アベノミクス脱線 ~「インフレ期待」と「輸出型大企業優遇」では「経済の好循環」は実現できないことを示したGDP

「残念ながらいい数字ではない」と述べた。そのうえで「(2015年10月に)消費税率を(10%に)引き上げるべきかどうか、冷静に分析し判断したい」(17日付日経電子版)

公明党の結党50年記念式典で安倍総理は、7~9月期GDP速報値が実質で前期比年率1.6%減と2四半期連続のマイナス成長だったことについてこのように述べたうえで「長く続いたデフレから脱却できるチャンスをやっとつかんだ。このチャンスを手放すわけにはいかない」(同)と発言し、消費増税先送りの可能性を示唆するとともに、アベノミクスを継続する意向を示しました。

経済状況を考えれば消費増税先送りをすることは「冷静に分析」するまでもないことで、その判断自体は賢明なものです。しかし、「冷静に分析」しなければいけないことは、「消費税率を10%に引き上げるべきかどうか」ではなく、何故「2四半期連続のマイナス成長」になったのかということであることに思いが至らないところが安倍総理の限界でもあります。

安倍総理はアベノミクスによって「長く続いたデフレから脱却できるチャンスをやっとつかんだ」と思い込んでいるようですが、「冷静に分析し判断」すると、今回のGDP統計はそれが幻想であったことを示したという結論に達するはずです。

アベノミクスの本質は、金融政策による円安・株高をエンジンに、「景況感好転とインフレ期待の醸成」、「資産効果」、「輸出企業の業績回復による設備投資増、雇用増、所得増」を実現しようというものです。

しかし、今回のGDP速報値が突き付けたものは、所得に先行する物価上昇は「インフレ期待」ではなく「インフレ恐怖」を醸成することで個人消費を冷え込ませ、資産効果も輸出企業を中心とした企業業績の回復も設備投資や雇用、所得増を生み出すことは出来なかったということです。

安倍総理は「アベノミクスは道半ば」だと信じ込んでいるのかもしれませんが、GDP統計など経済指標を「冷静に分析」すると「アベノミクスは道を間違えている」という結論に至るように思います。そうだとしたら、「経済の好循環」というゴールに辿りつくためには、資産家と輸出企業に恩恵を与えることを優先し、彼らの前向きな行動によって「経済の好循環」が生まれるまで一般国民には「インフレ恐怖」を甘受して貰うという現在の経済政策から発想の転換が必要だということになります。

「アベノミクスの失敗」が見えて来たことで、与野党やGDP予想を外しまくっているエコノミストや有識者の間からは、経済対策を求める声が上がって来ています。しかし、「失政を経済対策で埋める」という不毛なことを繰り返している限り財政再建など夢物語に過ぎず、失政の穴埋めのために消費増税幅を大きくしなければならないという「財政の悪循環」に陥ることは避けられません。

本当に財政再建を成し遂げようとするのであれば、まず「財政支出の規模を維持する」という制約条件下で景気回復を図らなければならない状況にあるということを、国民も政治家も認識するべきです。そして、この制約条件のもとで、最も効果的な景気対策は何かという点で与野党、国民が知恵を出し合わなければなりません。

「財政支出の規模を維持する」うえで重要なことは、文字通り「財政支出の規模を維持する」ことです。実質GDPに占める「公的固定資本形成(公共投資)」の比率は4.6%、「政府最終消費支出」は19.6%と、政府の財政支出はGDPの約4分の1を占めています。ですから、民間が支出を増やす前に「身を切る改革」というような言葉と共に財政支出を減らしてしまうと、日本経済規模自体が縮小してしまい民間主導の経済に移行する機会が奪われかねません。

経済対策と称して失政の穴埋めに財政支出を利用することとも、「身を切る改革」という言葉に煽られて財政支出総額を減らさせることも、国民の首を絞める結果となることには留意が必要です。「身を切る改革」で浮いた財源は、他の形で支出をしなければ日本経済に打撃を与える要因になってしまいますから。

もう一つ大切なことは、毎年1兆円前後増加するとされている社会保障費の財源は消費増税しかないという思い込みを取り払うことです。「近藤駿介Official Site~政策提言」でも示して来ましたが、これまで消費税は3兆円程度還付金として輸出企業に戻されて来ました。アベノミクスがスタートしてから2年近く経ち、輸出型大企業を優遇することでは「経済の好循環」が実現しないことが明らかになった今、輸出型大企業優遇のために配分されてきたこうした予算を削っても国内経済に大きな影響を及ぼすことはないと思われます。こうした輸出型大企業を優遇することに使われてきた消費税を社会保障費に回せば、消費増税を先送りしても財源は十分確保出来る計算になります。政府はこれまで「消費増税分は全額社会保障費に使う」と公言して来たのですから、消費税を輸出企業の還付金ではなく社会保障費に回すことに異議を唱えることは出来ないはずです。

「財政支出の規模を維持する」という制約条件の下で国内需要を増やし経済を立て直すためには、財政支出のポートフォリオを変更する以外に選択肢はありません。期待利回りが低いことを理由に公的年金(GPIF)のポートフォリオを大幅に見直した政府や有識者達は、なぜ経済浮揚という面で期待リターンの低い現在の財政ポートフォリオの大幅に見直しは提言しないのでしょうか。

「消費増税先送り解散」という「大義なき解散」が、GDP統計によって「アベノミクスの是非を問う」という「大義ある解散」に変貌する気配が見え始めた今、野党には「アベノミクスの失敗」という表面的な批判を繰り返す不毛な選挙戦ではなく、アベノミクスに代わる大胆な経済政策を有権者に提示することで活発な政策論争が巻き起こし、今回の解散を「有意義な解散」にしてくれることを期待するばかりです。

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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