足下の「有事の円高」と今後

米中首脳会談中に米国がシリア空爆を行ってから、金融市場は地政学リスク中心の展開となってきた。そうした展開の中で米国を中心に長期金利が低下し、為替市場では円高が進み、株価の下落が進んだ。

円は5カ月ぶりに108円60銭付近まで上昇し、それに伴って日経平均は週末にかけて4日続落し年初来安値を記録した。

地政学リスクが強く意識されたのは、15日の北朝鮮の故金日成主席の生誕105年記念日付近で北朝鮮があらたな軍事的挑発を行うとの観測が強まる中で、トランプ政権が米中首脳会談のさなかにシリア空爆に踏み切ったうえ、空母カールビンソンを朝鮮半島近海に派遣するなど、軍事介入も辞さない姿勢を示したからである。

朝鮮半島を中心に地政学リスクが高まったことで「有事の円高」が進んだと報道されている。しかし、為替市場の動きはそんな単純なものではない。

シリアやアフガニスタンに対する空爆と北朝鮮に対する軍事介入との決定的な差は反撃の有無である。米国が北朝鮮に対して軍事介入をした場合、韓国と日本がかなり高い確率で反撃を受けることを考えると、日本は最も地政学的リスクが高い国となるはずである。最も地政学的リスクが高いと目される日本の通貨、円が買われるのを「有事の円高」で片づけるのは説得力に欠けるもの。

トランプ大統領による「ドル高牽制発言」や「地政学的リスクの高まり」などが為替に影響を及ぼしていることは事実だが、それは枝葉の部分。底流でドル需給が変化していることを見落としてはならない。

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毎月分配型投信減配が響き投信資金流入額8割減

「毎月分配型は長期の資産形成に適しているとは言えない」(森信親長官)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC10H0E_Q7A410C1EE9000/?dg=1

毎月分配型投資信託は、運用会社の運用能力ではなく、投信会計を利用した商品。

運用会社にとっては自己否定に近い商品だが、販売会社にとっては運用に伴うリスクが少ない分販売リスクが少ない商品でもあり、投資信託を「運用商品」でなく「販売商品」であることを決定づけた商品でもある。

残念なことは、森長官の「資産形成に適しているとは言えない」という指摘が「資産形成」と「資産運用」を混同したものであることと、投信運用会社が自己否定といえる商品に注力しているところ。元投資信託のファンドマネージャーとしては信じがたいのと同時に情けなく感じてしまう。

投資信託を管掌する金融庁長官が必ずしも正しくない認識を持っているうえ、運用会社が自己否定になる商品に注力している姿を見ていると、残念ながら日本の金融リテラシー向上は苦難の道だと言わざるを得ない。

◆ 家計マネー講座開催のお知らせ
久しぶりに ”「資産形成」を目指す方のための「家計マネー講座」” を開催します。

テクニカル的なことではなく、「資産形成」に必要な考え方や、知識についてお話しします。

【概要】
これから「資産形成」をして行こうと考えている若い世代の方、働く女性を主対象に、家計の考え方や、年金制度を加味した資産運用に関する考え方、日本の住宅ローンの特徴など、今後の「資産形成」に必要な「家計の知識」と「投資の知識」をお伝えする講座です。

【内容】 (120分講座×1回:質疑応答含)

<思考編>
・「資産形成」において最も重要なことは…
・ 家計の考え方 ~ 「貯金」「保険」「投資」を家に例えると
・ 「投資」はドーピング ~「投資」で得られるもの、得られないもの
・ 日本の住宅ローンの特徴 など

<投資編>
・ 嘘も百回言えば真実になる~「若いうちはリスクが取れる」「ドルコスト平均法がいい」「初めは分散投資がいい」…。
・ 投資商品は2種類しかない
・ 投資家デビューする前に知っておくべきこと ~立場によって認識が異なる「リスク」
・ 「プロに運用を任せる」という美しき誤解 など

