保険ショップに規制導入 ~「金融情報はただだと思っている」日本人に対する警鐘

■「水と安全」に代わって台頭してきた「金融情報はただ」という神話
1970年、イザヤ・ペンダサンはその著書「日本人とユダヤ人」のなかで、「日本人は水と安全はただだと思っている」と記していました。それから45年。日本でも「水と安全」がただであるという「神話」は崩壊して来ています。

「水と安全はただ」という「神話」に代って台頭して来ているのが、「情報はただ」、特に「金融情報はただ」だという「情報神話」です。

「金融庁は複数の保険商品を扱う乗り合い代理店に対する販売規制を2016年春に導入する。監督指針などを改正し、販売が特定の商品に偏りすぎていないかや契約者への薦め方が適切だったかを重点検査する。指針に反した行為は行政処分の対象になる。保険ショップが保険会社から受け取る割高な手数料を目的にした販売を是正する狙いだ」(6日付日本経済新聞 「保険ショップに規制導入」)

「複数の保険を売るよりも特定の保険を集中して販売した方が代理店の収益は上がる仕組みだ。『類似の商品なら手数料の高い保険を売る』との声が複数ある」(同日本経済新聞)

ただで複数の会社の保険商品の情報を提供してくれることを謳い文句にした保険ショップに販売規制が設けられることになったことが報じられています。

「業界関係者によると、手数料は前年の契約額が多いほど高くなる仕組みで、ある医療保険では販売額の多い代理店には初年度の保険料の60%程度を保険会社が支払う。加入者が支払う保険料が年間10万円なら、代理店は6万円を受け取る計算だ」(同日本経済新聞)

初年度保険料の60%が保険会社から代理店に報酬として支払われるということは、契約者が望む契約内容に対して高い保険料を支払わされているか、契約者の希望が削られた希望を満たさない契約内容になっているかのどちらかのはずです。

ようするに、ただで得られた情報の対価として、契約者は「自分が欲しい保険」ではなく、代理店や保険会社が「売りたい保険」を購入させられていた可能性があるということです。

■「ただのセミナー」のビジネスモデル
商品の内容が異なりますから単純には比較出来ませんが、投資信託の販売手数料が概ね3%であることを考えると、「初年度保険料の60%」という手数料率がかなり高い水準であるということは出来ます。

「貯蓄から投資へ」という掛け声とともに、金融講座、投資講座も多く開催されており、販売会社が「ただのセミナー」を開催するのは当たり前になっています。しかし、販売会社が開催する「だだのセミナー」は、基本的に「受講者を顧客にするためのセミナー」であり、販売会社は受講者に投資商品を販売し、販売手数料という形でコスト(セミナー受講料)を回収するビジネスモデルになっていることは知っておかなければなりません。

「受講者を顧客にするためのセミナー」が成り立って行くための条件の一つは、「受講者の金融リテラシーを低く保つ」ことです。受講者の金融リテラシーが「ただのセミナー」で向上してしまっては、受講者を顧客にし難くなってしまうからです。

また、受講者の金融リテラシーが向上してしまっては、それに伴ってセミナーで教える講師側のレベルも上げて行かなければなりません。しかし、残念ながら販売会社がこうした状況に対応していくことは非常に難しいことです。

何故ならば、投資商品の運用は一応専門家といわれる担当者が行っておりますが、販売会社は販売の専門家を揃えているのであって、運用の専門家を揃えているわけではないからです。

もし、販売会社が運用にあたっている専門家の考えを受講者に適切に提供できるとしたら、それは運用内容自体が専門性を必要としないものになっていることを示唆するものでしかありません。

■「金融リテラシー向上」を阻んでいる「情報はただ」という神話
筆者も昨年から、20年以上の資産運用、投融資業務を行って来た経験者でなければ伝えられない知識や考え方、世の中の仕組を、「近藤駿介流 金融護身術、資産運用道場」で開催する各種の講座を通してお伝えしています。

金融や経済、投資に関して伝えられるものというのは、「株価や為替予想」、「テクニカル分析の手法」といった表面的な内容か、どのように金融・経済や金融市場にアプローチすればプロの投資家に近付けるのかという「アプローチ論」のどちらかになります。

この両者を比較した場合、「株価や為替の予想」の方が短期的利益を得られる可能性がありますから、目に見えるニーズとしては高くなります。しかし、こうした表面的な内容だけをお伝えするので、受講者の金融リテラシーを向上させることは困難ですし、受講者も状況が変わる度に講師に相談しに行く必要が出て来てしまいます。

こうした考えに基づき、「近藤駿介流 金融護身術、資産運用道場」では、プロの投資家に近付くための「アプローチ論」を重視した講座、セミナーを開催しています。それは、実際にプロの投資家になった経験のある人間でないと伝えることは出来ないからです。

日本でも「金融リテラシー向上」の必要性が求められています。長年資産運用業務を行って来ましたが、その中で痛感していることは、「金融リテラシー向上」の足枷になっている要因の一つが、「日本人は(金融)情報はただである」という「神話」だということです。

「金融リテラシー向上」を実現するためには、「(金融)情報はただである」という「神話」を崩壊させなければならないと思っています。

イザヤ・ペンダサンが「水と安全はただである」と指摘してから、この「神話」が崩壊するまで40年近い時間が掛かりました。もし、「(金融)情報はただである」という「神話」が崩壊するまでに同じ位の時間が掛かるとしたら、それまでに日本の金融資産の多くが毀損することになるのだと思います。

今回の保険ショップに対する規制の導入が、「日本人は(金融)情報はただだと思っている」という「神話」崩壊に向けての第一歩になることを願うばかりです。


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2月27日(金) 19:10~20:40 新橋ビジネスフォーラム  参加費4,000円
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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