アナリストの株価予想は何故当らないのか~資産運用に関する誤解

■アナリスト予想が当たらない理由
4日付日本経済新聞の「マネー&インベストメント」欄に、「投資賢者の心理学~アナリスト予想の弱点」という、投資教育アドバイザーの方が書かれたコラムが掲載されています。

このコラムでは、アナリストの相場予想が当たらない理由を、「現時点の水準をベースに足元のトレンドに沿った予想をしている」ことと、行動経済学でいう「アンカリング効果(与えられた数字に影響されてしまう)」から解説されています。

確かにご指摘の通りなのですが、これらはアナリストに限らず投資家全員に当てはまるもので、アナリストだけが陥る現象ではありません。換言すれば、相場予想の面において、アナリストが一般投資家の持ち合わせていない特殊な能力を持ち合わせてはいないということです。

しかし、これは当然のことです。何故ならば、アナリストの仕事は企業を分析することであり、株価を予想することではありません。さらに、アナリストは実際に自分で投資をしていたり、豊富な投資経験を持っていたりするわけではありませんから、市場価格の決定要因自体に関しては一般投資家と同等のレベルだからです。

■現在・過去・未来
掲載されているコラムの中で、「現時点の水準をベースにトレンドに沿った予想をしている」という指摘があります。「現時点の水準をベース」にしていることじたいは当然のことであって、問題なのは「現時点の水準だけをベース」に考えることです。

「近藤駿介流 金融護身術、資産運用道場」の講座でもお話しすることですが、「相場分析」をする上で重要なことは、「過去」「現在」「将来」という時間軸を通して考えることです。「現在」の価格は、「過去」の価格を「原因」とした「結果」であるのと同時に、「未来」の価格の「原因」になるものだからです。

「現時点の水準をベース」に「未来の価格」を予想するという、多くのアナリストが用いている方法の問題点は、予想の中に「過去の価格」と「現在の価格」の因果関係が含まれていないことです。このような「過去」から「現在」に至るまでの経緯を考慮しない「現時点の水準をベースにトレンドに沿った予想」が的中したとしても、それは偶然でしかありません。

蛇足になりますが、「現時点の水準をベースにトレンドに沿った予想」をすることは、アナリストに限ったことではありませんから、筆者は市場参加者のこうした習性を利用したテクニカル分析も運用に応用しておりました。

■アンカリング効果
このコラムでは、アナリスト予想が無難で当らないものになっている理由として、「アンカリング効果」を上げています。確かに一面では真理だと思いますが、実際の市場の相場予想をするわけですから、「アンカリング効果」が価格予想に影響を及ぼすというのは当然のことでもあります。

株価の基準を何処に設けるかというのは、最も判断が難しいものです。投資家自身が自分のための基準を設けるのは自由ですが、多くの方に分析結果を伝えなければならない立場の人間は、多くの人が納得する基準を設けなければなりません。

さらに、アナリストというのは組織に所属していますから、組織としての統一基準に従わなければなりません。Aアナリストは現在の株価を基準に、BアナリストはBアナリスト個人の基準をベースにしたのでは、顧客を混乱させることになります。

それを「アンカリング効果」というかは別にして、どうしても現在の株価が基準になってしまうのは仕方のないことです。それ以外に多くの投資家を納得させる基準はないのですから。

■アナリストは市場の価格決定要因に対して無知である
単純に言えば、アナリスト予想が当たらないのは、アナリストが市場での価格決定要因が何かを知らないからです。

アナリストの相場予想の基本は、企業収益(=EPS;一株利益)とレシオ(PER)の2つです。しかし、実際の金融市場はこの2つの要因で動いているわけではありません。

アナリストというのは「日本株に投資する」という前提で考える種族ですから、「日本株に投資しない」という投資家が増えてくる局面で相場予想が当たる確率は低くなる運命にあります。

「投資家もプロの予想が外れたときの印象が強く残ってしまう『心理的バイアス』がかかっている側面がある」

このコラムは最後にこのような指摘をしています。しかし、それは「心理的バイアス」というよりも、アナリスト予想が株式市場が低調で多くの投資家が苦しんでいる局面では当てにならず、株式市場が好調で多くの投資家が儲かっている局面で当たる傾向が強いからではないかと思います。

市場分析をするうえでの優先順位は、「日本株に投資をする投資家」と、「日本株に投資をしない投資家」のどちらが多いかを見極めることで、企業収益の優先順位はその次に来るものだと考えておいた方が賢明だと思います。

■仕事をするうえで必要な資格とリターン上げるために必要な知識
先日、日本株や為替の投資をしている知人から、「アナリスト資格とった方がいいですかね」という質問を受けましたが、即座に「No」と返事をさせて頂きました。

資産運用業務に携わるのであれば、アナリスト資格は必須になりますから資格取得をお勧めします。しかし、そうでない一般投資家の方がアナリスト資格を目指すというのは、時間とお金の両面でコストパフォーマンスがよくないというのが筆者の持論です。それは、アナリスト資格で得られる知識は、実際の投資にはほとんど役に立たないからです。

「投資家は証券の収益率に関して同一の予想を持つ」

これは有力なポートフォリオ理論を構成している一つの仮定です。理論は多数の「変数」があっては成り立ちませんから、本来「変数」であるものも「定数」と扱っているものが少なくありません。

もし、この仮定が成り立つとしたら、ファンドマネージャーの能力の差によってパフォーマンスの差が出てくることはないはず。さらには、そもそも市場で価格が付いて行くのかも怪しくなります。

要するに、資産運用業界で仕事をしていくうえで必要な知識、資格と、一般の投資家がリターンをあげて行くうえで必要な知識とは異なるということです。

■資産運用に関する誤解
本来、アナリストの仕事は企業を分析することであって、株価を予想することではありません。

プロ野球選手のバットを作る職人が、プロ野球選手のようなバッティング技術を備えていると思っている人はどの位いるでしょうか。アナリストを株価予想のプロであると思い込むのは、バット職人にプロ野球選手としてのバッティング技術を求めるくらい的外れなものだという認識を持つべきだとおみます(今はアナリスト自身が勘違いしている場合も多いですが)。

株価の予想など、専門知識などなくても誰でも出来るものです。また、資産運用というのは、株価予想で行うものでもありません。こうしたことは「近藤駿介流 金融護身術、資産運用道場」の中でも随時お伝えしていきますが、「貯蓄から投資へ」を実現するためには、「アナリストは株価予想の専門家である」といった資産運用に関する数多の誤解をといていく必要があるように思えてなりません。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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