「たられば」総選挙 ~ もし、「一票の格差」がなかったら・・・

「人口比例に基づかない区割りで『1票の格差』が最大2.13倍になった今回の衆院選は憲法違反だとして、2つの弁護士グループが15日、選挙の無効(やり直し)を求めて広島高裁と広島高裁岡山支部に提訴した。午後には、同じグループが他の高裁・高裁支部に全国一斉提訴をする。295の選挙区全てについて無効請求訴訟が起こされるのは初めて」(15日付日本経済新聞夕刊「衆院選1票格差で提訴」)

与党が衆院議席の3分の2(317議席)を上回る326議席を獲得し圧勝した今回の総選挙で、2倍超える「1票の格差」があったことを理由に、295選挙区全てを対象とした無効請求訴訟が起こされました。

今回「0増5減」でお茶を濁したように、政党間の利害が強く絡む問題みますから、「区割の変更」による「一票の格差」の解消を、国会の自浄作用に任せていては永遠に解決出来ないことは間違いありません。また、この「一票の格差」は基本的人権に関る問題ですので、2倍以内なら良いというような曖昧な基準で許されるものでもありませんから、司法には踏み込んだ判断をして頂きたいと思っています。

個人的には、「一票の格差」を選挙区の「区割りの変更」で修正して行くことは極めて難しいと思っており、区割を変更せずに「一票の格差調整後投票数」で当選者を決めて行くことを検討した方が早いと考えています。単純に言うと、各選挙区の「有権者数」を均一にするのではなく、選挙区ごとに「一票の重み」を加味して投票数に反映させることで「一票の格差」を調整するということです。

今回の選挙では宮城5区の有権者数が23万1081人に対して、東京1区の有権者数は49万2025人と2.13倍になっています。具体的には、こうした「一票の格差」を調整するために、東京1区の候補者の投票数を2.13倍するということです。同様に筆者の東京23区の投票数は2.02倍、大阪15区は1.71倍と、295小選挙区全てでこうした「一票の格差調整後投票数」を算出し、それを選挙区に関係なくランキングして、小選挙区定数である上位295人を当選者とするということです。

つまり、投票は各選挙区ごとに行うものの、当落は各選挙区ごとに決めるのではなく、全国ランキングで決めて行くということです。

選挙に限らず「たられば」の話しをしても仕方がないことですが、もしこのような「一票の格差」の調整が行われていたとしたら、小選挙区の結果がどの位違って来るのかを検証すること自体は参考になると思います。

今回の総選挙において、「一票の格差調整後投票数」ランキング上位295候補者を当選とすると、その政党分布は実際の選挙結果と変わって来ます。

今回自民党は小選挙区で223議席を獲得しましたが、「一票の格差調整後投票数」ランキング上位295には187人しか入っておらず、小選挙区制度と「一票の格差」によって、36議席(=223-187)嵩上げされている結果となります。

これに対して民主党は小選挙区での獲得議席は38に留まりましたが、「一票の格差調整後投票数」ランキング上位295の中に69人入っており、小選挙区制度と「一票の格差」による逸失議席数は31議席に達しています。小選挙区で敗北し、比例復活も果たせず民主党敗北の象徴にもなった海江田代表も、小選挙区で8万9232票を獲得しています。これは「一票の格差調整後投票数」にすると18万9996票となり、この数字は「一票の格差調整後投票数」ランキングで全国75位になるもので、十分当選してもおかしくない票を獲得していたともいえます。

獲得議席数差異

同様に小選挙区での獲得議席が11議席であった維新の党は「一票の格差調整後投票数」ランキング上位295には23人が入っており、逸失議席数が12議席あったといえる状況にあります。

一方、その他の公明党、共産党、次世代の党、生活の党、社民党各党の実際の獲得議席との差異は1議席程度と、誤差といえる範囲に留まっています。

また、「一票の格差調整後投票数」ランキング上位295に入らずに小選挙区で議席を得たのは、合計89人。その政党別内訳は、自民党66人、民主党11人、維新の党3人、その他の政党は各1人という状況です。

圏外当選者政党内訳

日経電子版でも、「得票率に比べて議席占有率が高くなる小選挙区の特性は、今回の衆院選でもはっきり表れた。自民党の得票は48%と半分以下だったにもかかわらず、議席占有率では76%に達して、他党を圧倒した」と報じられている通り、最も制度上の利益を得たのが自民党であり、反対に割を食ったのが民主党と維新の党であったといえます。

小選挙区制は、その特徴から、第1党と争う第2党、第3党が割を食ってしまうことで、「死票」が多く出てしまうのも特徴です。今回の選挙でも筆者の集計では「死票」が総投票数の約52%に及びました(日経の報道では48%)。これも「たられば」ですが、もし「一票の格差調整後投票数」の上位295人を当選者としていたら、この「死票」は47%まで、約5%低下する計算になります。

選挙制度が変われば有権者の投票行動も変化しますので、実際の獲得議席数と単純に比較して論じるのは難しいことも事実です。しかし、「一票の格差」が2倍以上に達する選挙区が13選挙区もあるうえ、48%の得票率の自民党の議席占有率が76%に達する今の選挙制度は見直すべき時期に来ています。

2009年と2012年の総選挙も最高裁から違憲状態という認定を受け、「各都道府県に1議席を無条件に割り振る 『1人別枠方式』の見直し」が求められていることを考えると、こうした「一票の格差調整後投票数」に基づく当選者決定方式は、十分検討に値するように思います。

選挙区の区割り変更もいりませんし、パソコン1台あれば簡単に算出できるうえに、投票が締め切られた午後8時と同時に当選確実が次々と出されるような白けた選挙からの脱却が図れます。白けた選挙からの脱却は、投票率の上昇にも寄与することが期待されます。

アベノミクス第1の矢である「大胆な金融緩和」の弊害が見られるようになって来た中で、選挙制度と「一票の格差」の追い風を受けて大勝した安倍総理には、「大胆な選挙制度改革」に突き進むくらいの度量の大きさを見せて頂きたいものです。

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主要候補者全員当選の選挙区や全員落選の選挙区がでてそうなっただけなんじゃ?
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