【日程】
4月28日(金) 18:50~20:50 (質疑応答込)

【会場】
新橋ビジネスフォーラム

【参加費】
10,000円(税込)

【定員】
5名

申込先着2名様に、拙著「アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する」(秀和システム)を進呈。

こちらの「申込フォーム」よりお申し込みください。


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「平和ボケ思考」日本と、市場との認識乖離に危機感を抱くFRB

FOMC議事録に雇用統計、米中首脳会談と今週もイベント盛沢山だったが、米国によるシリア空爆によってほとんどが覆われてしまった。

◆ 「低リスク通貨円が買われた」という「平和ボケ思考」
そうした中で円が主要通貨に対して買われたことについて、日本経済新聞は「国際情勢への懸念が強まり、投資家心理が悪化。『低リスク通貨』とされる円が主要通貨に対して買われた」と報じているが、こうした見方は短絡的だといえる。

シリア空爆によってテロの危険は増すが、シリアが米国に反撃するわけではない。ようするに地政学的リスクは限定的だといえる。

これに対して懸念されている米国による北朝鮮軍事介入が現実のものになれば、在日米軍基地に対する反撃がある可能性がある。つまり、日本に影響が及ぶ可能性があるということ。

こうした状況を考える、地政学的リスクを避けようとする投資家が、最も地政学的リスクが高いといえる国の通貨を「低リスク通貨」とみなすという見方は合理的なものなのだろうか。厳しい見方をすれば、こうした見方は「平和ボケ」といえる。

一方、米国のシリア空爆によって原油価格が上昇するという見方もあるが、シリアの原油生産量は以前の10分の1の水準まで低下しており、現実的には原油価格に及ぼす影響は限定的だといえる。

シリア空爆が北朝鮮の暴走を助長する要因になることが最も懸念されること。このように考えると韓国と日本が足下ではもっとも「地政学リスクが高い地域」だといえる。

◆ 「根拠なき熱狂」よりも直接的な警鐘を鳴らしたFOMC
週末のシリア空爆の陰に隠れた格好になったが、注目するべきは3月FOMCの議事録。

「議事録では『一部の参加者は株価に関して、標準的なバリュエーションの指標と比較して非常に高い水準と捉えた』としたほか、『新興市場株や高利回り社債、商業用不動産といった他のリスク資産の価格もこの数カ月に顕著に上昇している』との認識も示した」(Bloomberg)

FRBが株式市場に警鐘を鳴らすのは1996年12月に当時のグリーンスパンFRB議長の「根拠なき熱狂」以来ともいえることで、株式市場は敏感に反応した。しかし、「根拠なき熱狂」というグリーンスパン元FRB議長が放った警告を株式市場がほとんど無視する格好となったのも歴史的事実。

そのような経験もあってか、今回の「標準的なバリュエーションの指標と比較して非常に高い水準と捉えた」という表現は、グリーンスパン元FRB議長の「根拠なき熱狂」という抒情的表現と比較してより直接的なものになっている印象。


続きはDMMオンライサロン「近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場」でお読みください。ただいま1カ月無料キャンペーン実施中です。


「地政学的リスク」と「知性学的リスク」

「国際情勢への懸念が強まり、投資家心理が悪化。「低リスク通貨」とされる円が主要通貨に対して買われた」(日経電子版)

シリア空爆によってテロの危険は増すが、シリアが米国に反撃するわけではない。ようするに地政学的リスクは限定的。

これに対して米国が北朝鮮に軍事介入をすれば、かなり高い確率で在日米軍基地に対する反撃がある。つまり、かなり高い確率で日本に影響が及ぶ。

地政学的リスクを避けようとする投資家が、最も地政学的リスクが高いといえる国の通貨を「低リスク通貨」とみなすという見方は合理的なものなのだろうか。

円が買われれば「リスク回避」、株が売られれば「ヘッジファンド」…。こうした固定観念は「知性学的リスク」だといえる。

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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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