「VIXベアETN」一晩で価値96%消滅 ~ 金融工学が生み出す陰

「野村のETNは、上場当初20万口だった投資口が2018年2月時点で110万口まで増えていた。保有者の大半は個人投資家だったとみられるが、中にはトレーディングフロアで働くプロの証券マンも含まれていたという」(9日付日経電子版 「恐怖指数の関連商品、価値が一晩で96%消滅」

悲しい話だ。

それは「VIXベアETN」の価値が「たった一晩で96%も価値が吹き飛んだ」ことではない。「トレーディングフロアで働くプロの証券マンも含まれていた」ということ。これは、「トレーディングフロアで働く人」必ずしも「プロの証券マン」に非ず、といういことの証明でもある。

トレーディングフロアで働く証券マンというのは必ずしも金融や投資のプロではない。経理部員のほとんどが税理士や公認会計士ではないのと同じだ。

一般の証券マンの中で「VIX指数」のことを正しく理解している人はほとんどいない。もし証券マンの多くが「VIX指数」のことを正しく理解していたら、顧客に「VIX指数」と逆方向に動く「VIXベアETN」のような商品を勧めるはずはないからだ。もし、正しく理解して顧客に勧めていたとしたら、それはそれで大きな問題。

「VIXは米国の代表的な株価指数であるS&P500種株価指数の予想変動率を示し、『恐怖指数』とも呼ばれる」(同日経電子版)

そもそも、VIX指数のこうした説明は必ずしも正しくない。専門的な説明は省略するが、VIXは「予想変動率」「将来の恐怖度」を示すものではない。VIXを急上昇させる原動力は「予想変動率」ではなく「足元の恐怖度」なのだ。

ボラティリティは市場動向を把握するうえで重要なインディケーターである。しかし、それだけ重要なインディケーターも、金融商品化された瞬間に市場のリスク要因になってしまうのが恐ろしいところ。

今日早稲田大学エクステンションセンターで開催した講座の中でも触れたが、リーマンショックを引き起こす要因になったのも、CDSといった本来ヘッジ商品やサブプライムローンが金融商品に組み込まれて世の中に販売されていったことである。

金融工学の発展で、何でも金融商品化出来てしまうようになっているところが現在の金融市場が内包するリスクでもある。金融工学の発展がもたらしたのは必ずしも投資手法の高度化だけではない。それ以上に金融工学は胴元が損失を被る可能性が低く、金融リテラシーが高くない投資家受けする投資商品を生み出すことを可能にしているというのが現実である。「自己責任原則」という追い風を受けて。

今回のVIX指数の急上昇が金融市場を揺るがすことはないはずである。それは、金融機関などが「VIXベアETN」のような商品に投資するはずがないからだ。個人投資家が投資資金のほとんどを失っても、それは金融システム不安を招くことはない。悪い言い方をすれば今回「VIXベアETN」に投資して痛手を負った個人投資家は無駄死にしたということ。

投資の基本原則は「自分がとるリスクを理解する」「理解できないリスクには手を出さない」ことだ。金融工学が、胴元が損失を被る可能性が低く、金融リテラシーが高くない投資家受けする投資商品を生み出すことを可能にしている時代を生き抜くためには、「理解できないリスク」を持った金融商品に投資するという行為は、通りすがりの見知らぬ人にお金を渡すくらい危険な行動だという当たり前のことを自覚することが必要だ。

「金融商品販売、売買」≠「資産運用」

「KDDIは大和証券グループ本社と組んで資産運用事業に参入する。KDDIが持つ約2500万人の顧客データを生かし、投資信託などの申し込みから運用確認までをスマートフォン(スマホ)上で済ませる」(8日付日本経済新聞 「KDDI、資産運用参入 スマホで投信・年金」

「投資信託などの申込が出来るようにする」ことが、どうして「資産運用事業参入」になってしまうのだろうか。「投資信託などの申込を出来るようにする」ことは、単に「金融商品販売業」を始めるということに過ぎない。

金融商品を販売することや金融商品を売買することを「資産運用」であるかのような誤った認識が定着してしまっている日本らしい悲しい報道。こうした間違った認識から脱却しなければ日本の「金融リテラシー向上」は夢物語。

日米株価急落 ~ 相場の格言通りに動くトランプ相場

「2018年の株式市場は、2017年とは反対に多くの投資家が『戦力の逐次導入』をしなかったことでロケットスタートを切った。しかし、それは『戦力の逐次導入』をした2017年と比較すると、相場の持続性を弱める結果を招きかねない動きであり、相場が市場参加者の予想よりも早く息切れし『幸福感』とともに消えていく状況をつくり出す危険性をはらんでいる。

『もはや2017年ではない』『リスクは国内にあり』。この二つが2018年の日本株式市場のキーワードになりそうだ」

先月産経デジタルが運営するiRONNAでの特集「『日本株バブル』はいつまで続くのか?」に提供したコラム「2018年の日本株市場、波乱とリスクで『幸福感』は失われる」で指摘した通りの展開になってきた。

