アベノミクス、眉唾の雇用回復

衆院選の公示を控え、各党の党首による論戦も盛んになって来ました。その論戦の中で安倍総理が訴えているのは、この2年間で「雇用を拡大した」という実績です。

その裏付けとして使われているのが「雇用者100万人増」「有効求人倍率1.10倍」「完全失業率3.5%」といった統計です。しかし、こうした主張は必ずしも現在の日本の雇用情勢を客観的に示したものとは言えないものばかりです。

「雇用者100万人増」に関しては、野党も指摘している通り、2013年1月から20114年10月の間に「正規の職員・従業員」(実数)は38万人減っている一方で、「非正規の職員・従業員」は157万人増加していますから、「雇用の質」が伴っていないといえます。

また、繰り返し成果として強調している「有効求人倍率1.10倍」も、あくまで「求人」であり「就職件数」ではありませんので、「雇用拡大」の成果を裏付ける統計とはいえません。2014年10月時点では、実際に就職に繋がった「成約率」(=就職件数/有効求人数)は7.3%に過ぎず、リーマンショック後に「有効求人倍率」が0.42倍台まで下がった時の14.5%を大きく下回っています。

安倍総理は「有効求人倍率」が22年ぶりに1.10倍に達したことをアベノミクスの成果として強調していますが、2014年10月の「就職件数」は16万6281人と、リーマンショックに見舞われた2008~2009年の平均値である16万5000人とほとんど変わらない水準に留まっています。つまり、安倍総理が「雇用が回復した」と強調する根拠にあげている「有効求人倍率の回復」がもたらしたのは、「就職のし難さ」だという皮肉な結果になっています。

さらに、「有効求人倍率」が1.10倍と22年ぶりの高水準と言いながらも、「正社員の有効求人倍率は0.68倍」と1倍を大きく下回ったままになっています。この「正社員の有効求人倍率」が0.68倍に留まっていることに対しては、安倍総理は国会で「(リーマンショック後の)0.25倍から大きく改善させてきた」と「アベノミクスの成果」の根拠に使われてしまています。

最後の「完全失業率3.5%」というのにも、統計上の問題が含まれています。

日本の就業者、完全失業者の定義は、「他の主要先進国と同様,ILOの国際基準に準拠したもの」(統計局)となっており、「月末1週間に1時間でも働いた人は就業者」にカウントされます。したがって、所謂フリーターと呼ばれる人も、統計上「調査期間中に、少しでも仕事をしていれば、就業者」(統計局)に分類されます。

2014年10月に「就業者」に分類された従業者のなかで、「月末に1日だけ働いた人」は75万人、「月末に2日だけ働いた人」は164万人となっています。つまり、「月末に1日か2日だけ働いた人」は239万人に達しており、「完全失業者」に分類されている234万人を上回っています。

この「月末に1日か2日だけ働いた人」を「広義の失業者」とみなすと、3.5%となっている「完全失業率」は7.2%にまで跳ね上がる計算になります。
失業率

このようにしてみると、日本の雇用環境は、安倍総理やマスコミが宣伝しているほど回復して来ているとはとても言えない状況にあります。つまり、客観的にいえば、雇用情勢に関しては「アベノミクスは成果を上げていない」というのが事実です。

しかし、こうした状況を単純に「アベノミクスの失敗」として非難するだけでは何も解決しません。現在の雇用環境が客観的にどのような状況にあるのかを明らかにすることが重要なのは、アベノミクスを批判するためではなく、問題点を見付けることと同時に、それを解決するための具体策を示すためです。

各政党には、実際の雇用環境を都合の良いように捻じ曲げて伝えることも、「アベノミクスは成果を上げていない」と非難をすることでも、雇用情勢は改善しないことを自覚して議論を深めて貰いたいと思います。


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近藤駿介

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