に都合よく使える権利ですから、解散に第三者的な「大義名分」を求めるのは余り現実的なことではないのも事実だと思います。

しかも相手は2003年8月に参議院本会議で郵政民営化関連法案が否決されたことで衆議院を解散して大勝した「郵政選挙」の時に自民党幹事長代理を務めていた安倍総理ですから、客観的な「大義名分」など通用するわけもありません。

安倍総理にとっての大義は、憲法改正が出来る、或いは道筋を付けられるまで政権を維持することであり、経済政策などはそのための「手段」に過ぎないと考えれば、「消費増税先送り解散」は安倍総理のなかでは十分に「大義名分」のある選択だということになるはずです。

「消費増税先送り解散」に関して「大義名分が分からない」と主張する自民党内の消費増税推進派のなかから「今回が(増税の)ラストチャンスだ」「(増税は)待ったなしだ」という発言も出て来ていることが報じられています。しかし、「その実施については、改めて名目及び実質経済成長率、物価動向等の経済指標を確認し、経済状況等を総合的に勘案して判断いたします」(官邸HP「社会保障・税一体改革ページ」)となっている消費増税について、「増税は法律で決まったこと」であるかのような消費増税推進派の主張も「消費増税先送り解散」と同じ位「大義名分」のないものでしかありません。

どちらの主張にも客観的な「大義名分」があるわけではありませんから、「総理の大義名分」が通るのも仕方のないことでしかありません。「憲法改正を実現出来る長期政権」という「大義」を達成するためには、消費増税先送りを餌にした株高や支持率上昇を利用した解散総選挙で勝利することが出来れば、失政によって景気悪化を招いた張本人という自らの立場清算できるだけでなく、自らを景気悪化の危機から日本経済を救ったヒーローに演出出来る可能性があるうえ、原発再稼働や集団的自衛権の問題などに関する白紙委任状を受取れる可能性があるわけですから、「総理の大義名分」として「消費増税先送り解散」は十分過ぎるものだと言えます。

何しろ対抗馬になるべく野党第1党が、国民の7割が反対している消費増税実施の旗を降ろせない上、幹事長が「政策の一致がなくても、自民党に代わる政権を作ることで一致していればいい」という有権者をバカにした選挙を提唱している状況ですから、いくら「安倍総理、おやりになるのならどうぞ解散してください。正面から受けて立ちます」と強がっても、とても勝ち目があるようには思えません。さらに、「消費増税先送り」を争点にすることでその他の消費増税に慎重な野党の主張は掻き消さすことが出来ますから、安倍総理が「選挙で負けるのは難しい」と考えても当然といえます。

郵政解散の際には、郵政民営化法案に反対した議員は大臣を罷免されたり自民党を離党したりしたうえ、選挙では刺客を送り込まれました。今回消費増税派法律で「決まったこと」「待ったなし」だとして「消費増税先送り解散」に「大義名分」が無いと主張している消費増税推進派の議員達は、抵抗勢力、造反議員というレッテルを貼られ離党するくらいの覚悟を持っているのでしょうか。

それとも、安倍第一次政権時代に、小泉郵政解散によって自民党離党を余儀なくされた「造反議員」達の復党を認めたことから、安倍総理が「造反議員」に対して寛容であることを見越して吠えているだけなのでしょうか。結局のところは消費増税推進派が「大義名分」がないと叫ぼうとも、「消費増税先送り」という「ワンイシュー(単一争点)選挙」に持ち込まれるのはほぼ確定したと言えそうです。

世論の力によって「消費増税先送り」を勝ち取ることに成功した有権者が今後しっかり見張っておかなければならないことは、安倍総理が「消費増税先送り解散」の条件として「再増税先送りには、12年の自公民3党合意に基づく税・社会保障一体改革関連法の改正が必要だ」(13日付毎日新聞)という消費増税推進派の主張を受け入れ、法改正の段階での景気条項(附則第18条第1項と第3項)を削除することを約束してしまうことかもしれません。
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