この時の特集の中で慎重な見通しを披露したのは小生だけ。それは世の中があまりに「楽観的になり過ぎていた」ことの証左。

それにしても、トランプ大統領が勝利した2016年11月の大統領選挙以降の日米株価の動きは、「悲観の中で生まれ、懐疑の中で育ち、楽観と共に成熟し、幸福感の中で消えていく」という相場の格言通りの展開となっている。ここまで格言通りに動くのも珍しい。


トランプ相場と相場の格言


「もはや低インフレとは言えない米国」 を織り込み始めた市場と、それに苦しむ日本

日曜日夜に配信した有料メルマガ「元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚」の記事「『もはや低インフレとは言えない米国』を織り込み始めた市場と、それに苦しむ日本」からの一部抜粋。

「トランプ相場に乗り遅れた反省からロケットスタートしたファンドマネージャー達が、早々に目標組み入れ比率まで株式の持ち高を増やしたとしたとしても不思議なことではない。それが「January Effect」を終わらせ、結果的にイエレンFRB議長任期最終日に株式市場の大幅下落を招いた原因だといえる」

「メディアなどでは、FRBによる利上げ回数がメインシナリオである年内3回から4回に増える可能性が出てきたことが長期金利上昇の要因だとの解説が加えられている。しかし、政策金利の動きをより反映しやすい2年国債の利回りがほとんど上昇していないことを考えると、こうした見方は適切だとはいえない」

「『もはやデフレとは言えない状況』を作り出したアベノミクスは、米国が『もはや低インフレとは言えない状況』に転じることを織り込み始めた金融市場に苦しむことになりそうだ」

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1月配信分
・金融市場を知り尽くしたトランプ政権と、信頼を失った日銀総裁(1/31)
・「トランプ減税に」に反応し始めた経済 ~ ハト派寄りになったFRBと取り残される日本(1/22)
・ロケットスタートを切った2018年 ~ 膾吹きに懲りて羹を飲む(1/15)
・2017年の延長線上で始まった2018年 ~ リスクは国内にあり(1/9)

12月配信分
・ビットコイン急騰を演出した「懐疑の中で育ったトランプ相場」(12/25)
・割高になり過ぎた都心不動産 ~ メザニンで不動産市況は救えない(12/23)
・税制改革に対する過度の期待とFRBが抱えるジレンマ(12/18)
・リスクに備えることを忘れたリスク(12/11)
・2018年は2017年の延長線上にある?(12/4)

若者たちを仮想通貨取引に駆り立てる社会の歪み

昼飯時に、普段投資などにほとんど関心を示さない奥様が一言。

「仮想通貨で何億も儲けた若い人たちが沢山いるんだってね」

どうやら仮想通貨で儲かった若者たちを取り上げたバラエティー番組を見たのが原因。昼飯を食べながら奥様が録画していたその番組をみたところ、やっぱり仮想通貨を取り扱っている企業がスポンサー。

番組内では「億り人」「自由億人」など仮想通貨で大もうけした若者が紹介され、スポンサー企業の仮想通貨取引きアプリまで映し出され、さり気なく仮想通貨取引が簡単にできることがアピールされていた。

少し前に26歳の次男と二人で食事をした時にも、次男から仮想通貨に関する質問を受けた。次男の周りにも仮想通貨をやっている友人が結構いるらしい。仮想通貨について仕組みや問題点、金融的な限界を説明したが「難しくてよくわらん」。

仕組や金融的な価値、問題点が「難しくてよくわからん」でも、仮想通貨の売買はスマホがあれば「小学生でもできる」。ここが仮想通貨ビジネスを行う業者の利益の源泉。その利益を提供しているのは「難しくてよくわからん」といっている人達。

持てる者がより金持ちになり、持たざる者が這い上がるのが極めて難しくなった現在、若者たちが「持てる者」になるには仮想通貨などが手っ取り早い。年を取るまでこつこつまじめに働いても「持てる者」になる可能性はほとんどないし、こつこつまじめに働く場所を得られるかも定かでないという現状が、若者たちを仮想通貨取引に駆り立てているのかもしれないと思うと、何とも言えない危機感を抱いてしまう。

日本は昨年世界に先駆けて改正資金決済法施行により仮想通貨取扱業者を登録制にした。それによって仮想通貨が奪われたコインチェックに対する業務改善命令も立ち入り検査も行えるようになっている。

業者の登録制の必要性を衆議院議員に働きかけて改正資金決済法施行への足掛かりを作ったのはパパなんだよ、と話しても奥様も次男もほとんど関心を示さず。

むしろ、そこまで仮想通貨に関する知識を持っているのに何故パパは「億り人」「自由億人」にならなかったのかという疑問の方が強いようだ。

「投資」は経済にとってとても重要な要素だ。「投資」がなければ経済は発展しない。しかし、若い人たちにとって「格差社会」を突破する唯一の手段が高いレバレッジをかけた仮想通貨やFXなどの「取引」になってしまっているのだとしたら、それは大きな問題、歪んだ社会だと言わざるを得ない。

「貯蓄から投資へ」と繰り返して「投資」という仮面を被った「取引」に誘うだけでなく、「投資」と「取引」の違いや「投資」の社会的重要性を理解させることが重要だ。若者たちに「投資」という仮面を被った「取引」以外にも這い上がるルートがあることを示せる社会を目指して貰いたいものだ。

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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