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景気と伝統的統計のズレ ~ 景気鈍化のお化粧に使われる伝統的統計

■ 成果を誇張するために利用される有効求人倍率
「伝統的な経済統計が景気の動きを映しづらくなっている。昔は景気後退局面で悪化した雇用関連の指標が改善し、電力使用量と景気の連動性は薄れた。日本社会の構造が変わり、経済の変化に対する個人や企業の反応も変わったためだ」(23日付日本経済新聞 「伝統的統計 景気とズレ」)

日本経済新聞は、「人口減に伴う構造的な人手不足」が原因で、有効求人倍率など伝統的な経済統計が景気の動きを映しづらくなっていると報じられています。それを裏付ける証拠として、次のような解説をしています。

「これまでは景気が悪くなると企業の求人が減って求人倍率は下がった。求人倍率の低下が雇用の悪化を示した。しかし2012年5月から11月に景気が後退した局面では、有効求人倍率は0.03ポイント上昇した。昨年の消費増税後 『ミニ後退』 に陥った可能性が高い14年春~夏も同じように改善した。通常とは逆の動きだ」(同日本経済新聞)

しかし、有効求人倍率に関して言えば、「人口減に伴う構造的な人手不足」によって「景気の動きを映しづらくなっている」という説明には無理があります。

そもそも、有効求人倍率はあくまで「求人」を示す統計であって、「雇用」を測る統計ではないからです。米国の雇用統計で最も注目を集めるのが「非農業部門の雇用者数」であることからも明らかなように、重要なのは「雇用数」であって、「求人数」ではありません。

「雇用数」を示すわけではない有効求人倍率が必要以上の大きく報じられるのは、アベノミクスの成果を誇張して伝えるためです。有効求人倍率は求人を集めることで簡単に嵩上げすることが出来るからです。

実際の「雇用数」を表すものではない有効求人倍率が1.15倍と「22年ぶりの高水準」に上昇して来たことをもって雇用回復を強調する日本の政策当局の姿は、失業率も完全雇用に近い水準まで低下し、「非農業部門雇用者数」が予想以上に愚得ている中でも、「雇用の質」を追い求めるFRBの姿とは対照的のもの。

■ 有効求人倍率の「質」
また、政府が雇用情勢の改善を演出するために利用している有効求人倍率のその「質」に目を向けてもその低さは明らかです。

パートも含む有効求人倍率は1.15倍まで上昇して来ていますが、多くの求職者が希望する正社員の有効求人倍率は0.71倍に留まっており、求職者1人に対して0.71人分の求人しかない状況です。

安倍総理は国会答弁で正社員の有効求人倍率も0.25倍から大幅に回復していると主張していますが、実際に就職に結び付いた求人数である「就職率」は、2009年末の13.08%をピークに直近では7.43%まで下落傾向を辿っています。ようするに、就職に結び付かない求人が増えることによって、有効求人倍率が嵩上げされているということです。

有効求人倍率と就職率

「有効求人倍率など伝統的な経済統計が景気の動きを映しづらくなっている」のは、雇用義務のない、就職に結び付かない求人が溢れているからに過ぎません。

さらに、職業別の有効求人倍率を見てみると、多くの人にとって雇用情勢が依然として厳しい状況にあることが見て取れます。求職者の24.2%が希望する「一般事務の職業」の有効求人倍率(パートを含む常用)は0.26倍に過ぎず、求人が4人に一人しかない状況です。さらにその就職率は3.9%と、ほとんど絶望的な数字になっています。求職者の0.7%しか希望しない「建築・土木・測量技術者」の有効求人倍率が4.00倍であっても、とても雇用情勢全体を改善するには至らないのが現状です。

日本経済新聞のこの記事は、「株価や為替の動きを左右しやすいマインド指標が注目されるのは、それだけ金融資本市場が実体経済に及ぼす影響力が高まっているということだ」という専門家の尤もらしいコメントで締め括られています。

しかし、現実は「金融資本市場が実体経済に及ぼす影響力が高まっている」のではなく、「金融資本市場に影響力」を及ぼすために、有効求人倍率という「操作しやすい伝統的な経済統計」が利用されているというものです。

「伝統的な経済統計が景気の動きを映しづらくなっている」のは、政策当局が景気鈍化を「操作しやすい伝統的な経済統計」でお化粧をすることで「景気の動きが映らなくしている」ことを見落とさないようにしたいものです。

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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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