G20、揺らぐ協調体制 ~「市場との対話」を突き付けれた日銀と、「柔軟な財政政策」でG20を軽視する日本

■「金融政策の二極化」と「金融政策変更タイミングの二極化」
「20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日(日本時間11日未明)、共同声明を採択して閉幕した。日本とユーロ圏の景気回復が緩慢であることを指摘。低インフレは経済停滞につながるため、金融政策や財政政策を継続的に見直し、『必要な場合には断固として行動する』と明記した」(11日付日本経済新聞 「低インフレに断固行動」)

ギリシャ問題の陰に隠れたこともあり、いつも以上に注目度が低かったG20が共同声明を発表して閉幕しました。今回のG20が浮かび上がらせたものは「国際協調体制の強化」ではなく、その難しさであり、「各国の利害の対立」であったようです。

「金融政策は金融緩和に踏み切った日欧・新興国と、引き締めに向かう米国で二極化していくとの認識を共有した。金融市場が動揺しないように『慎重に調整し(市場との)明確な対話が必要』との考えを表明した」(同日本経済新聞)

「二極化していくとの認識を共有した」ということは、米国以外の国が金融緩和に向かうことを容認したと理解出来るものです。その中には日本も含まれると解釈できますから、日銀にとっては国際社会から追加緩和のお墨付きを得たといえます。

しかし、「昨年10月以降だけでオーストラリア、カナダなど20を超える各国中央銀行が利下げに踏み切った」(同日本経済新聞「G20、揺らぐ協調」)なかで、今さら「二極化していくとの認識を共有」する必要があるのかは疑問の残るところ。

個人的に気に懸かったのは「金融市場が動揺しないように『慎重に調整し(市場との)明確な対話が必要』との考えを表明した」という部分です。個人的にはこの部分に米国の強い不満が滲み出ているように思います。

米国の利上げ観測が強まる一方で、世界各国が金融緩和に動くという国際情勢の中で問題なのは、「金融政策の二極化」よりも、「金融政策変更のタイミングの二極化」のように思います。

この数カ月間金融市場にサプライズを与えて来たのは、米国の経済状況であり、各国中央銀行が予想外のタイミングで打ち出して来た金融緩和です。

つまり、経済が堅調である米国が与えているサプライズが「経済指標の予想以上の改善」であるのに対して、経済状況が芳しくない米国以外の国が与えているサプライズは、「予想外の金融緩和」という人為的なものになって来ているということです。

経済が順調な回復傾向を見せている米国にとっては、他国発の市場の混乱は避けたいリスクのはずです。一方、景気回復が芳しくない国には、市場動向を自国に都合の良い方向に持って行きたいという潜在意識が働き、サプライズによって市場の流れを変えようとする傾向が強くなることで「金融政策変更のタイミングの二極化」が進みやすい状況にあると言えます。

しかし、各国が「サプライズ競争」に走れば、市場が混乱することは必至ですから、米国はこれには歯止めを掛けたいのだと思います。その思いが「慎重に調整し(市場との)対話が必要」という考えの表明や、「通貨安競争回避を約束した為替相場のコミットメントを遵守」という共同声明に表れていると思います。

■「市場との対話」をした経験のない黒田日銀に突き付けられた課題
そうだとしたら、日銀が追加緩和に対するお墨付きを得たとしても、その実施に関しては市場との対話を慎重に進めるよう釘を刺されたとも言えます。

日銀は10月のサプライズ緩和によって、勢いが失われかけていた円安・株高の流れを取り戻すことに成功しました。しかし、次回はその政策効果を含めて、慎重な「市場との対話」の上で緩和に踏み切れるかがポイントになるかもしれません。

これまで黒田日銀は「2%の物価安定目標達成」という政府から与えられたノルマをこなすことだけを求められて来ましたから、市場との対話は必要として来ませんでした。そしてその目標達成が怪しくなった段階では「サプライズ緩和」に踏み切りましたから、黒田日銀は発足以来一度もまともに市場との対話をして来ていないとも言えます。

果して、黒田日銀は「慎重に調整し(市場との)明確な対話が必要」という国際社会から突き付けられた課題を克服することが出来るのでしょうか。

■ G20軽視の日本が叫ぶ「G20、揺らぐ協調」
「G20の強調は揺らぎ、出口の見えない停滞ムードに覆われた」(同日本経済新聞「G20,揺らぐ協調」)

日本経済新聞も「G20、揺らぐ協調」という見出しを付け、G20の協調体制が揺らいできていることを報じています。しかし、日本経済新聞が報じている「揺らぐ協調」というのは、財政をめぐる「米独のすきま風」であり、日本とは関係がない問題として捉えているようです。

「政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)の伊藤元重東大教授ら民間議員は、財政健全化に向けた数値目標を明記した提言をまとめた。税収などで政策経費をどのくらい賄えるかを示す国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度に黒字化する政府方針に向け、経済成長による税収増と歳出改革で15年度以降、年平均2.5兆円改善する目標を提起した。・・・(中略)・・・ 17年4月の消費税率10%への引き上げでGDP比1%弱にあたる5兆円弱が改善する。残りを税収増と歳出改革で年ベース約0.5%分の2.5兆円を改善させる数値目標を明記している」(11日付日本経済新聞 「年2.5兆円改善提案」)

日本がトルコで開催されたG20で「柔軟な財政政策」の活用を謳った共同声明に賛成するのと時を同じくして、国内では経済諮問委員会の民間議員達によって、消費税率10%への引上げで5兆円の増収を図るという「緊縮財政政策」をとるという提言がまとめられました。

世界に対しては「柔軟な財政政策」に賛意を示すのと同時に、国内では消費増税という「緊縮財政政策」をとるという提言をまとめるというところにこそ、G20の協調体制の揺らぎが現れているように思います。

頑なまでに財政出動を渋るドイツと、G20では「柔軟な財政政策」に賛同しておきながら、国内では消費増税という緊縮財政を正当化する提言をまとめるという「柔軟な財政政策」を掲げる日本。どちらがG20の協調を揺るがしていることになるのでしょうか。


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近藤駿介

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