違いを感じさせたFOMC~金融の専門家が舵を取るFRBと、行政官が舵を取る日銀の差

利上げが遠のいたことと、FRBが金融政策に腐心をしていることを感じさせるFOMCでした。

FRBは、雇用者数の増加が力強いことや、エネルギー価格の低下が「家計の購買力を高めた」ことを理由に、景気認識を「堅調なペースで拡大」していると上方修正しました。

その一方で、「低迷が続く物価上昇率については、原油安などで『短期的にはさらに低下すると予想される』と踏み込んで表現」(日本経済新聞)をしました。

FRBが、物価が「短期的にはさらに低下すると予想される」ということを表明したということは、「原油安などの一時的要因がなくなれば、いずれFRBが長期目標とする年2%のインフレ水準に上昇していくとの見方は堅持」(日本経済新聞)したとしても、景気回復に伴う金利の上昇よりも、物価下落による金利低下が先に訪れることをFRBも認識していることを示すものです。

こうしたFOMCの声明を受けて、米国のイールドカーブは期間の長い金利が低下する形でフラットニング(ブルフラットニング)しました。

金融市場や実体経済に打撃を与えないように利上げをするためには、短い金利が利上げを織り込んで上昇していく形でフラットニング(ベアフラットニング)し、市場金利に追随する形でFRBが利上げに動くのが理想です。

しかし、原油安の影響もあり物価が「短期的にはさらに低下する」可能性をFRBが認めざるを得ない状況となり、市場金利が低下してしまったことで、こうした理想形の実現は先送りされる形となりました。

今回FRBが、これまで気にして来た雇用の質ではなく雇用者数の増加や、エネルギー価格の低下による家計の購買力の向上を理由に今回景気認識を上方修正したのは、イールドカーブのブルフラットニングを避けたかったからのように思えてなりません。

日銀の追加緩和やスイス中銀の突然の対ユーロ上限撤廃、インドやカナダ中銀の利下げなど、ここに来て多くの国の中央銀行が市場を驚かすタイミングで金融政策変更を続ける中、FRBだけは市場に驚きを与えないように細心の注意を払っているようです。

厄介なのは、景気や為替の強弱に関係なく、世界的に物価低下傾向が高まって来ていることです。FRBの3度のQEを経て米国の雇用情勢が大きく改善したことで、量的緩和政策によって景気を浮揚させることが出来ると主張する学者が増えて来ています。しかし、同時に、量的緩和政策では物価の下落傾向に歯止めをかけることは難しいことも明らかになって来ています。

「景気と物価の乖離」は金融政策では解決出来る問題ではなく、構造的な問題であると考えるべき時期に来たのかもしれません。

FRBが「景気と物価の乖離」というこれまでの経済常識を覆すような現象が強まる中で、市場の混乱を招かないように細心の注意を払いながら金融政策を推し進めようとしているのは、金融の専門家が金融政策を担っているからかもしれません。

世界の金融市場が様々な未知なるリスクを抱えながらも平穏を保てているのは、ドルという基軸通貨を持つ米国の中央銀行であるFRBが、中央銀行らしい配慮を見せているからだといっても過言ではなさそうです。

それに対して、金融の専門家ではない行政官が、「景気と物価の乖離」など目もくれず、市場に驚きを与えてでも「2%の物価安定目標達成」を目指して闇雲な量的緩和を推し進めようとしている日本。こうした中央銀行の存在は、国際金融市場にとって大きなリスクになるかもしれません。

中央銀行の差が大きな差になって表れる局面がそう遠くない時期に訪れるような気がしてなりません。


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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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